【1】はじめに
6月13日(金)からサッカー・ワールドカップがブラジルで開幕した。15日(日)午前は、日本対コートジボワール戦。20時台でなくてよかった・・・。「軍師官兵衛」の視聴率が下がっちゃうもんね。前半、本田圭介の先制点で沸くが、後半途中のわずか2分間余で2点を取られ、あっけなく負けてしまった。残念無念。次回のギリシャ戦に期待しよう。
ちなみに私は中学生のときサッカーをしており、周囲から「フィールドの貴公子」と称され、バレンタインデーになると、チョコレートがダンボール箱に山積みで自宅に届くほどであった(妄想???)。
今回から官兵衛(役・岡田准一)もようやく牢屋から出て、戦いの最前線に復活。大いに期待したいところだ。ところが、官兵衛はかなり人格が変わってしまったようだ。三木合戦(1578~80)で別所氏に降伏を要求するとき、自分でも秀吉から送られた「地獄の使者」と言っているくらいだから、こりゃかなりダーティーなイメージだ。表情も暗いし、ちょっと人格が歪んでしまったようである。
2年前の大河ドラマ「平清盛」を思い出して欲しい。途中までは「世の人のために」と尽力する清盛像で描かれていたが、ある時期から権力欲にまみれて、人格が突然変異し無慈悲な人間となってしまった。そこから視聴率が急落したことは、記憶に新しいところだ。しょせんはドラマじゃないかと言っても、視聴者は見るに忍びなかったのであろう・・・。
やはり官兵衛は、「儒教観」にまみれた名君でなくてはいけない。早い段階で原点に戻らないと、視聴者からソッポを向かれるのではないだろうか???
閑話休題。
今回もまた、突っ込みどころ満載でおもしろかった!
【2】最後までバカだった小寺政職とその家臣
NHKの前で座り込んで抗議したいなと思うのが、小寺政職(役・片岡鶴太郎)とその家臣たちの取り扱いである(正直に言うと、そんな座り込む暇はないが)。再三申しあげて恐縮であるが、政職の名誉のために言っておくと、あんなにひどい人間ではない。臆病でもなかったであろう。『黒田家譜』で政職は、たしかに消極的な人間に描かれているが、あそこまでバカでマヌケな人間には描かれていない。姫路市民は抗議すべきだと思うな。
天正8年(1580)1月に三木城が落城すると、政職も窮地に追い込まれた。以前に書いたとおり、政職は毛利氏のもとに身を寄せた。その後、どうなったのかあまりわかっていない。
それにしても、政職の最後はひどかった。家臣からは「こんな主に仕えていたとは・・・」と暴言を吐かれ、あっけなく見捨てられてしまう。ちょっと待ってくれ! ここまでドラマを見ていた人間からすれば、「ええ、ここまで気付かなかったの!?」といいたかったに違いない。主人がバカならば、家臣もバカなのだから、これでは小寺氏も浮かばれまい・・・。
最初から鼻が真っ赤でマヌケなイメージがあり、しかも優柔不断でまともな判断を下すことができない。そのような「器量なし」の人間が当主の座につくことはありえないのだが、同時にその「バカ殿様」を支えようとする家臣もありえないのは常識である。
今後、大河ドラマを作る際は、無能な人間の描き方に一工夫して欲しいものだ。ちなみに、政職の子息・斎(のちの氏職)は、黒田家に召抱えられた(『黒田家譜』)。「芥田文書」には、氏職の署名した文書もあるが、その動静はあまりわかっていない。
【3】地獄の使者・官兵衛!?
驚いたことに、別所長治への降伏の勧告は、官兵衛が担当していた。こりゃ、まずい。『播州御征伐之事』などの諸史料によると、三木城に赴いたのは別所重棟(役・佐土井けん太)と浅野長政になっている。官兵衛は行っていないのである!!!
おそらく演出上の問題によって、官兵衛を行かせたのであろうが、先述のとおり人格の変わり果てた「地獄の使者」なのだから失笑してしまった。この点は、史実に沿って描いて欲しいものだ。今度は、三木市民が怒ってしまうぞ!
『信長公記』によると、城中に酒などを送るように命じたのは秀吉(役・竹中直人)である。官兵衛の提案があったとは書かれていない。ちなみに『信長公記』には、別所長治以下の一族の切腹の様子が描かれているが、実に悲惨な情景となっており、ここでは怖くて書けない。
これまで長治は自らの命と引き換えに、城兵たちを助けて欲しいと秀吉に懇願し、受け入れられたとしてきた。ところが、近年の研究では、そうではなく皆殺しにされたのではないかという説も提起されている。しかし、秀吉の書状を見ると、あっちこっちに「皆殺しにしてやった(三木合戦以外も含めて)」と書いて送っているので、その一報を受けた者は「本当だ」と思った可能性もある。
今のようにテレビやニュースもないので、ニュース・ソースも限られていた。もちろん秀吉は、相手を恫喝してビビらせるのが目的であった。
【4】最後に
ちょっと今回については、ドラマの内容に少しばかり不満を持った。ある程度、史実に忠実にして欲しいし、人間の描き方にも注意して欲しいところだ。
次回はおもしろいのか心配だ!
がんばれ「軍師官兵衛」!
〔参考文献〕
渡邊大門『黒田官兵衛 作られた軍師像』講談社現代新書
渡邊大門『黒田官兵衛・長政の野望――もう一つの関ヶ原』角川選書
渡邊大門『誰も書かなかった 黒田官兵衛の謎』中経の文庫
〔ご案内〕
さて、私事になりますが、現在、黒田官兵衛に関する下記の講座を開講しています。ご都合があえば、ぜひご参加いただけると幸いです。
☆日本史史料研究会(練馬区)「『黒田家譜』から官兵衛の生涯を探る」
→こちらhttp://www13.plala.or.jp/t-ikoma/page040.html
>洋泉社歴史総合サイト
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