前回(12月12日)の記事で、住居の基本・原型は、中国も日本も同じ、自分たちが安心して居られる囲い:空間をつくること、屋根の有無で、屋内、屋外に分けてみる「『環境』に対する現代の見かた」は誤っている、と記した。
ただ、日本の古い住居を例示しなかったので、現在日本で最も古い遺構と言われているその名も「古井家」の図と写真を、「日本の民家3 農家Ⅲ 近畿」(学研)から転載、簡単に紹介する。
「古井家」は、もう一軒の「箱木家」(神戸市近郊に現存)とともに、地元で「千年家」と呼ばれている。
なお、平面図、断面図の網掛け部分は、「下屋(げや)」の部分を示している。当時、「折置」の柱・梁からなる軸組を幾通りか並べ「上屋(じょうや)」をつくり、その周囲に「下屋」をまわすつくりが一般的だった(下屋は4面~1面任意につくる)。
そのため、内観写真のように室内に上屋を支える柱が、ほぼ等間隔に林立する。この柱をどうやって除くかが長年の懸案、江戸期の改造で、邪魔になる柱が撤去された。
この住居には、屋敷構え(塀、垣の類)はない。住居は外界に直接接して建つ。それゆえ、ほとんど開口のない壁に囲われた空間がつくられる。
中国と違うのは、囲いにすべて屋根をかけることと、囲いの中の仕切りが、軸組に左右される点。中国なら、仕切りはいわば任意。
古井家の「にわ」:土間は、中国では屋根のない土間部分に相当。また、日本では一段上った床は木製、中国では土壇。
なお、古井家の壁が外部が塗り篭めになっているのは、一つには、寒冷な中国山地に建っているからだろう。