先回紹介したSaynatsalo Town Hallのスケッチ、コンペ図面など、アアルトの直筆図面を紹介する。
図は“Alvar Aalto :Between Humanism and Materialism”から。
Saynatsaloは、フィンランドの中の島の一つ。第二次大戦後、その開発が行われた。この建物は、その一環の建設。
なお、aの字には上にウムラウト:¨が付く。以下同じ。
最上段は、1947年作成のSaynatsaloのマスタープラン。トレーシングペーパーにインク、鉛筆、色鉛筆描き。
この建物の建設用地には、別の形の建物が描かれている。Alvar Aalto Foundation 所蔵。
次の図は、プリントコピーされた「敷地図(Site Plan)」(42×59.3cm)上での、鉛筆による建物の平面、立面の検討スケッチ。
次のモノクロの図は、トレーシングペーパー(24.3×77cm)上で、鉛筆による平面、立面の検討スケッチ。両図ともCollection Alvar Aalto Family。
横並び2枚ずつの図面計6枚は、コンペティション図面。
いずれもトレーシングペーパーに鉛筆と色鉛筆描き、紙の大きさは約48cm角。
City of Jyvaskyla/Saynatsalo Town Hall Archive の所蔵。
上段2枚は「議場レベル平面」、「東立面および断面」。
次の2枚は「1階平面」、「2階平面」。
下段は「西立面、断面」と「南立面、断面」。
これらの図の掲載されている前掲書“Alvar Aalto :Between Humanism and Materialism”は1998年の刊行。いまから10年ほど前。
それゆえ、私が最初に接した書物はこの書ではなく、先回紹介した1954年刊のATELIER ALVAR AALTO と、1963年に初版が出ている ALVAR AALTO 作品集(全3巻)である。「作品集」は写真が主体、ここに載せた図は載っていない(出版用に描き下ろしたと思われる図版が載っている)。もっとも、スケッチなどは、時折り海外の雑誌などで見ることがあった。
だから、私にとって衝撃的で、影響が深かったのは、ATELIER ALVAR AALTO に紹介されていた設計図面であった。
“Alvar Aalto :Between Humanism and Materialism”に接して驚いたのは、建物はもとより、設計図、スケッチが大事に保存されていることであった。ひるがえって、日本ではどうなのだろうか。
こういう図面を通して、「手描きのすばらしさ」をあらためて見直していただければ幸いである。