2010-08-06

極東ブログ「[映画]トロイ」を是非、高校の教材に!

 でで、出た!米映画「トロイ」(参照)。いきなり最後の下りだが、

娯楽映画ではあり、暴力と性が多少出てくるが、レベル的には高校生くらいであり、この映画を高校の世界史の時間に見せ、先生がいろいろ背景説明をしてあげるとよいのではないかと思った。

 ここに痛く感動した。そうだ、そうだ!こんな世界史の先生がいたら私の成績もきっと上がっていたに違いない。back to the futureして、世界史の先生に抗議してこようかと思ったくらいだ。この授業ネタ、絶対に生徒にウケルと思う。そもそも世界史や日本史の先生は堅物ばかりだから、生徒のもつイメージを一回崩すと良いと思う。今朝、昔話を披露した甲斐があったというものだ(参照)。それに、極東ブログは、多くの先生方も愛読しているはずだから、この休みで授業のネタ仕込み中の先生が借りる可能性もある。「トロイ」のDVDが貸し出し中でrent outになっちゃうかも、と思った。急がなくっちゃ私も。こうしてはいられない。と、思った。
 それはそうと、エントリーについてだが、娯楽ものといっても、だからこそきちんと予備知識を入れてから観た方が良いと思った。背景を知らずに観てしまうと、映画のプロデューサーの思惑通りに自分が取り込んでしまうので、私の場合はそう思う。ストーリーに入ってしまうというか、危ない。そこで、いくつか下調べが必要になった。
 まず、

アンドロマケのサフロン・バロウズは良妻賢母的に描いているのかもしれないけど、背景知識を持っていると微妙にエロい感じがするのであった。

 この予備知識だ。これを知ってエロさを感じたいと言うことではなく、まあ、そうなんだけど多分秘話の部分かもしれない。おかしいなぁ。こういう時、弁ちゃんは解説入れるはずなんだけど、と思いながら調べてみたら、あれま(参照)。

Img219

 真ん中に立つ兵士が剣をかざして、頭から血を流して玉座に座る人物を斬り殺そうとしています。その膝には血にまみれて息絶えた子供。これこそ、トロイ最後の王、悲劇のプリアモス。膝に抱くのは幼い孫で、ヘクトルの忘れ形見。殺人者はネオプトレモス。今回は省きますが、プリアモスの後ろには、衣服をはがされて神像にすがるカッサンドラをアイアスが追い、その前にはアンキセスを担いでユルスの手を引いたアイネイアス。絵に描いたような(絵に描いてあるんだけど・・)トロイ陥落の場面です。
 ところが、ネオプトレモスの右に杵をふりあげて、兵士に殴りかかっている女性がいます。彼女こそ誰あろうアンドロマケなのです。
 アンドロマケといえば、言わずと知れたヘクトルの妻。そして悲劇のヒロイン。小説や本では、それ以上でもそれ以下でもないという扱い。夫を殺され、子供を殺され、その殺人者のなぐさみものになる・・ああ、かわいそう・・。というところで、物語はすっかり終わって、中には、子供を殺されたあと、城壁より身を投げて夫の後を追う・・ということになっているものまである。まあ、このほうが、ドラマとしては一般受けするんでしょうねえ。どちらにしても、彼女は、ただ運命に翻弄されて、悲しむだけの弱い女だったのか・・?
 そういうイメージにあわないのが、この杵を振り上げるアンドロマケなのです。

この方の話も面白い。ずばり書かない芸風から察するところ、割とご年配かも。関係ないけど。  

 事情を説明すると、アンドロマケはネオプトレモスに連れられて、このモロッソイの地に来て子供を産んだけど、ネオプトレモスは、ヘレネの娘ヘルミオネを奪いに行くのね。ところが、夫だか婚約者だかのオレステス(アガメムノンの息子)に殺されるの。あるいは、アポロンの祟りで死ぬの。どじ~・・。
 で、未亡人?となったアンドロマケは、ネオプトレモスと行動を共にしていたヘレノスと一緒になったんだとか。だからモロッソイ王家には、プリアモスの血筋も入っているけど、アンドロマケはダブルなの・・?
 でも、ヘレノスは、オデユッセウスの奴隷にされた母のヘカベも引き取ったって説もあって、いわば没落王家の女たちの保護者みたいになってたんじゃないのかなあ?

 結構したたかに生きた人なのじゃないかな?しかも、夫と息子を殺したネオプトレモスの妾(めかけ=女と辛いの合成字であって、立に女ではない。誤解なきように)になったというのだから、女の性を武器にしたエロさってあったのかも。違うかな?

丁寧にイリアスの故事を追っているように思えた。考古学的な知見もそれなりに活かされている。ヘクトルとアキレスの立ち回りは現代的な味付けはあるにせよ、古典的な知見も含まれているように思え、面白かった。ヒッタイトの名前も一度だけ出てきた。

おお。ヒッタイトといえば、旧約聖書に出てくる「ノアの箱舟」関連の面白い話がてんこ盛りの文明。が、一回だけかぁ。ちょっと残念かも。

【参考:ノアの箱舟】
地上に増えた人々や巨人が悪を行っているのを見て、「全ての人間は洪水で滅びるだろう」ということを示唆するメッセージを天使ウリエルから告げられ たノアが建設した舟。40日40夜の洪水を乗り切った方舟は7月17日にアララト山にとどまった(創世記第8章)。

 これって、もしかして次回予告?かな。でも、ノアの箱舟の話はあまりにも有名だからどうかな。大昔に、ノアの箱舟の吹き替え版で、ながーい映画を見た記憶があるのだけど、やはり、映像的に見るものは残らないものだ。
 そういえば、

Helenparis

パリスのオーランド・ブルームのへたれ加減もよかった。当然だが、フリジア帽は被っていない。

えっ?どうして被っていないのか、私には全然分りませんが。前回のあの美しい絵の説明では、裸のパリスが愛の革命的シンボルとして被っているのですよ。何故、ここでは「当然」なのでしょうか?

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コメント

おおっ、『トロイ』!!ブラピ命の友人に2回も映画館に連れて行かれ、DVD&CDも入手しました…昔、本で‘神話として’読んでた世界が『こうなるんだ~』とか、」妙に納得したのが‘合戦の仕方’…基本的に私は、想像力を駆使できなくなるので本の安易な映像化には反対ですが、興味を持たせる手段としては最近の世代には効果的かも。でもこれ、ホンットに長いんです…だからと言ってどこかをカットしては成立しないんですよね~。

投稿: Kumi | 2010-08-06 17:22

Kumiさん、その長い映画を二度も付き合った挙句、DVDとCDを買っというのは、既にはまった?感じがしますよ♪

教材として映画を取り入れるのは賛成です。学習のきっかけなので、いろいろ入り口が用意されていた方がいいと思います。

投稿: ゴッドマー | 2010-08-07 03:41

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