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21/06/2009

取調べの可視化によって構築が難しくなる人間関係

000001:捜査官A:甲を殺したのはお前だな

000002:被疑者:いいえ。私ではありません。

000003::捜査官A:嘘をつくな。では誰が殺したというのだ。

000004:被疑者:知りません。でも,私ではありません。

000005::捜査官A:ほら,お前がやったんだろう。

000006:被疑者:いいえ。私ではありません。

000007::捜査官A:嘘をつくな。では誰が殺したというのだ。

000008:被疑者:知りません。でも,私ではありません。

000009::捜査官A:ほら,お前がやったんだろう。 (以下,ループなので省略)

090011::捜査官A:じゃあ,やったのはお前の息子かもしれないな。お前がやっていないと言い張るのであれば,お前の息子を逮捕して取り調べてやる。いいな。

090012:被疑者:やめて下さい。息子は関係ないではないですか。

090013::捜査官A:息子は関係ない?そうか,ということは,お前は関係しているということだな。やっぱり,甲を殺したのはお前だろう。

090014:被疑者:いいえ,私もやっていません。

090015::捜査官A:まだ,言い張るのか。わかった。今から上司に掛け合って,お前を釈放する代わりに,お前の息子をしょっ引いてやる。これでいいだろう。

090016:被疑者:やめて下さい。わ,わかりました。甲を殺したのは私だということにして下さい。

090017:捜査官A:なんだ,その言い方は。息子の身代わりになろうというのか。やはり,上司に掛け合ってくる。

090018:被疑者:待って下さい。私がやりました。甲を殺したのは私です。

090019:捜査官A:最初から,素直に白状すれば,1週間も同じ質問をする必要はなかったのだよ。で,どうやって殺したんだ?

090020:被疑者:わかりません。

090021:捜査官A:わからないはずはないだろう。こうやって首を絞めて殺したのではないか。

090022:被疑者:刑事さんがそう仰るのならそうです。

090023:捜査官A:なんだ,その言い方は!やっぱ,上司に掛け合ってくるぞ!

090024:被疑者:やめて下さい,刑事さん。私は,甲さんの首に,近くにあった電気コードを引っかけて,絞め殺しました。

090025:捜査官A:そのとき,コードを握る手は順手だったか,逆手だったか。

090026:被疑者:・・・・・・順手,だったのではないでしょうか。

090027:捜査官A:そうじゃないだろう。やっぱり,息子の身代わりなのか?

090028:被疑者:ああああ。間違えました。逆手でした。逆手でした。

090029:捜査官A:そうだろう,そうだろう。気が動転していたのはわかるが,きちんと思い出してもらわないと困るぞ。

(中略)

100125:捜査官A:では,お前が供述をこんなふうにまとめてみたから読み聞かせるぞ。いいな

(中略)

100131:捜査官A:では,この末尾に署名して指印を押すんだ。

 上記のような例を想定した場合,従前の供述調書は,被疑者がずっと犯行を否認してきた事実すら記録しなかったし,ましては,被疑者を自白に転向させるために捜査官が何を語ったのか,また,「自白」に転向してから,被疑者が犯行状況等を最初から「客観証拠」に合致した形で供述できていたのか等は記録してこなかったのです。

 最近,一部で実験施行されている「自白後の録音録画」では,上記の例でいうと,

100125:捜査官A:では,お前が供述をこんなふうにまとめてみたから読み聞かせるぞ。いいな

(中略)

100131:捜査官A:では,復唱してみろ。

(中略)

100151:捜査官A:よくできた。いいか,今口に出したことを忘れるな。では,ビデオの録画スイッチを押すから,これから俺がする質問に対し,今述べたとおりに答えるのだぞ。いいな。

みたいなことを行うことができます。

 捜査機関側とすれば,

090011::捜査官A:じゃあ,やったのはお前の息子かもしれないな。お前がやっていないと言い張るのであれば,お前の息子を逮捕して取り調べてやる。いいな。

090012:被疑者:やめて下さい。息子は関係ないではないですか。

090013::捜査官A:息子は関係ない?そうか,ということは,お前は関係しているということだな。やっぱり,甲を殺したのはお前だろう。

090014:被疑者:いいえ,私もやっていません。

090015::捜査官A:まだ,言い張るのか。わかった。今から上司に掛け合って,お前を釈放する代わりに,お前の息子をしょっ引いてやる。これでいいだろう。

090016:被疑者:やめて下さい。わ,わかりました。甲を殺したのは私だということにして下さい。

090017:捜査官A:なんだ,その言い方は。息子の身代わりになろうというのか。やはり,上司に掛け合ってくる。

090018:被疑者:待って下さい。私がやりました。甲を殺したのは私です。

みたいな雑談が録音されて弁護人に聞かれてしまうと,被疑者との間の「信頼関係」が築き上げられなくなってしまうと恐れているわけです。

 自分が上位に君臨する上下関係と信頼関係とを同一視する人たちって,一定数いるようですし。

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