違憲判決を下したのは許せないって最高裁判事を弾劾するって,どこの政治的後進国のお話?
今回の国籍法改正の関係で,旧国籍法3条1項を違憲と判断した最高裁判事について,弾劾裁判の訴追請求の請願を行うという動きがあるそうです。
なんでも,
平たく言うと「あなた方国会議員は、裁判官から無能扱いされました。
我々国民が選んだ議員を、選ばれてもいない判事が馬鹿にすることは 民主主義原則から言っておかしいのではないですか?
このまま放置すると、あなた方国会議員は司法より下位になりますよ。
国民は、それを望んでいないから、善処してね。」と言うことになります。
そこで、今回「出過ぎたまね」をした最高裁判事を 国民の権利に基づき、懲罰にかけることを求めるのです。という趣旨なんだそうです。
しかし,日本国憲法は,三権分立によるチェックアンドバランス機能を十全なものとする仕組みの一つとして,最高裁判所に違憲立法審査権を与えたということは,今日小学校の高学年でも習うことであります。そして,憲法上違憲立法審査権が与えられている以上,国会が制定した法律が憲法に反していればこれを違憲と判断し,その違憲状態を解消した上で導かれる結論を具体的な事件の判決として下すことは,まさに最高裁が行うべき職務であって,「出過ぎたまね」では全然ありません。また,職務上求められているチェック機能を果たすことが相手方を「無能扱い」し「馬鹿にする」こととならないことは,チェックアンドバランス機能の中で日々仕事を行っている社会人の多くは理解しているのではないかと思います。
普通に考えても,最高裁判所が,憲法上の規定に従って,法令について違憲立法審査権を行使して違憲判決を下しことを理由に議会の多数派が最高裁判事を弾劾裁判にかけて罷免するということになったら,最高裁の違憲立法審査権なんて「絵に描いた餅」に終わりかねず,近代的な立憲民主主義が終焉してしまいかねません。
まあ,G8のうち少なくとも7カ国の首脳から「日本は我々とは違う価値観を有しているようだ。むしろ,中華人民共和国のそれに近いに違いない」と思わせるような行動をとる国会議員は実際には少ないとは思いますが,中国政府首脳と類似する価値観を有する人々による大量のファックス等による業務妨害にうんざりしている議員も多いでしょうから,ちょっぴり心配がないわけではありません。
« 国籍法改正法案可決・成立 | Accueil | 森林法違憲判決への対応 »
L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.
Commentaires