福島の原発の処理水の問題は、そもそも論で言えば震災直後からの東京電力や政府の対応が完璧なものだったのか?もう少しましな対応ができなかったのか、という側面はある。





一説によれば「トリチウム除去」の画期的な技術も開発されていたと言うが、日本人の宿痾ともいえる「一度決めたことは、変更できない」性向によって、解決策もないままに処理水をどんどん溜め込んだと言う側面もあるようだ。
ただし、今、海に放出している処理水は、高濃度の放射性物質を含んだものではない。格納容器内にある溶け落ちた燃料デブリの冷却水=汚染水を2段階で浄化処理した水であり、放射性物質は1億分の1程度にまで希釈されていると言う。国際原子力機関(IAEA)は、7月に公表した包括報告書で「放射線の影響は無視できる」と結論づけている。

実際のところ、この程度の放射線物質を含んだ水は、原発を保有する国では日常的に海に放出されている。実害はない、あるいは「認められない」というところだろう。

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問題は「福島原発から出た水は気持ち悪い」という風評被害に尽きる。日本国内でどれだけ強硬に反対する人であっても、この水が自然界や人体に即座に悪影響を及ぼすとは考えていない。「風評被害」が問題なだけだ。

確かに東京電力、国がこうした決断をするに至った過程には、不審な点が多々あるが、とはいっても年々積みあがりつつある処理水をそのままにすることなどできない。

そこで国は「風評」を立てられないようにIAEAにもお墨付きをもらい、韓国はじめ、各国にも根回しをしていたのだが、最近、関係が極めて悪化していた中国が「千載一遇のチャンス」とばかりに「汚染水被害」を言い立てたのだ。

まともな民主主義国家であれば、政権が非常識な発表をしても、有識者、そして国民がそれを疑問視し、否定、批判に走るものだが、中国は「政権中枢の意志」以外に異論も批判も存在しない独裁国家であるため、やくざの言いがかりレベルのクレームが「大国中国の世論」になってしまったのだ。

日本共産党は「今回の事件の責任は日本政府にある」と言った。そりゃ、大元をたどれば原発を推進したのは日本の政権だ。原発に反対してきた共産党にしてみれば「原発がなければこんな問題は起こらなかった」というところから批判しているのだろうが、そうはいっても今の社会のエネルギーインフラは「原発」に半ば依存しているのだ。共産党本部の電気にだって原発由来のものが混じっている。
震災以降の対応のまずさはあるにしても、今回の「中国の言いがかり」を日本政府のせいにするのは、ほとんどの国民の賛同を得られないだろう。
日本共産党は、中国の少数民族の弾圧や香港民主化の停止などについて、真っ向から反対する抗議文を中国共産党にたたきつけた。中国共産党を真正面から否定している日本唯一の政党なのだが、多くの日本人はまたぞろ「日本共産党は中国の手先」だと思ったはずだ。
立場に固執して柔軟で現実的な対応ができないのを観ると日本共産党も「日本人の宿痾」を共有しているのだなあと思う。

中国政府の尻馬に載って、中国から迷惑電話が次々と掛かっていると言うが、これは「独裁国家」の恐ろしさを端的に表している。彼らは自分で判断することもなく、政府の言うことをうのみにする。そして他国との協調ではなく、自国のためだけを考え、きわめてエゴイスティックな行いをするのだ。「民度が低い」という言葉はこういうときに使うのだ。
いろいろ問題はあるにせよ、民主主義国家である日本では、こうした愚かな行動をするのは一部の愚かな人だけであり、それは社会の良識によって否定されるのだ。
中国のふるまいを見て、先進国は「やっぱり中国はヤバい国だ」とあらためて思ったことだろう。

中国は不満の矛先を足元にある日本に向けているだけであって、この先のプランがあるわけではない。国際情勢が変われば処理水=汚染水の問題も雲散霧消するだろう。馬鹿な思い付きは長続きしないのだ。

ただ、怖いのは日本よりもはるかに人口が多く、経済力、軍事力でも上の隣人、中国が、自分たちの権威を守ると言うその一事でこんな愚かなことをする、という事実だ。

中国は戦前の日本と同様、国内の矛盾を解決する術を失い、海外への武力進出という選択肢に収れんしつつある。経済と軍事力はあるが「正義」も「理性」もないこの国に、日本が簒奪される可能性は、ますます高まっていると痛感する。

政治家の本当の力が求められている。「大臣になれてうれしいなあ」と思ってるレベルのお大臣を、こういう要職に就ける悪弊はもうやめよう。「汚染水がどうの」というのも問題外だ。
神経質なくらい国際世論に反応できるパリパリの能吏を、こういう部署に就けるべきだ。



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先発全員奪三振達成投手/1994~2023