私が若い頃読んだMLBの本では「大リーグでは死球をぶつけた投手が、打者に謝ったら殴り掛かられる。なぜならその投手は“わざとぶつけた”と言ったも同然だから。わざとぶつけたのでないのなら、野球のプレーの内だから謝らなくてもいい」と書いてあった。
MLBの理屈では「死球も野球のルールの内であり、ルールに則ってプレーした結果として相手にぶつけたのだから、投手に非はない」ということなのだったのだ。

しかし野茂英雄以降、MLBに渡った日本人投手は、打者にぶつけたときには帽子を取って打者に会釈をした。野茂などは38個もぶつけているからそれだけ帽子を取ってきたのだ。
MLBの選手やメディアは「違和感」をもってきたがその都度、「日本ではそうするそうだ」という情報が関係者にまわって、多少の違和感を覚えつつも「日本人だけ特別」みたいな感じでじわじわ浸透していった。

私は日本のファンが、ぶつけた投手に罵声を浴びせたり、ネットで攻撃したりするのは、容認できなかった。その根拠はMLBの考え方と同様「死球も野球のルールだから」というものであり「誰もぶつけようと思って投げていない」からだ。
昭和の時代、ライオンズの東尾修は「当てにいった」とはっきり語っていた。確かに昔はそうだったかもしれないが、今はそういうことは考えられない。
野球のプレーに対して、選手がいちいち謝るのも不要だと思っていたから、それ以上にファンがごちゃごちゃ言うのは「要らざること」だと思っていた。

しかし、段々MLBでも流れが変わってきたように思う。やはり大谷翔平からだ。彼はぶつけると軽く謝ったり、あとでぶつけた選手に話しかけたりしている。それが実にスマートで、格好よく見える。
彼は二塁にスライディングして、相手野手のパンツの裾に土をかけてしまったりすると、軽く土をはたくような真似をする。そういうことをしても絵になっているのだ。
大谷以降、MLBでも死球に対して何らかのリアクションをする選手が出始めているように思う。

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WBCでは、佐々木朗希が、四球をぶつけたチェコの選手にロッテの菓子を贈ったが、そういうのも「いい話」になりつつある。

この間の阪神―巨人戦で近本光司が高梨雄平にぶつけられた。近本は右ろっ骨を骨折。高梨は近本に謝罪した。SNSでは高梨が炎上しているようだ。「炎上」そのものは一切肯定しないが、高梨が近本に謝罪したのは「妥当だった」と思うようになった。

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こういう感じで「価値感」が変わることはあるのだな、と思っている。私も死球に対する見方を変えるべきかもしれないと思う。



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