2025-11-13

anond:20251113193921

『幻の群れ』

このごろのテレビは、どうも落ち着かない。

兵庫県知事が怒ったとか、職員に強く言ったとかで、

から晩まで映像が流れている。

パワハラだ」「辞任すべきだ」と、

まるで国の一大事のように。

でも、あの人がそこまで悪いことをしたのか、私は首をかしげている。

弁明もしていたし、訴訟になったわけでもない。

それなのに中央テレビが連日あおりたてる。

大阪の隣だからというだけで、全国放送あんなに騒ぐのは、

少し品がない気がした。

まるで見世物のように、

怒りの映像をつないで、辞任するまで囲い込む。

あれは知事問題ではなく、

報道自分感情を持て余しているだけじゃないのか。

そう思っていたころ、宮城でも知事選があった。

けれど私は、ほとんど関心が持てなかった。

和田政宗という若い人が出ると聞いて、

第三極改革派か」と思ったら、

どうも方向が違う。

少し変な右翼みたいな立ち上がり方をして、

せっかくの若さ台無しにした。

現職より二十歳も若いのに、取りこぼしたのは本人のミスだ。

それなのに、投票日まで「排除論」だの「デマ」だのと、

どちらの陣営も騒がしかった。

新聞テレビが、まるで政治団体のように反SNSを掲げて、

外国人排除」ばかりを強調していたのには、

正直、あきれてしまった。

昔、治安維持法というものがあった。

共産党員は全国で七百人ほどしかいなかったのに、

七百万人もいるように錯覚して、

罪のない人をどんどん罰した。

恐怖は数字を膨らませる。

幻の群れを見て、怯えるのがこの国の悪い癖だ。

SNSも同じだと思う。

過激発言をしているのは、ほんの一握りなのに、

テレビはそれを“国民の声”だと報じる。

彼らの発信に取り込まれて、

まるで北九州監禁事件尼崎事件のように、

異常な人たちの世界に引きずり込まれしまう。

見えない恐怖を吸い込みすぎて、

冷静な判断をなくしているのは、

しろ報道のほうではないだろうか。

異常性の摂取は、じつは快感だということに気づいていない。

ネトウヨが」「排外が」と繰り返す人たちの顔を見ていると、

どこか苦しそうだ。

怒ることが日課になってしまった人の、

あの少し乾いた目の奥に、

どうしようもない寂しさがある。

怒っていないと、自分が消えてしまいそうなのだ

けれど人は、本来そんなに悪くない。

煮物を焦がしたり、

通勤電車で寝過ごしたりしながら、

どうにか一日をやり過ごしている。

そんな人たちが「世論」と呼ばれていることを、

メディアの人たちは、忘れてはいけないと思う。

から私は、声を大にして言いたい。

しっかりしろ

恐怖を数えて幻を作る、その癖を、

うそろそろやめようじゃないか

七十人を七十万人に見間違える時代を、

また繰り返すつもりなのか。

私は、あの画面の向こうで怒鳴っている人たちに、

そう言ってやりたいのだ。

記事への反応 -
  • 兵庫県知事の激昂案件で、去年か一昨年か、連日ミヤネ屋みたいな中央テレビが報道していて、 辞任するまで騒ぎ立てるという報道姿勢そのものが疑問に思われたのではないか 自分はSNS...

    • 『幻の群れ』 このごろのテレビは、どうも落ち着かない。 兵庫県の知事が怒ったとか、職員に強く言ったとかで、 朝から晩まで映像が流れている。 「パワハラだ」「辞任すべきだ」と...

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