あれは昭和の終わり頃、小学2年生の冬。ドラクエ3が発売された日だ。
朝早く、父ちゃんに「行くぞ」と叩き起こされて、まだ薄暗い中で近所のゲーム屋に向かったんだよ。
昭和の時代ってさ、ゲームは特別な存在だったんだ。ファミコンが家にあるだけでクラスのヒーローみたいな感じだったし、新作のドラクエなんてそれこそお祭りだった。
店に着いたらすでに長蛇の列。小学校2年生の俺には、その行列が果てしなく長く感じたよ。
寒空の下で鼻水を垂らしながら「本当に買えるのかな?」って不安だった。
でも父ちゃんは「大丈夫だ、根性だせ」とか言いながら、俺に温かい缶コーヒーを握らせてくれた。
今思うと、あれはちょっと渋すぎる飲み物だったな。子ども向けじゃないのに、なんか大人の気分を味わえて嬉しかった。
やっとの思いで順番が回ってきて、無事にドラクエ3を手に入れた瞬間のあの感動!箱を握りしめて、家に帰るまでの道中もずっと「早く遊びたい」って気持ちで胸がいっぱいだった。
家に着いてファミコンにカセットを差し込んで電源入れた時のジーって音がたまらなかったよ。ブラウン管テレビ特有の音。分かる?そんでプレイ画面が出た瞬間、もうワクワクが止まらなかった。
でも、ここからが苦い思い出だ。クラスの友達が「貸してよ」って言うから、少し悩んだけど、まあいいかって貸したんだよね。その子も楽しみにしてたし、俺もちょっと大人ぶりたかったんだ。
でも、返ってこないんだよ。何度か「返して」って言っても、「まだクリアしてない」とか言われて、ついにはその子が引っ越しちゃってさ。結局、ドラクエ3は戻ってこなかった。借りパクされたんだよな。小2の俺にはショックがでかすぎて、それ以来、人に物を貸すのがちょっと怖くなったんだよ。
昭和の思い出って、こんなふうに喜びと苦さが混ざってるんだよな。でも、その寒い朝に父ちゃんと並んだ記憶とか、最初にドラクエ3を遊んだあの興奮は、今でも色あせないよ。あの時代ならではの体験だし、あれがあったからこそ、ゲームへの思い入れが強くなったんだと思う。
これは100%AI