簡単に言えば持ってる人/持ってない人の二項対立で描かれる映画なんだけど、その境界や定義っていうのがすごく曖昧で行き来する人が多いのが現実ぽいと思う。
ミュージカル映画としては素敵な映画だったけど、その一方で興行として人権侵害甚だしい見世物小屋としてのサーカスが人気を博していたことは考えなければならないことだと感じた。
バーナムは人の個性に囚われない、面白い人ならなんでもいい、という反差別派のように見えるけど、差別される側/する側で二項対立させたとき、バーナムは間違いなく差別する側なんだよね。
現実ではもっとペテン師、興行師としてクソ男だったと思うんだけど、そこを美化しすぎてる、というか観客にそう感じさせるストーリーになってると思った。現実の度合いと映画の度合いが違いすぎるのが気持ち悪かったな。
たぶんヒュージャックマン以外の全員に共感できるし、逆に言えばヒュージャックマンには全く共感できない。
この映画の根本的な価値観は人生の生きづらさ、満たされなさみたいなもだと思って、だからこそNever Enoughがすごく効果的だと感じた。まぁレベッカファーガソンのあの終わらせ方には全く納得できてないけど…
一度負った心の傷は完全に癒されることは全くなくて心のどこかに絶対残ってしまって、だからこそ何をしても満たされないし過度な成功を求めてしまうの、なんとなくわかるような気がした。
でも結局楽団の皆がヒュージャックマンに本当に怒りきれなかったのは彼の満たされなさをみんな理解してたからだと思う。
私も本当に信頼している人には何されても許してしまうだろうなっていう気持ちがあるんだけど、それに近い気がした。ただ、そう解釈するにはストーリーが不十分すぎると思ったし、This Is Meをバーナム(ヒュージャックマン)が見てない時点で、彼らのことをわかってあげる人はいないのかなと切なくなった。
もちろん、みんなでThis Is Meを歌うところは本当にかっこよくて痺れたけど。ただ、この歌を主題歌とするならもっとフリークスと呼ばれた劇団のみんなに焦点を当てて欲しかった。このストーリーなら主題歌The Greatest Showmanの方でよかったと思うよ。
あと、十分に説明されなかったところが多すぎて…一番謎だったの、りんごをくれたおばさんとの出会いなんだけど、あれは一体何を意味してるの??ヒュージャックマンが単なる差別主義者っていうことを明らかにさせただけだと思うんだけど…
あと、町の住民がなぜそこまでフリークスとサーカスを嫌ったのかが描かれてなさすぎて、理由もなく差別するほうを一方的に悪として描いていて、その反動でヒュージャックマンがいい人に見えるってだけでは…って思ったりもした。
あと、LALALANDと比較されがちだけど映画のテーマやモチーフが違うのにそんな簡単に比較できないでしょう…好みの問題でいえば私は完全にLALALAND派ですし。
ただ、似ている部分でいえば序盤の構成はやっぱりLALALANDとまったく同じだと思う。
特にAnother Day Of Sun~Someone In The Crowdの流れとThe Greatest Showman~Million Dreamsの流れはすごく似てると思った。観客の判断力を奪う圧倒的な歌唱力と演出はやっぱり素敵でした。
ミュージカル楽しかったー!って表面上の満足感を得た一方、なんとなくもやもやしたものを抱えていたので、すごく納得した 歌って踊って映像のままに流されちゃってたけど、私も増...