- Date: Wed 29 12 2021
- Category: Songs3
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Gerty's Dream(1991)by 安藤正容 (2) 本田雅人との傑作バラード Coverしてみた
フルート奏者Misaさんとのコラボも、第4弾となりました。まず、お聞きください。
本田雅人とT-SQUAREに関しては、前回の記事
(⇒Gerty's Dream(1991)by T-Square (1) 本田雅人とT-SQUARE)
が全てなので、そちらも合わせてお読みください。
Flute : Misa(Yamaha YFL-891H H.J. Powell)
Guitar : Akissh(Ibanez AS120)
Synthesizer : Akissh(Wavestation)
Pf, Bass, Drum : BIAB
Arranged : Akissh
Composed : Andou Masahiro
Photo : Vilnius, Lithuania
[曲について]
管楽器ではソプラノサックスが一番好きなのですが、この曲ほどソプラノの良さを生かしたメロディはないのでは。少し影のある中にキラキラ光るテーマメロディは秀逸です。当然、本田雅人の作曲かと思うと、これが安藤正容の作曲。最初は驚きました。
Misaさんと最初に相談したのは、キーをどうするか。フルートとソプラノは音域が同じなのでオリジナル通りでいいかと思ったら、「フルートは、このキーだとメロディのキラキラ感が出ないので少し上げましょう。」とのこと。オリジナルのDm(F)を1音半上げて、Fm(Ab)にしました。譜面はCover版のFm(Ab)になっているのに注意です。
Gerty's Dream Chords
※本ブログでは、Bb/C は分数コードを表しています。
※作曲者は本田雅人ではなく安藤正容でした。譜面のクレジットが誤っています↑
前回、安藤正容はプロデューサー志向で作曲出来る人だと書きましたが、この曲も実に良く考えられています。
一例として、イントロ一番最初のダ、ダーン~のところ。1音(長2度)上がっていると感じる。ダイアトニックで長2度間隔のコードといえば、(Key = Cで) CM7→Dm7やDm7→Em7 が頭に浮かぶ。コピーするためにじっくり聞いてみると、これは分数コードの響きだと気づく。原曲キーでいえば、G/A→F/Gという分数コードの平行移動。
あれ?1音上がってなかったっけ?とさらに音をとると、G/Aの時はトップノートを2弦3フレのD、F/Gの時は1弦開放のEを鳴らしていることに気づく。コードは1音下がっているのに、人間の耳はトップノートを一番強く認識するので、1音上がっているように聞こえるのです。
このコードボイシングは、開放弦があるギターで、しかも、G/A→F/Gの平行移動の場合しか出来ない。さらにG/A,F/Gはドミナント機能を持っているので、Key = Dm (又はC)の曲でしか上手く使えない。
さらに管楽器が入ると、果たしてそのキーで管にあったメロディが書けるかどうかの問題が出てくる。このモティーフ(ダ、ダーン~の2コード)は特定のキーでしか使えないので、これを使いながらソプラノにフィットしたメロディを書くのは、日頃から相当研究していないと難しいはずです。30年前、この曲を初めて聞きコピーした時に、さすが安藤正容だと感動した記憶があります。
カバーでは1音半上げたために、このボイシングが不可能になり、1音下がるだけに聞こえています。このあたり、管の入った曲のアレンジの難しさですね。
サビ部分のコード進行は本当にいいですね。ぜひ分析してソロラインを作ってみて下さい。
2021.12 南アルプス
もう1つ、リズムについて。
ボサノバと8ビートを途中で切り替えています。ボサと8ビートは、同じ8ビート系といえどもコーラとトマトジュース位異なるノリ。曲の中でこのように使い分けているのは余り聞いたことがない。特に、本田雅人のソプラノソロから後テーマになだれ込むところの8ビート盛り上げは素晴らしい。オリジナル版は、ここはフェイドアウトになっているのでライブ演奏記録を聴いて下さい。
今回は、この部分の作りこみに時間がかかりました。毎日DAWを立ち上げて、作成中音源を聞く度に、「ここのところにフィルを入れたい。4小節前のところはスネア主体だったので、タムタムの入りのフィルで行こうか」とか、もうキリがなくなってしまいました。(笑)
また、ボサにはシズルシンバルが好きなのですが、これが入っているドラムプラグインは滅多にないのでMIDIで作成してみました。
[サウンドメイキングについて]
1)ドラムサウンド
今回のドラムサウンドのポイントはスネアの音色です。8ビート部分の盛り上げはスネアで作っていくので。でもロックドラムのような、バシッバシッという音にするとボサ部分と8ビート部分が水と油になってしまい違和感が。スネアの音自体は激しくなく、でもキレを良くしたいので、今回は、強めのコンプでの音作りとしました。
Brainworxの「bx_masterdesk Classic」は最近入手した、強めなコンプレッションサウンドが素晴らしいコンプで$149という高額商品。でも普段はセールと称して$59で売っており、特別セールで$29になったりする。無意味な定価を表示する商法は止めて欲しいな。
私は、発売月限定の無償配布期間に入手しました。使っている人の口コミを増やすためか、最初の1、2か月のみ無償で配布し、その後有償配布に切り替えるところは結構多いです。見逃すと残念なので、少し手間ですが有名どころメーカーのサイトは時々覗いた方がいいです。もちろん全て海外メーカーなので英語サイトです。
2)フルートサウンド
フルートに、今回はコンボリューションリバーブを使うことにしました。
リバーブは、元々はスプリングリバーブのような機械的な残響を、PCの中で演算をしてシュミレートいます。元の音から1ms遅れてその1/5の音を鳴らし、さらにその音に1ms遅れてその1/5の音を‥‥というように、非常にたくさんの音を合成してリバーブ音を形成する、いわばディレイの無限級数です。そのパラメーターを変えることによって、疑似的にルーム等をシュミレートしているので、アルゴリズムリバーブとも呼ばれています。
そんなことをしなくても、ホールの残響は現実に存在しているのだから、そのホールとまったく同じように減衰させればいはずだと頭のいい人が思いついたのでしょう。ホールの残響特性を現実の録音から解析し、それを全く同じに再現した。これがコンボリューションリバーブです。今回、フルートには、Cakewalk付属の、Rematrixというコンボリューションリバーブを使ってみましたが、プレートリバーブとはまた異なるリッチなサウンドになったと思います。
※アルゴリズムリバーブとコンボリューションリバーブは、PC内の演算方法の違いなので、ホール、ルーム、プレートという違いとは、まったく次元が異なっています。時々誤解している方がいるので要注意です。
また、今回はアコースティックなサウンドとしたかったので、ベースはアコベにしました。
かなり低音は出ているのですが、注意しないとよく聞き取れないのも、アコべらしいかも。
ギターも、コンセプトを合わせてセミアコを弾いています。
Gerty's Dream original version
この曲、いつか演奏してみたかったのですが、構成が複雑で1発セッションではなかなか出来ないし、いまさらバンドでやることもない。演奏する機会は無いだろうと思っていたので、今回、演奏出来て本当に良かった。
オンラインセッション冥利に尽きる、とでもいうのでしょうか。
最後になりましたが、Misaさんのフルートソロ、野暮な解説はしませんが、ギターソロからの間奏の8小節、それに続く24小節のソロパートで、段々盛り上げる流れがいいですね。上手な人のソロを聞くと、わずか十数小節の中でも、一つのストーリーがあるのを感じます。
今年も音楽を通じて、何人かと知り合えました。楽器をやっていて良かったと思える瞬間です。
来年も、色々な新たな曲にチャレンジして行きたい‥‥‥
来年も、本ブログともども、よろしくお願いします。 by Akissh 2021.12
フルートのアドリブも見事で、あまりフルート奏者を知らないので、CTI作品でのヒューバート・ローズに近いのかな、なんて思って聴いていました。
(GRPのデイブ・バレンティンもこんな感じでしょうか)
今年もAkisshさんのカバー演奏や旅行記で、すごく楽しませていただきました。
来年もよろしくお願いいたします。
どうぞ良いお年をお迎えください。