はてなキーワード: はかぶさの剣とは
闇に消えていこうとする二人の姿に向かって必死に叫ぶサマルトリア組の王子。
衝撃が走る。凍り付いたように立ち止まるローレシア組の鉄砲玉とムーンブルク組の一人娘。「お前……まさか……」愕然として振り返るローレシア組の鉄砲玉とムーンブルク組の一人娘。「知って……」
洞窟の入り口で取り残されたサマルトリア組の鉄砲玉の目にふいに涙が溢れた。言葉を失うローレシア組の鉄砲玉とムーンブルク組の一人娘。
王女、ザオリク覚えたし。病気になって寝ていた間になんだか知らないけれど世界樹の葉が十一枚もあるし。
それを聞いたムーンブルク組の一人娘の手が震えた。「あなた……」手で口元を抑えるムーンブルク組の一人娘。
「くっ……」歯を噛んで目を閉じるローレシア組の鉄砲玉。その耳に響くサマルトリア組の鉄砲玉の痛切な声。
サマルトリア組の王子が叫んだ。泣きじゃくるように叫んだ。自分のうかつさ、間抜けさを呪うローレシア組の鉄砲玉が再び開いた目に、両手に掲げたキメラの翼を引き裂くサマルトリア組の鉄砲玉の姿が鮮烈に映った。
キメラの翼が呆気なく千切れとんだ。まるで悲鳴だった。事実、それがサマルトリア組の鉄砲玉の心の叫びだった。もう帰るところなど無いのだ。
もうすぐだから。もうすぐ覚えるから。ひたすらその言葉を繰り返すサマルトリア組の鉄砲玉。ムーンブルク組の一人娘の目に、もう二度と流れないと思っていた涙が溢れた。ローレシア組の鉄砲玉が歯を噛みしめながら、どうして気づいてやれなかったのだと無念の涙を流していた。
ああ、こいつは、知っているのだ。
自分が鉄砲玉であることも、自爆要員であることも、スーファミでは「はかぶさの剣」は出来ないことも、メガンテザオリクの連発になることも、メガンテを使えば経験値が入って来ないことも、あまつさえメガンテがラスボスには効かないことさえも、知っているのだ。
知っていてこいつは、城の親分(王様)の言う通り、城のみんなの願い通り、メガンテを唱えるのだ。
そう、まさしく、鉄砲玉として。
置いていかないで……
サマルトリア組の鉄砲玉の泣き顔がローレシア組の鉄砲玉のすぐ目の前にあった。
サマルトリア組の鉄砲玉がまた大きな声で泣いた。ムーンブルク組の一人娘がそっと二人から目をそらし、入り口に打ち捨てられたキメラの翼を見やった。
世界は滅びはしないだろう。引き裂かれた翼を目にしながらそう思った。あの洞窟の外の日だまりに生きる人々はこれからもずっとあそこで生きていくのだ。ここから先、洞窟の暗闇へと向かうのにそれ以上の理由があるだろうか。
うん、と嬉しそうにサマルトリア組の鉄砲玉が返す。ムーンブルク組の一人娘も小さくうなずき、そして、日だまりに捨てられたキメラの翼からそっと目を離した。
完
剣が峰日記
2001/0721土