事故が起こらなくとも、棲めなくなる空間が増えていく
今回のように原発事故が起きて放射能が大量に外部に漏れ出せば、周辺地域の住民が当分の間住めなくなる事は、当然予測された事です。事故からおよそ四半世紀経ったチェルノブイリでは、いまだに周囲の広い範囲が立ち入り禁止区域になっています。
それでは、事故が起こらなければ、人間をはじめとして、生物が棲めなくなる場所・・放射能汚染される地域は発生しないのでしょうか?
原発事故が起こらずに、30年から60年経って、(一応見かけ上は)安全に運転を終了した原発は廃炉にされます。・・・はじめは30年くらいで廃炉にする計画であった筈が、色々な思惑により運転期間が延長されています。・・・廃炉寸前の原子炉は、全体が放射性物質の倉庫と言えましょう。その原子炉を解体する際に放射性廃棄物が一挙に出されることになります。この放射性廃棄物を、現在日本の原発関係者達は、埋設処理すると説明しています。原子力発電環境整備機構(NUMO)という出鱈目な組織を作って、放射性廃棄物を地下300mより深いところに閉じ込めると言っています。曰く『安定した地層はモノを閉じ込める性質がある』・・「モノ」は言いようです。人類の科学技術では手に負えない放射性廃棄物を、仕方ないから地下に埋めよう・・と言うだけのお話です。本末転倒も甚だしいと言えましょう。・・「手に負えないほど危険なものは作らない」と言うのが予防原則の筈です。原発推進派はこんなどうしようもない事をも、さも素晴らしい事のように説明する無責任な輩ばかりです。これも原発の『安全神話』の一端と言えましょう。
これだけ地震が多発している日本の地層のどこが安定しているのでしょうか?放射能レベルを考えれば、何万年も管理しなければ危険な筈ですが、そのような長期間の経年劣化に耐える埋設技術は確立されていません。まして、放射能やその放射能の崩壊熱も出されるので、地下埋設の容器の劣化はより激しいでしょう。安全の為に何重もの構造になっている・・と言われている埋設容器でも、そのまま埋設されれば、放射能が安全な量まで減少する以前に漏れ出す可能性は、限りなく100%に近いと言えましょう。
放射能が漏れ出せば、日本の豊かな地下水も汚染されてしまいます。数万年どころか、数百年以内に放射能は地上にまで出てきて、周辺も汚染される事になりましょう。・そのような汚染が見つかる度に、周辺が長い間立ち入り禁止区域になり、人間が踏み込める地域が制限されてくるのです。
それ以前に、安全に埋設処理する事自体、簡単なことでは無いでしょう。埋設処理の途中で、放射能漏れが起こる可能性も小さくないでしょう。埋設処理が中途半端な状態で放置される可能性もあるのです。作業員の中にも被曝者が沢山出るでしょう。
現実に日本では、この埋設処分場には、どこも立候補していないので、まだ試験場の位置づけであり、受け入れる体制は整っていません。ですから、やむなく原子力発電所内で仮置きしているのが実態です。これを原発推進側は「保管」とか「一時貯蔵」という言い方をしています。現実的に日本では、この危険な埋設処分を許す自治体はなかなか現れないでしょう。・・原発自体を受け入れる自治体があることを考えれば可能性はありますが・・埋設処理場建設には、汚職と脅し、札びらで頬をたたくと言うやり方で行われることになるのではないでしょうか?・・それでも立候補する地方自治体はなかなか現れないでしょう。
原子力発電環境整備機構(NUMO)は最悪の原発推進団体の一つです。事業仕分けで真っ先に廃止すべき団体でしょう。この組織が無くなって、六ヶ所村や東海村の再処理施設も使えなくなれば、プルトニウムなど放射性廃棄物の持って行き場が無くなって、日本の原発は止めざるを得なくなりましょう。直ちにそうすべきです。六ヶ所村や東海村の方々もその実態・・真実の姿を知れば、みんな怒り、再処理施設も稼働は出来なくなるでしょう。
増え続ける放射性廃棄物の持って行き場がなくなれば、廃炉を解体したとしても、放射性廃棄物をよその土地へは持って行けなくなります。・・現在既にそれに近い状態になっているので、六ヶ所村再処理施設とか、プルサーマル等の、より危険な事が行われるようになったのです。だからこれからは、廃炉になった原子炉を解体することなく、原子炉ごと周囲を立ち入り禁止区域にする可能性も大きいと考えられます。そして、石油が枯渇に近づけば、埋設処理も適切な処理も困難になってくるでしょう。被曝労働もますます増えていくでしょう。・・・そして放射能がいつか漏れ出してくるのです。つまり、廃炉になった原発周辺は、将来人が立ち入れない地域が増えて、それが長い間・・人類の歴史と比べて半永久的に・・続く事になる可能性が高いのです。立ち入り禁止区域であっても、放射能の漏れを少しでも食い止める為に、被曝しながら労働する人が必要になります。放射能漏れの危険が無くなるまでの途方もなく長い間、被爆労働者が必要になると言う事です。何とも憂鬱な事です。
日本の原発は約20か所に約55基、世界の原発は約440基です。これらの原発が・・稼働中に事故が起ころうが起こるまいが・・これからどんどん廃炉処理されて、今世紀半ばくらいまでには全部廃炉になるのです。そして、全ての廃炉が放射能漏れの危険性を孕んでいるのです。小さな放射能漏れは絶えずどこかで起こることになるだろうし、何年かに一度、どこかの廃炉で大きな放射能漏れを起こすだろうと予測しても、誰も否定することは出来ないでしょう。(・・否定するのは、NUMOなど原発関係の組織に属する御用学者だけでしょうか?・・)もう世界中が放射能汚染の脅威にさらされているのです。自国に原発のない国でも、放射能汚染の心配のない国は無いのです。(オーストラリアが比較的心配が少ないと言えましょうか?)以上の事だけでも、原発は即、全廃にすべきである理由として十分過ぎるでしょう。
何のメリットもない非常に危険で愚かな原発を、限られた人々の利権の為に、次々に作って来た為に、人類はこれから何万年も放射能汚染の心配をして暮らさなければならないのです。・・放射能汚染により、何万年経つ以前に人類は滅んでしまう可能性も低くはないでしょう。そして、放射能漏れが発覚する度に、立ち入り禁止区域が増え、息苦しい隔離された閉塞空間が増えていくのです。高々50年の発電の為に、多大な放射性廃棄物が産み出され、広い土地に人間も他の生物も住めなくなっていくのです。・・何とも憂鬱な事です。
原発の発電の恩恵なんて、放射能汚染と比べれば恩恵とも呼べないでしょう。そして、その微々たる恩恵にも預かれなかった末代までの子孫に、その憂鬱な管理を任せることになるのです。
原発が始まってから半世紀程経ちました。これから廃炉になる原発は次々に現れます。一つの廃炉に、広島型ウラン原爆の何十、何百、何千倍もの放射能が入っているのです。そう、今直ぐ原発全廃を決定して、廃炉作業を始めても、もう既に手遅れかも知れないのです。それでも、早く原発を廃止すればそれだけ助かる可能性も大きくなるのです。だから、一刻も早く原発を撤廃しなければなりません。
原発は、夢のエネルギーどころか、人類史上最低最悪のエネルギー、愚の骨頂です。
何と憂鬱な事でしょう。
関連内容を更にお読みになりたい方には、以下の記事がお薦めです。
<自然の摂理から環境問題を考える>
【自然の摂理を踏み外してしまった原発技術発】
<環境問題を考える> 『ホームページ管理者から』
2009/10/19【ふざけた『NUMO』の全面広告】
2009/10/26【常軌を逸した『NUMO』の謀略広告】
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