【前半】西穂高駅〜西穂山荘|6つのポイントをチェック
1:ロープウェイ乗り遅れ注意(とくに初便や最終便)2:ロープウェイで一気に標高が上がるので高度障害に注意3:尾根が広くて迷いやすい4:分岐ありだが、道標は埋まっていてわからない可能性もある5:急登のため、汗冷えに注意。急斜面のため雪崩の可能性もある6:樹林帯を抜けるため、風・雨・雪に備える
各チェックポイントを詳しく見ていきましょう。今回は実際の場所の写真も合わせて紹介していきます。
ポイント1〜3|ロープウェイなどに関する注意/尾根が広い部分は道迷いの恐れあり
地形図から読み取れること
1-2:冬山だから、というわけではないですが、計画段階においてロープウェイに乗ることのリスクを把握しておきましょう。3:地形図から起伏の少ない広い尾根であることがわかります。夏は登山道を歩けば良いところでも、降雪具合によっては、トレースがないとルートを見失う可能性あり。
今回のルートは、通年営業の山小屋が設置してくれていた目印の赤旗がありました。よっぽどの大雪でもない限り、トレースには痕跡が。しかし一般的に、このように尾根が広がっているところでは、地形が雪で埋まってしまうため、ルートを把握するのが難しいです。
そんな時は何度の方角に直線的に何m進むという方法で、目的地を目指しましょう。トレースがない場合に備えて、事前に進む方角と距離を細かく書き込んでおくのもオススメです。
ポイント4|分岐はポイントになるが、見落とす可能性も考えておく
地形図から読み取れること
4:分岐あり。ただし北から合流する登山道は、2,171mのピーク北側で急斜面をトラバースするように道がついているので、冬であれば滑落や雪崩のリスクが高く、使われていない可能性が高い。道標が雪に埋まって見つからないこともありうる。
予想した通り、雪に埋まっているためか、分岐の看板は見つかりませんでした。
ポイント5|急斜面は雪崩の可能性がある
地形図から読み取れること
5:等高線の間隔が狭くなっていることから急登とわかる。雪崩のリスクがある。
●実際の登山道の様子をチェック
地図記号から樹林帯であることがわかります。樹林帯での急登は、木の生え方や斜度によって雪崩の可能性も。
正確に等高線の間隔を測れば、斜度を計算することもできるので、雪崩のリスクを考える上で参考になります。
実際に行ってみると、積雪状況によってはたしかに雪崩の可能性がある斜度。ただ木が密に生えている部分がほとんどで、あまりリスクは高くなさそうでした。
ポイント6|樹林帯を抜けるので防寒具を用意
地形図から読み取れること
6:西穂山荘手前で地図記号「広葉樹林」から、背丈の低い「ハイマツ帯」に変わっていることから、樹林帯を抜けることがわかる。風に曝される可能性がある。
実際も樹林帯を抜けて、吹きさらしの中を進みます。天候によっては、吹雪に備えてにジャケットを着たり、帽子やフードをかぶったりする必要も。
写真を撮った日は荒れていたので、樹林帯を抜けてから小屋までの距離も吹雪かれ、進むのに時間がかかりました。事前にわかっていれば、万全に備えた上で樹林帯を抜けられますね。
【後半】西穂山荘〜西穂高岳山頂|7つのポイントをチェック
7:山頂までハイマツ帯。雪が浅いと踏み抜いたり、足を取られたりする可能性あり。風も直接当たるので、低体温症や凍傷にも注意。8:西側は崖になっているので滑落に注意。9:尾根が広くて迷いやすい。10:砂礫地。稜線で雪があまり着かないので石や岩が出ているかも。11:登山道がこの尾根を回り込むようについているので、間違って進んでしまう可能性あり。12:東側にできる雪庇踏み抜き注意。13: 西側斜面のトラバースは雪面が固くなっていそう。滑落リスクがあるので尾根通しに歩いた方が安全。14: 岩稜なので滑落に注意。
それでは、こちらも各チェックポイント詳しくみていきましょう。
ポイント7〜8|ハイマツ帯ではアイゼンを引っ掛けないように注意
地形図から読み取れること
7:ハイマツ帯。枝にアイゼン引っ掛けたり、踏み抜いたりして足を怪我しないように注意が必要。吹きさらしの稜線なので、低体温症や凍傷にも留意。
8:西側は崖になっているので滑落に注意。
岩やハイマツが出ていたり、浅く埋もれてわかりにくかったりと、引っかけてしまいそうな道でした。
ハイマツが雪に隠れているか出ているかで、景色や歩きやすさはかなり変わります。稜線は北西の季節風が強く当たるためか、雪はあまりついていませんでした。
ポイント9〜10|尾根の広い場所は道迷い、砂礫地は歩行に注意
地形図から読み取れること
9:尾根が広くなっているので、視界がなく、トレースがない場合は道迷いに注意。
10:「砂礫地」で雪面から石が出ている場合もあるので、足をひねらないように注意。
2,452mピーク(丸山)までは、多くの方が行くので赤旗が目印に立てられていました。ただそれより上部には目印の旗はなし。視界がなくトレースもない場合には、コンパスで進む方向を定めなければ、とんでもないところに迷い込んでしまうこともあるでしょう。
石が出ているところは、丁寧に足を置かないとつまづいてしまいます。いつでも地面に沿わせて足を置けるように、意識して歩きましょう。
ポイント11|下りの道迷いに注意。下りのことも考えてリスクを洗い出そう
地形図から読み取れること
11: 下る時、登山道が図に示した尾根の方にいったん向かった後でまた主稜線の方向に向きを変えるので、視界が悪い場合にはこれらの尾根に迷い込む可能性がある。
●実際の登山道の様子をチェック
雪も降っていて視界が悪い時には、先の様子もわからず、来た時のトレースも消えている場合も。
写真は独標より上部のものです。この写真を撮った日には、図で示した尾根に間違って下ろうとしていた数組の登山者を引き留めました。
ポイント12~14|積雪期のルート変更、岩稜での注意
地形図から読み取れること
12:稜線の東側に崖があるので、稜線の風下で風が巻いて雪庇ができている可能性あり。
13:狭い稜線の西側をトラバースするように登山道がついている。西側斜面は固い雪面になるので、滑落のリスクを低くするために尾根通しを歩いた方が安全かもしれない。
14:岩場の急斜面。岩が出ているかもしれない。急なルンゼ(岩溝)になっていれば雪崩のリスクもあるかも。
独標中腹から振り返って下を見た稜線。無雪期の登山道は黄色ですが、固く締まった雪で道が覆われると滑落のリスクが大きいので、稜線通しに赤線を歩きました。
左側(東側)に雪庇ができているのもわかります。
独標直下の岩場では、岩がむき出しになっています。このような場所では、アイゼンの爪を岩に引っかけて立ちこむ必要が。慣れないメンバーがいれば、迷わずロープで確保しましょう。
自信がなければ、すぐそこが山頂でも撤退する勇気も必要です。
岩場を抜けると急な雪面に。大雪の後は雪崩のリスクがあります。
また、確実なアイゼンピッケルワークが必要です。登りはなんとか登ったものの、下りは怖くておっかなびっくりという方はかなりいます。登りながら時々振り返って、下りも問題ないか、冷静に自分の技術と相談しながら先に進みましょう。
事前に調べて「リスク」を先読み!雪山を安心安全に楽しもう
地形図を読むことで、ガイドブックには書かれていないようなことまで細かく予測できました。事前にチェックすることで、リスクだけでなく必要になりそうな装備も見当づけられますね。
最初は難しいかもしれませんが、一部分でもよいので自分なりにやってみることが大事です。指導者やガイドについて行く時に、事前に下調べをした上でいろいろ質問していくと、だんだんとできるようになってきますよ。
山を自分の力で登れるようになるので、山行中も気持ちに余裕が持てるようになります。事前にしっかり準備をして、安心安全に雪山を楽しみましょう。
地図読みは実際にやることが大切です!講習会への参加もオススメ
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