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少子化の進行で私立大学の経営環境が悪化している。再編や統合による経営合理化が避けられない。万一の破綻に備え、学生保護の仕組み作りも急がねばならない。
文部科学省の試算によると、年62万人いる大学への入学者数は、少子化の影響で、2050年には42万人に減る見通しだ。
一方、私立大の数は年々増加する傾向にあり、現在は過去最多の624校に上る。人気回復を狙って4年制に移行する短大が相次いでいることも影響している。
入学者が定員を下回る「定員割れ」の私立大は今年度、6割に達した。入学者の減少で授業料収入が落ち込み、地方の中小規模校などは深刻な財政状態にある。
経営陣は危機意識を高め、大胆な改革に取り組んでほしい。
中央教育審議会の部会は、統廃合や定員の縮小を推進し、大学を「適正規模」にしていくべきだとする答申案をまとめた。
私立大同士で統合するほか、学部を譲渡してスリム化を図る選択肢もある。現状を見極め、早期に対策を講じることが不可欠だ。
私立大の運営を自治体が引き継ぎ、公立大に転換するケースも目立っている。「公立」のブランドが強みになるうえ、国からの財政措置を得られるため、私立大に比べて授業料が安く抑えられる。
若者を引き留め、人口流出を防ぎたいという地元の思惑にも合致している。ただ、大学運営にかかる費用が自治体の財政を圧迫する恐れもある。安易な公立化にはリスクが伴うと認識すべきだ。
経営の改善が見込めない場合は、撤退もやむを得まい。その際、避けねばならないのは、学生を抱えたまま破綻することである。文科省は、大学が突然閉鎖される事態に備え、学生が継続して修学できるルール作りを進めている。
学生が立ち往生することがないよう、しっかりとしたセーフティーネットを築いてほしい。
中小規模の私大の多くは、地域で活躍できる人材を育てる役割を担っている。地元産業界の意見も聞きながら、特色ある教育を展開することが大切だ。
近年は、デジタル人材の育成に主眼を置いた新学部への転換を図る大学も目立っている。時代のニーズを的確に捉え、地域貢献の使命を果たしてもらいたい。
日本の若者だけにターゲットを絞った大学経営は限界に来ている。社会人や留学生にも魅力を感じてもらえるよう、教育の質を高めていくことが重要だ。