やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

ICTを活用してレポート課題をつくる・評価するときに大切なこと① 〜学習者目線を意識して〜

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オンラインから学校再開へ。怒涛の1ヶ月でした。ようやく今学期の終わりが見えてきました…。

書きたいことは色々ありますが、5月頭に課していたレポート課題とそのフィードバックについて。

オンライン授業期間に告知した課題のため、フルオンラインでも学習を進められるようにICTを活用してきました。

色々な問題点がありましたが、3つほどの打開策を紹介します。

まず、レポート課題を課す上で悩ましかった点としては、

問題1:紙の書籍にアクセスできない!

これがまず立ちはだかる壁でした。生徒が自宅からアクセスできるネット上の記事は当然玉石混交、かと言って、オープンアクセスの論文を読める生徒も限られる。

学校図書館には生徒の学齢に合わせた、読んでもらえる資料が豊富にあるということを再認識しました。

ただ、学校図書館が使えない。

本校は図書館スタッフの尽力もあり、数冊に限り学校図書館蔵書を郵送で貸し出しするサービスが稼働されましたが、これにも限りがあります。

例年行うような、図書館で書架を歩きながら思い思いに資料を閲覧するような時間は作れません。

こうした問題点への打ち手として、

打開策1:自宅で閲覧できる資料を増やす

ことを意識しました。具体的には、

  • 今回のレポート課題に関連する分野の専門データベース(DB)の新規契約
  • すでに契約済みのDBは学外閲覧+アクセス数UP・期間延長
  • 学外閲覧可能な買い切りの電子書籍の購入

という形で、図書館の協力を全面的に仰ぎながら、生徒が自宅でも閲覧可能な資料を増やし、レポートの質を上げられるように環境を整え(てもらい)ました。

Google Classroomで、「レポート関連の資料等は全てここにあるよ!」とスレッドを作り、各種リンクやパスワードを通知すると同時に、新規DBについては、その使い方を動画で解説してupしました。

とにかく、「この課題に取り組むときに参照すべき資料はすべてここにある」という学習者目線を少しでも反映することを目指しました。

オンライン大学院を経験して

こうした設定の背景には、自分が大学院に通いながらオンライン学習をしていることがあります。

というのも、「閲覧すべきもの」がどこに載せられるか、先生によって違い苦労しているからです笑 

メール、LMS、Teamsでの共有など、色々と学習者として気を張る日々です。その反省を生かして学習者の環境を整えることを目指しました。

勤務校では、とにかく「Google Classroomをプラットホームにしよう」という方針だったので、それも混乱を防ぎ、プラスに働いたと思います。

www.yacchaesensei.com

実際に有効に使われたか?

これは私の実感なので生徒にきちんと尋ねる必要がありますが、実際に完成したレポートを見ると、今回導入した資料がかなり使われていました。

むしろ、専門的に分析する資料にあたったからか、深く掘り下げ、教科の見方・考え方が生きたレポートが今年は多かったように感じます。

※レポート課題の設計についてはこの本が参考になります!

学生を思考にいざなうレポート課題

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  • 発売日: 2016/12/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

とはいえ、問題点は他にもあります。

問題点2:どんな作品を目指せばいいかわからない

例年であれば、先輩の優秀作の実物を展示したり、授業内で紹介したりしていたのですが、今年はそれが難しい、という課題がありました。

担当している政治経済は必修科目です。

成績を気にする生徒にとっては、純粋に「いい成績が取りたい」という思いも強く、どんな作品が良い作品か、という基準がないまま取り組むのは不安が大きいものです。

これに対しては、評価の観点を明示しつつ、

打開策2の1:アンカー作品を掲載する

アンカー作品というのは、「このクオリティであれば、この評価がつく」とわかるような、典型的・代表的な作品のことを言います。

今回のレポート課題はいくつかの項目で評価するので、複数項目で最高の「A」をとっているような作品を中心に、Google Classroomに掲載しました。

先輩の作品から抜粋し、「必ずしも完璧とは言い切れないけれど光るものがある作品」ということで掲載しました。

本来であれば、

  • 掲載されているアンカー作品を読む
  • 自分でそのレポートをルーブリックに従い評価する
  • 評価の根拠をグループでディスカッションする
  • ルーブリックの記述語を修正する 

といったような活動ができれば理想的ですが、そこまではできず。。

ただ、非常によいレポートを書いたある生徒が「先輩の作品を読み込んで、それぞれのいいいところを活かせないかと思って書きました」と先日教えてくれたのが印象的です。 

読む生徒はどこまでもしっかりやってくるので、読まない生徒にもこういう機会を提供することが必要だなと反省もありますが、アンカー作品は、オンライン上での共有で問題なかったと感じます。レイアウトにも凝ったものが多いので実物展示も続けつつ…

打開策2の2:FAQを掲載する

オンラインだと"ちょっとしたこと”もなかなか聞き辛いですよね。

「ここはこうしたほうがいいのかなと思うけど、どうなんだろう」というような、「気になるけど聞くのもちょっと気後れする」ような質問です。

そんな質問と回答をGoogle ドキュメントにまとめて掲載しました。

オンラインになると、学習者同士の相互交流が薄れ、隣の人に「これってこういうことだよね?」のように確認したり、"ちょっとしたこと”を話す機会が減ります。

この、レポートで想定される"ちょっとしたこと”とそれへの回答をまとめておくことで、メールでの質問も減り、生徒も安心して取り組めるようになるかなと思っています。

こちらの準備不足で、質問のジャンルごとにまとめられなかったり問題点はまだまだあるのですが、少なくとも非同期型で、学習を促す仕掛けは今後、対面に戻るとしても必要な施策だと思います。

ここで浮かび上がる、モチベーションの喚起が難しい、というのが3つ目の問題点。

問題点3:モチベーションの喚起が難しい

学習者集団が相互に見えにくい中での学習はただでさえ大変です。

ましてや、レポートに取り組むときはなおさら孤独感が募ります(私の話)。

これに対しては、

打開策3:ピアレビューで学び合う

ことを意識しました。

でも、ただ完成したもののレビューをするのではなく、

  • 今後の執筆に生かすことを目指し、中間発表という形で行う
  • 自分なりにフィードバックが欲しい点を問いにして投げかける
  • とりかかるのが難しい生徒が「何からやればいいかわかる」ように項目ごとに記入するワークシートを提供する

という形で運用しています。ワークシートもデータで共有しています。

レビュー当日は、Zoom上で1グループ3,4人のブレイクアウトルームを作り、ワークシートを画面共有して行ってもらいました。

今回のレポート課題は、人のレポートと扱う内容も異なり、学び合いも有効に機能する内容だったことも大きいですね。

友人の努力や、視点から「もっとこうしてみよう」という意欲が生まれたり、

ワークシートをうめる、という作業を通して、自分の焦点を当てたい部分を明確化することをねらっています。

実際、このピアレビューの早期実施もあってか、読み込みの深いレポートが増えていました。

対面に戻った時も、ピアレビューをもう一回やりたい、という声もあり、ブレンディッド・ラーニングの手法で2回目以降のピアレビューを行なった生徒もいます。 

www.yacchaesensei.com

おわりに

長くなってしまいましたが、こんな感じでオンライン学習が続いても学習が促進されるような環境整備を行ってきました。

総じて、本当に総力戦で実現できた課題でした。地味だけど、学校のリソースをできる限り活用した課題になったと思います。学校のスタッフや、頑張ってくれた生徒にひとえに感謝です。

そして、

オンライン期間に扱ったことをどう評価するか?という話題がそろそろ出てきそうです。

ピアレビューという形成的評価には触れましたが、教員からのフィードバックや総括的評価については続編記事を書きたいと思います。

気づけば1ヶ月ぶりの更新になってしまいました。今学期の振り返りも兼ねて、4~7月のことをこれに限らず色々残しておこうと思います。