せん‐とう【戦闘】
戦闘
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戦闘(せんとう、英: Combat, Battle、羅: proelium、プロエリウム)は、相互に敵対する二つの勢力による暴力の相互作用である。
戦闘が行われている場所を戦場(せんじょう)、戦地といい、歴史的に戦闘(合戦など)が行われた場所は古戦場(こせんじょう)と呼ぶことがある。歴史的な慣習によって、「―の戦い」、「―の合戦」、「―の会戦」という用語も用いられる。
ここでは戦闘一般に関する軍事学の研究を概説する。
戦闘とは一般的に敵対している部隊が特定の目的を達成するために戦闘力を行使する行動、またはその行動によって引き起こされる一連の交戦状況であり、具体的には索敵、機動、攻撃・防御、追撃・後退行動と段階的に進展する。戦闘において部隊を指導するのは戦術であり、戦闘の目的や投入される戦力の装備、規模は作戦計画によって決定される。戦闘では敵と敵施設に対して武器、兵器を使用して殺傷することによって抵抗行動を排除、破壊し、作戦目標を達成することが主要な作業となる。戦闘当事者である兵士たちは非常に強い肉体的・精神的なストレスを受けながら戦闘行動をとることになるため、被弾や被爆で死傷するだけでなく、衝撃的な経験からPTSDなどの精神疾患を患う場合もある。また戦闘は戦闘当事者双方ともに生死の狭間という極限状況において活動するため、戦場心理と呼ばれる特別な心理状態になることもある。そのため、戦闘力の要素として火力や機動力などのほかに軍事的リーダーシップが含まれると考えられている。
研究史
古典的研究
戦闘を構成する諸要素や相互の関係性、そして戦闘の形態や構造、原理に関する最古の研究として古代中国における孫子(紀元前535年 - ?)の研究業績が挙げられるが、彼の後に研究が発展することはなかった。ヨーロッパにおいてもナポレオン戦争が発生する前にはヴェゲティウス(4世紀頃)、マウリキウス(539 - 602)、レオ[要曖昧さ回避]、ド・サックス、フリードリヒ2世などの先駆的な研究がある。だが、近代的な戦闘理論が成立したのはナポレオンの時代に入ってからである。ナポレオン・ボナパルト(1769 - 1821)は軍事理論に関する論文を執筆しなかったが、士気が物的要素に対して三倍の効果をもたらすこと、また機動的に戦力を運用する重要性を指摘するなどの研究成果を残した。ナポレオンの幕僚でもあったアントワーヌ・アンリ・ジョミニはナポレオンの軍事思想の本質を理論化し[要出典]、戦闘を規定する戦いの原則を確立した。それは主力をある決定的な地点、敵の側面や背後に対して集中させるという普遍的な原則である。またナポレオン戦争で参加したカール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780 - 1831)はジョミニとは別のアプローチでナポレオンの軍事思想を解釈し、独自のアプローチで戦闘の法則、戦闘力の要素、攻撃や防御の行動を体系化した。クラウゼヴィッツの戦闘理論は敵の殲滅を目的とする暴力的な行動によって定義されるものであり、戦闘力の優劣によって勝敗が決定されるものと定式化される。
近代の研究
ジョミニやクラウゼヴィッツに影響を受けた研究者たちは後に戦闘の研究を理論的に発展させるための研究成果を残してきた。アメリカではデニス・ハート・マハン(1802-1871)はジョミニの影響の下で戦闘にいて依拠するべき原則を提示し、ドイツではヘルムート・カール・ベルンハルト・フォン・モルトケは訓令戦術と包囲を重視した機動理論を提起した。一方のフランスではチャールズ・アルダン・ドゥ・ピッグによって戦闘における士気という心理的要素を解明して戦闘理論の研究に寄与した。海上戦闘の研究者であるアルフレッド・セイヤー・マハン(1840 - 1914)はジョミニや父親のデニス・ハート・マハンの影響の下で陸上戦闘の研究を海上戦闘に応用することに成果を挙げ、戦闘の一般理論が地理的環境の変化にも適応可能であることを示した。またモルトケの研究を受け継いだアルフレート・フォン・シュリーフェン(1833 - 1913)は戦闘における殲滅の原理を発展させて包囲殲滅の教義を確立し、その研究成果はシュリーフェンプランとして結実した。コルマール・フォン・デア・ゴルツはモルトケやシュリーフェンの影響の下でそれまでのドイツにおける戦闘の研究を総合し、フランスやイギリスに紹介する役割を果たした。フェルディナン・フォッシュはドゥ・ピッグの研究に影響を受けるとともにドイツの殲滅の原理を受容しており、特に士気などの精神的要素を戦闘の理論において位置づけた。航空戦闘に戦闘の理論を始めて応用したジュリオ・ドゥーエは陸上や海上とは異なる地理的、技術的条件の下で行われる戦闘が理論的にどのような作戦を可能とするかを明らかにした。またジョン・フレデリック・チャールズ・フラーは現代の戦闘の理論を研究するための科学的な方法論を準備し、戦いの原則を現代の戦闘の形態に応じて発展させた。フレデリック・ランチェスター(1868 - 1946)は戦闘の数学的モデル化に取組み、特に戦闘力と戦闘結果の因果的な関係を定式化した。
戦闘理論
戦闘の概念
戦闘の理論において戦闘の本質をはじめて哲学的に定義したクラウゼヴィッツは戦争との関係から戦闘の性格を捉えている。クラウゼヴィッツの見解によれば、戦争とは政治の延長として位置づけられており、政策の道具として戦争が特徴付けられることを論じており、これを現実の戦争と呼んでいる。同時にクラウゼヴィッツは政策の道具として戦争を見なさずあくまで政治に対して孤立的な行動として戦争を見なした場合、戦争本来の性格が無制限の暴力にあることを明らかにして絶対戦争として定式化した。彼の戦闘の基本的な概念は絶対戦争と同様に本来の性格が敵の殲滅に他ならないことを論じている。なぜならば、「戦闘は即ち闘争であり、この闘争の目的は敵の撃滅もしくは征服である」ためであり、これが戦闘の最も簡潔な概念であると定義づけた。彼にとって戦争におけるあらゆる戦略的な行動は戦闘に行き着くのであって、個々の戦闘はその規模を問わず、戦争全体の目的に従属する目標のために行われる。
戦争の階層構造
戦闘とは戦争の階層構造の中で理解することができる。ここでは戦闘の下位における交戦、そして戦闘の上位における作戦と戦争について概観する(Field Manual 100-5を参考)。
- 交戦(engagements) - 敵対する戦力間で発生する小衝突、小競り合いを指す。ただし、片方の戦力が防御行動に出ている場合は、これが戦闘に発展することはない。ただし航空戦においてはミサイル、機関砲が使用された時点で交戦と見なされる。
- 戦闘(battles) - 戦闘とはある目的を達成するため(作戦を通じて)に敵対する戦力によって組織的に行われる戦術的な衝突であり、交戦の集合体である。各種戦力の特徴によってその進展はさまざまであり、非常に広範な地域において長時間にわたって行われることがあるが、即時決戦となる場合もある。交戦において双方が事態を発展させていくと戦闘に至る場合もある。
- 作戦 - 戦闘を円滑かつ合理的に遂行するために計画実行されるのが作戦である。この作戦に基づいて戦闘は進められる。戦闘は作戦の下位概念である。
- 戦争 - 戦争とは主に国家間において方面作戦及び一連の作戦が継続的に実行されている状況であり、作戦・戦闘の集合体であると言える。
戦闘の法則
戦闘における勝敗が戦力の優劣によって決定付けられることを示した数の法則(Law of numbers)はクラウゼヴィッツによって提唱された。彼の見解によれば、部隊の数量が勝利を決定し、数的な優位性こそが唯一の勝利の原因である。またクラウゼヴィッツは戦闘を分析する上では部隊の性質にも着目することで、この数の法則は時代や地域を問わずあらゆる戦闘に一般的に適応可能であることを主張する。クラウゼヴィッツのこの理論は後に戦闘の理論として明確に整理されることになり、部隊の戦闘能力は両軍のそれぞれの数的な戦力と戦力の性質、そして戦闘に影響を及ぼす環境変数の積によって求められ、青軍と赤軍の両軍の部隊の戦闘能力を割った数が戦果として求められることを明らかにした。これを数式として表すと次のようになる。
- 出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
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関連項目
戦闘(『半熟英雄 対 3D』以降では「攻撃」)
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戦闘
「戦闘」の例文・使い方・用例・文例
- 戦闘に参加する,実戦を経験する
- その戦闘で多くの兵士が血を流した
- 血生臭い戦闘
- 彼は戦闘で死んだ
- 捕虜・傷病兵・非戦闘員の扱いについての国際協定
- 戦闘に備えて兵士を配置する
- 戦闘服を着て
- 戦闘機のパイロット
- 前線で激しい戦闘があった
- 戦闘隊形で
- 3機の戦闘機が敵に撃墜された
- 軍隊は戦闘もなく町を占領した
- 彼の隊は戦闘で敵に勝利した
- 戦闘地帯
- 戦闘機は航空母艦に着陸した。
- 彼は十字翼の戦闘機のパイロットだ。
- 彼はその戦闘機のパイロットで、幾多の空中戦に勝利した。
- 太郎は戦闘で致命傷を負った。
- 彼らは熱心に戦闘命令を待っている。
- 全員戦闘を始める配置についている。
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