ガイア理論とは? わかりやすく解説

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ガイア‐りろん【ガイア理論】

読み方:がいありろん

地球上において、大気地殻などの自然環境と、動植物などの生物相互に影響し合うことで、地球という惑星一つ大きな生命体のように活動していると見なす理論英国科学者ラブロック提唱したガイア仮説。→ガイア【二】


ガイア理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/26 13:34 UTC 版)

外から見た地球の写真(ブルー・マーブル)。

ガイア理論(ガイアりろん)またはガイア仮説(Gaia theoryまたはGaia hypothesis)とは、生物地球と相互に関係し合い、自身の生存に適した環境を維持するための自己制御システムを作り上げているとする仮説[1][2]。また、そのシステムをある種の「巨大な生命体」と見なす仮説である。

アメリカ航空宇宙局(NASA)に勤務していた科学者であるジェームズ・ラブロックにより提唱され、生物学リン・マーギュリス気象学者アンドリュー・ワトソンなどが支持した。

ガイア理論は科学的な理論としては今日でも受け入れられていない[3][4][5]。しかしながら、地球システム科学、生物地球化学、システム生態学などその後の新しい学問分野の発展に大きな影響も与えた[6][7]。ガイア理論の意味するところをめぐって様々な解釈がなされ、それが多くの議論を呼ぶ原因となっている。

概説

ガイア理論はジェームズ・ラブロックにより1960年代に初めて提唱された。この仮説はアルフレッド・レッドフィールドジョージ・イヴリン・ハッチンソンの先行研究をもとにしている。ラブロックは当初、この理論を「自己統制システム」と命名したが、後に作家のウイリアム・ゴールディングの提案により、ギリシア神話の女神「ガイア」にちなんだ名前へ変更した[8]。ただし、ガイア理論につながる思想の歴史は古い。まず、ロシア文化圏では20世紀前半にガイア理論や今日の生物地球化学に近い議論がすでに行われていた[9](例えばウラジーミル・ヴェルナツキー)。さらに、科学的な推論方法が確立しない時代から類似の思想は繰り返し出されている(Gaia philosophyを参照)。また、ガイア理論が意味する内容も実際には非常に大きな幅がある。例えば、地球は一個の生命体であるといった最も極端な主張から、生物によって地球表層環境が変化したというより弱いものまである(James Kirchnerによる分類)。地球表層環境の変化自体は実際に観測されている事実である(例えば大気中の酸素の存在)。しかし、地球が一個の生命体であるといった強い主張は科学的な検証を欠いており、多くの科学者がガイア理論にまつわる一連の議論から距離を置く理由となっている。

提案時は主に気候を中心とした生物と環境の相互作用についての仮説であり、この相互作用には何らかの「恒常性」が認められるとしたものであった。当初より理論が目的論的で生命の自然淘汰がどのように環境に影響を与えるのかが不明であるとして批判された[10]。著名な批判者にリチャード・ドーキンス、フォード・ドゥーリトル(Ford Doolittle)、スティーブン・ジェイ・グールド がいる。こうした批判に対して、1983年にデイジーワールドと呼ばれるコンピュータモデルが提案された[11]。このモデル(およびその後の改良)により、自然淘汰が地球環境に実際に影響を与える可能性が示された。今日の生物地球化学や地球システム科学などの分野においては、生物の環境に与える影響や、生物と環境の共進化といった概念はなんら新しいものではない。その意味ではガイア理論は受け入れられている。ただし、目的論的な要素はそこから排除されている(そしてガイア理論という言葉も使われない)。また、今日の気候学においては、大気海洋陸水氷雪生物の相互作用を包括的に取り扱う理論(地球システムモデル)が展開されており[12][13]、ガイア理論が単独で議論されることはなく、一部として取り込まれていると言える。

地球システム科学の研究者(Toby Tyrrell)による2013年の論評では次のように述べられている[14]

「ガイア理論はすでに過去のものである。しかしながら、その理論は多くの新しく挑戦的な疑問を提示した。私たちは、ガイア理論自体は否定しつつも、同時にラブロックの独創性・視野の広さについて高く評価している。さらに私たちは、彼の大胆な概念が地球について多くの新しい考えを生み出すとともに、その概念が、地球を理解するためには総合的な大きな視点が必要であることを支持している、ということを認識している。」

2006年、ラブロックはガイア理論を含む彼の業績によりロンドン地質学会からウォラストン賞を贈られている[15]

同理論の影響が見られる作品

出典

  1. ^ Lovelock, J.E. (1972-08). “Gaia as seen through the atmosphere” (英語). Atmospheric Environment (1967) 6 (8): 579–580. doi:10.1016/0004-6981(72)90076-5. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/0004698172900765. 
  2. ^ Lovelock, James E.; Margulis, Lynn (1974-02). “Atmospheric homeostasis by and for the biosphere: the gaia hypothesis” (英語). Tellus 26 (1-2): 2–10. doi:10.1111/j.2153-3490.1974.tb01946.x. http://tellusa.net/index.php/tellusa/article/view/9731. 
  3. ^ Kirchner, James W. (2002). “[No title found”]. Climatic Change 52 (4): 391–408. doi:10.1023/A:1014237331082. http://link.springer.com/10.1023/A:1014237331082. 
  4. ^ Volk, Tyler (2002). “[No title found”]. Climatic Change 52 (4): 423–430. doi:10.1023/A:1014218227825. http://link.springer.com/10.1023/A:1014218227825. 
  5. ^ Beerling, D. J. (2007). The emerald planet : how plants changed Earth's history. Oxford: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-151307-7. OCLC 137238581. https://www.worldcat.org/oclc/137238581 
  6. ^ Turney, Jon (2003). Lovelock and Gaia : signs of life. New York: Columbia University Press. ISBN 0-231-13430-4. OCLC 54988950. https://www.worldcat.org/oclc/54988950 
  7. ^ Schwartzman, David (1999). Life, temperature, and the earth : the self-organizing biosphere. New York: Columbia University Press. ISBN 0-231-10212-7. OCLC 41049691. https://www.worldcat.org/oclc/41049691 
  8. ^ Lovelock, James (1988). The ages of Gaia : a biography of our living Earth. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-217770-2. OCLC 182850136. https://www.worldcat.org/oclc/182850136 
  9. ^ Lapenis, Andrei G. (2002-08). “Directed Evolution of the Biosphere: Biogeochemical Selection or Gaia?” (英語). The Professional Geographer 54 (3): 379–391. doi:10.1111/0033-0124.00337. ISSN 0033-0124. http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1111/0033-0124.00337. 
  10. ^ Dawkins, Richard (1999). The extended phenotype : the long reach of the gene. D. C. Dennett (Revised edition ed.). Oxford. ISBN 978-0-19-102434-4. OCLC 864140193. https://www.worldcat.org/oclc/864140193 
  11. ^ Watson, Andrew J.; Lovelock, James E. (1983-09). “Biological homeostasis of the global environment: the parable of Daisyworld” (英語). Tellus B 35B (4): 284–289. doi:10.1111/j.1600-0889.1983.tb00031.x. http://www.tellusb.net/index.php/tellusb/article/view/14616. 
  12. ^ N. G., Ward, D. S. & Natalie, M. M. (2013). “Studying and Projecting Climate Change with Earth System Models”. Nature Education Knowledge 4(5): 4. 
  13. ^ Kawamiya, Michio; Hajima, Tomohiro; Tachiiri, Kaoru; Watanabe, Shingo; Yokohata, Tokuta (2020-10-20). “Two decades of Earth system modeling with an emphasis on Model for Interdisciplinary Research on Climate (MIROC)”. Progress in Earth and Planetary Science 7 (1): 64. doi:10.1186/s40645-020-00369-5. ISSN 2197-4284. https://doi.org/10.1186/s40645-020-00369-5. 
  14. ^ Tyrrell, Toby (2013). On Gaia : a critical investigation of the relationship between life and earth. Princeton: Princeton University Press. ISBN 978-1-4008-4791-4. OCLC 844938817. https://www.worldcat.org/oclc/844938817 
  15. ^ Wollaston Medal”. The Geological Society of London. 2021年9月6日閲覧。

関連項目

参考文献

外部リンク


ガイア理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 04:20 UTC 版)

ファイナルファンタジー (映画)」の記事における「ガイア理論」の解説

星が1つ生命体であり、星も人間動植物同様に命を持つという理論作中ではシド博士がこの理論正しいことを主張しているが、ハイン将軍および評議会物的証拠が無いことを理由異端扱いされている。

※この「ガイア理論」の解説は、「ファイナルファンタジー (映画)」の解説の一部です。
「ガイア理論」を含む「ファイナルファンタジー (映画)」の記事については、「ファイナルファンタジー (映画)」の概要を参照ください。

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