新型「スズキ・スイフト」デビュー

2010.08.26 自動車ニュース 竹下 元太郎
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「スズキ・スイフト」がフルモデルチェンジ

スズキは2010年8月26日、コンパクトカー「スイフト」の新型を発表。9月18日に発売する。

■開発テーマは「よりスイフトであること」

個性あるエクステリアデザインと走りの良さで高い人気をほこる「スイフト」。その評価は国内にかぎらず世界的に高い。2004年9月の生産開始から3年8カ月で世界累計生産が100万台に達し、2010年3月末時点での世界累計販売は165万台に上っている。3年8カ月で100万台というのは同社最短記録だ。また発売以来、世界9カ国で20の賞を受賞しているという。

その勢いを引き継ぐために、スズキが掲げた新型の開発テーマは「More SWIFT」(モア・スイフト)と呼ばれる。デザインや走りなど従来型で好評だったところにはさらなる磨きをかけ、同時に環境や安全といった時代や社会が要請する性能も一段と強化して「よりスイフトであること」を目指した。

エンジンは国内市場では1.2リッター(K12B型)のみにしぼられ、1.3リッター(M13A型)は廃止された。グレードは3種用意され、ベーシックな「XG」のほか、標準的な「XL」と装備が充実した「XS」があり、それぞれに4WDの設定がある。価格帯は124万4250円〜165万3750円。
従来型同様、世界戦略車としてハンガリーほか世界のスズキの各拠点で生産される予定で、日本向けは静岡県牧之原市にある相良工場が担当する。

■プラットフォームを一新

モデルチェンジに「攻め」と「守り」というふたつの姿勢があるとすれば、新型「スイフト」から「守り」の印象を受ける人は多いのではないだろうか。おそらくその第一の理由は、エクステリアデザインが“変わってない”からだろう。
しかし実際に2台を並べてみると、新型は従来型のイメージを受け継いだにすぎず、だいぶ違ったデザインであることがわかる。より躍動的な造形とするべく、エクステリアのラインはすべて新しく描き直されている。

また新型が「攻め」であるもうひとつの理由は、クルマのベースとなるプラットフォームが一新されていること。それに合わせてサスペンションも形式こそ同じだが、内容が大きく見直されている。

ボディサイズは全長3850mm×全幅1695mm×全高1510mm(FF車)。引き続き5ナンバー登録にとどまった。旧型と比べると全長の拡大分(+95mm)が目立つが、これはホイールベースの延長(+40mmの2430mm)と、エンジンルーム長の拡大(+55mm)による。前者は居住性と走行安定性の改善、後者は衝突安全性の向上を企図してのものだ。

■エンジンは1.2リッターのみへ

エンジンは上述のように1.2リッター直4のみ。今回、吸気側だけでなく排気側にもVVT(可変バルブタイミング)機構が与えられ、燃費の向上と全域におけるフラットなトルク特性の実現をめざした。もっとも、エンジンのアウトプットは91ps/6000rpmおよび12.0kgm/4800rpmと実質的に同じ。わずか1psアップ(トルクは同じ)にとどまる。

トランスミッションはCVTと5MTにしぼられ、4AT搭載車は姿を消した。そのCVTは、すでに「アルト」や「パレット」、あるいは「日産マーチ」などに搭載されているジヤトコ製の、プラネタリーギアの副変速機を持つタイプである。7.3というワイドな変速比幅(従来の4ATは4.1、CVTは5.6)をほこり、ドライバビリティ(運転しやすさ)と燃費の改善に貢献する。
また、最上級グレードの「XS」にはステアリングパドルが装着され、7段マニュアルモードが用意される。

なお新旧のFFモデルの燃費を比較すると、10・15モードで21.0km/リッターから23.0km/リッターへと約10%向上した。

■走りを磨く

新しいプラットフォームに組み合わされるサスペンションは、形式で見ると、前:マクファーソンストラット、後:トーションビームと変わりない。しかしハンドリング性能の向上と軽量化を高いレベルでバランスさせるために、これらも大幅に構造が見直されている。

まず、フロントサスペンションは重量据え置きでロール剛性を約20%向上させた。またステアリングは中心付近がクイックで、操舵(そうだ)量に応じてギア比がスローになる可変ギアレシオ式を採用した。回頭性(ヨー応答性)でいうと、約25%クイックになっているそうだ。

それに合わせてリアサスペンションの安定性も上がっており、トーションビームアクスルのボディ取り付け部分(ビームブッシュ)を斜め配置とすることで、取り付け部横剛性を50%向上させた。そればかりか、同時にコーナリング時のトー変化を最適化した。実際、旧型のオーナーから「特に滑りやすい路面でリアがブレイクしやすい傾向がある」という指摘があり、それに対応したものだという。

さらにリアサスペンションでは、トーションビームの断面を“二重”とすることによって、ビーム自体に別置きスタビライザーの機能を内包させた。この措置により、従来型ではビーム内部に設置していたスタビライザーを廃止でき、バネ下重量が約2kg向上できたばかりか、ロール剛性も25%高めることができた。

■安全装備には格差あり

歩行者障害軽減ボディーや頭部衝撃軽減構造インテリアの採用など、新型は基本構造において安全性能が向上していると説明される。しかし装備面では最上級グレード「XS」の突出ぶりが目立つ。前席サイドおよびカーテンエアバッグ、ヒルホールドコントロール付きESPは「XS」に標準で装着されるが、その他のグレードではオプションとしても用意されない。ちなみにヨーロッパ仕様では7つのエアバッグが標準装備されるとのことだ。

またブレーキについても「XS」グレードのFF車、および全モデルの4WD車でリアがディスクに格上げされたが、その他についてはドラム(リーディング・トレーリング)にとどまる。

タイヤサイズも大径化された。従来型では14および15インチだったが、新型では15インチ(XG:175/65R15)と16インチ(XLとXS:185/55R16)となっている。

ちなみに今回はスポーティバージョンの「スイフトスポーツ」は発表されなかったが、質疑応答での開発陣の言葉からすると、開発は順調に進んでいるようだ。

(文=webCG 竹下/写真=高橋信宏)

新型「スズキ・スイフト」
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「XS」のインテリア。本革巻きステアリングホイールにステアリングオーディオスイッチが装備され、パドルシフトも標準で備わる。チルト機構やテレスコピックは全車に備わる。
「XS」のインテリア。本革巻きステアリングホイールにステアリングオーディオスイッチが装備され、パドルシフトも標準で備わる。チルト機構やテレスコピックは全車に備わる。 拡大
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従来型(写真左)と並べると違いがよくわかる。新型(写真右)のデザインはU字モチーフが特徴。重量感のある力強い印象になった。
従来型(写真左)と並べると違いがよくわかる。新型(写真右)のデザインはU字モチーフが特徴。重量感のある力強い印象になった。 拡大
リアにもフロントと同じU字モチーフデザインが採用され、リアコンビネーションランプはシャープに。(新型は写真左)
リアにもフロントと同じU字モチーフデザインが採用され、リアコンビネーションランプはシャープに。(新型は写真左) 拡大

新型「スズキ・スイフト」デビューの画像 拡大
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「XS」の内装。フロントアームレストはXSのみの装備。
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「XS」のFF車と全4WD車は、リアにもディスクブレーキを採用。
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ドアウェザーストリップが全周2重化され、室内の静粛性も向上している。
ドアウェザーストリップが全周2重化され、室内の静粛性も向上している。 拡大
上級グレードの「XS」(左)とベーシックグレード「XG」。外観の違いは、XSにはフロントフォグランプとLEDサイドターンランプ付きドアミラーが備わる。
上級グレードの「XS」(左)とベーシックグレード「XG」。外観の違いは、XSにはフロントフォグランプとLEDサイドターンランプ付きドアミラーが備わる。 拡大

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