流通小売業でデジタルサイネージの導入が進んでいる。とはいえ、導入や運用、効果に関してさまざまな懸念があるのも事実だ。そうした懸念を払拭(ふっしょく)して、最適なコンテンツ配信・管理が実現できるデジタルサイネージソリューションを提供するシャープに、デジタルサイネージの市場動向から、提供しているソリューションの紹介など幅広く話を聞いた。
デジタルサイネージ導入に関する懸念
店舗の入り口では本日の特売品情報が商品の画像とともに次々と映し出され、店内の商品陳列棚ではその商品を使ったお勧め料理の動画が流れる──。そう、いわゆる「デジタルサイネージ」だ。
大型の駅や複合施設などでよく見かけると思うが、近年は流通・小売店でも多く見るようになってきた。
デジタルサイネージはこれまでの手書きPOPや紙のポスターのように内容を変えるたびに取り換える手間がなく、一度設置すればタイムリーに情報を発信できる。しかも静止画やテキストだけでなく動画も発信できるほか、利用者が画面にタッチして操作することが可能なものや、インターネットに接続することで天気やニュースなどを表示することができるものもある。
「導入が難しいのではないか」「運用に手間がかかって現場が大変なのでは」「効果は見えないのか」と疑問を持つ人もいるかもしれないが、最近ではそうした懸念を解消するデジタルサイネージが登場している。デジタルサイネージを幅広くソリューション展開しているシャープの場合を見ていこう。
シャープのデジタルサイネージと市場動向
シャープが業務用ディスプレー(デジタルサイネージ)の事業に参入したのは2005年のこと。2010年代には大型のマルチディスプレーや、タッチパネル一体型、4Kディスプレーモデルなども展開し、業務用液晶ディスプレーの分野ではトップメーカーとして業界をけん引している。
「これまで培ってきた液晶ディスプレーへの信頼に加え、43型から120型までの豊富な商品ラインアップと、多くの導入事例・設置のノウハウを持っていることがポイントだと思います」と話すのは、シャープマーケティングジャパン ビジネスソリューション社 デジタルイメージング営業推進部 参事の今井 綾子氏。
シャープのデジタルサイネージ事業では、導入前のコンサルティングから、設計・施工、トレーニング、運用支援、保守・サポートまでワンストップサポートを提供している。「スタートから設置、運用まですべて、ワンストップでサポートできることが私たちの強みであり、評価されているところです」ともいう。
デジタルサイネージの市場は、新型コロナウイルス流行の影響でインバウンド需要を見越したニーズが一時的に低下したものの、2021年からは復調傾向だという。「新型コロナウイルス流行の影響でいったんは需要が落ち込みましたが、混雑可視化や密回避、検温検知といった感染対策にサイネージを利用するニーズが大きく増え、これまでになかったニーズも取り込みながら市場は回復傾向です」と今井氏。特に近年のデジタルサイネージ市場では「デジタルマーケティング」や「オムニチャネル(店舗とデジタルの融合)」がトレンドになっている。
容易にサイネージのコンテンツ配信・管理が行える「e-Signage S」
デジタルサイネージを利用するためには、ディスプレーと取り付け金具などの周辺機器はもちろん、コンテンツを表示するためのソフトウエアもあればなお良い。
せっかくサイネージを導入しても、現場の担当者にばかり運用の負荷が掛かっては困る。そこでシャープマーケティングジャパンが提供しているのが、コンテンツ配信表示システム「e-Signage S」だ。ネットワーク、USBメモリーを介して、デジタルサイネージのコンテンツやレイアウト情報などを配信し、表示を簡単にコントロールできるシステム。以前から提供していたe-Signageの操作性、機能を一新したものだ。
「e-Signage Sをご利用いただくことで、日々のサイネージ運用が簡単になります。ディスプレーごと、あるいは枠ごとに作成したフォルダ内のコンテンツファイルを差し替えるだけで効率的に更新作業ができます。登録したスケジュールに従ってディスプレーに配信・表示させるほか、表示状態の監視など一連のサイネージ運用・管理を全般にコントロールできるシステムです」と今井氏。すでに交通機関や商業施設など数多くの導入実績があり、その数はe-Signage、e-Signage Sあわせ「5万~6万クライアント」(今井氏)という。
「e-Signage S」は、ユーザーの設備内に運用サーバーを設置し、ユーザーが運用するオンプレミス版、シャープがコンテンツ編集から配信までを代行するBPOサービス版があるが、シャープのサーバーを使ってユーザーが月額課金により運用することができる「e-Signage S クラウドサービス」が登場し、さらに導入しやすく、使いやすくなった。
モバイルでのコンテンツ配信も可能な「e-Signage S クラウドサービス」
「e-Signage S クラウドサービス」は、「e-Signage S WEBサーバー版」と同等の機能を、月額課金サービスで提供するものだ。
コンテンツ配信のためのシステムをクラウドサービスとして利用することにより、導入する側にはディスプレーと操作用のPC、ネットワークがあれば良いことになる。
「クラウドサービスの良いところは初期コストが抑えられる点です。サーバーのメンテナンスも不要です。それに、ネットワークにつながっていれば遠隔の複数拠点から複数担当者で分担した運用・管理をすることも可能ですし、運用が負担ということであれば、私どもで運用を代行することも可能です。また、天気やニュースなど、外部コンテンツの利用も可能というところが特徴です」と今井氏。
さらに「e-Signage S クラウドサービス」では「モバイル連係機能」を提供しており、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でのコンテンツ配信・管理にも対応している。
これにより現場での手軽なコンテンツ配信が可能になる。例えば、店頭でタイムセール品の写真を撮影して店内のサイネージに表示する、実演販売コーナーの実演の様子を撮影して店内のサイネージに表示する、「焼きたて」「揚げたて」の商品をスマホで撮影してその場でサイネージに配信する、といったこともできる。なお「e-Signage」にはライブカメラとの連携ツールも用意されているので、実演の様子などをライブで表示することも可能だ。
これにより現場の担当者が「これもサイネージに映したいな」と思ったときに、いちいちバックヤードに戻ったりすることなく、その場でモバイル端末を使って配信することもできる。
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