年末恒例の「第13回日刊スポーツ大相撲大賞」は「投げ」。今年の全6場所で幕内に在籍した29人の中、投げによる白星が最も多い「最優秀投手賞」は大関豊昇龍(25=立浪)だった。今年勝った61番のうち、実に19勝が投げによるもの。2位の琴桜(17勝)、3位の湘南乃海(11勝)を上回り、17勝だった昨年に続く2年連続での受賞となった。6手に及んだ投げの種類の豊富さも、昨年(5手)に続き最多で、同じく2位だった琴桜の5手を上回った。
豊昇龍は1年を通じて、最も多くの決まり手で勝った「彩多賞」にも輝いた。これも昨年に続いて2年連続。昨年よりも2種類増えて、21手となった豊富な決まり手は、16手で2位の琴桜に大差をつけた。今年は足技による白星が全体的に少なく、豊昇龍も外掛けによる1勝ながら、それでも霧島、正代と並んで1位。手も出るが足も出る、多彩な技が光った1年だった。
11月の九州場所では手足だけではなく「前に出る」の意識を強く持ち、千秋楽まで優勝を争った。持ち前の運動神経で、とっさの投げや技を繰り出せる一方で「一番嫌だったのが『前に出ない大関』と言われたこと」と、一部ファンらの声を気にしている、内心を明かしたことがあった。基本に立ち返り、同場所は寄り切り、押し出しで白星を重ねた。原点の「前に出る」という直球勝負で強さを見せたことで、一段と“変化球”ともいえる投げや技も決まる。25年の豊昇龍は、一皮むけた姿を見せるかもしれない。【高田文太】