【日時】2024.8.20.(火)18:45〜
【鑑賞館】横浜みなとみらいKinocinema
【邦題】ボレロ 永遠の旋律
【原題】Boléro - Le mystère Ravel (Bande originale du film)
【Introductin---主催者】
パリ・オペラ座で初演されて以来100年近く、時代と国境を越えて愛され続けている名曲「ボレロ」。スネアドラムのリズムに導かれ、わずか2種類の旋律が楽器を替えて繰り返されるという、斬新かつシンプルな構成が聴衆の五感を虜にし、17分間の作品を貫くクレッシェンドが、カタルシスに満ちた壮大なフィナーレへと誘う。この中毒性のあるリフレインは、後世のクラシック音楽にはもちろん、ポップミュージックやジャズにも影響を及ぼし、映画や演劇にもインスピレーションを与えている。
だが、驚くべきことに、この音楽史上において最も成功したベスト&ロングセラー曲は、ラヴェル本人が最も憎んでいた曲だったのだ。いったい、天才作曲家に何があったのか?史実をもとに永遠の傑作の誕生の秘密を解き明かす、音楽映画が完成した。
【物語---主催者】
1928年<狂乱の時代>のパリ。深刻なスランプに苦しむモーリス・ラヴェルは、ダンサーのイダ・ルビンシュタインからバレエの音楽を依頼されるが、一音も書けずにいた。失った閃きを追い求めるかのように、過ぎ去った人生のページをめくる。戦争の痛み、叶わない美しい愛、最愛の母との別れ。引き裂かれた魂に深く潜り、すべてを注ぎ込んで傑作「ボレロ」を作り上げるが──。
監督は『ドライ・クリーニング』でヴェネチア国際映画祭の金オゼッラ賞に輝き、『ココ・アヴァン・シャネル』や『夜明けの祈り』でセザール賞にノミネートされたヒューマン・ドラマの名手アンヌ・フォンテーヌ。監督の熱意で、モンフォール・ラモーリーにあるラヴェルの実家、ル・ベルヴェデールでの撮影が許可された。
ラヴェルを演じるのは、『彼は秘密の女ともだち』のラファエル・ペルソナ。繊細なラヴェルが、唯一無二の才能を振り絞って音楽を生み出す姿を、青い炎のごとく表現した。ラヴェルのミューズであるミシアには、『ベル・エポックでもう一度』でセザール賞主演女優賞にノミネートされたドリヤ・ティリエ。イダには『バルバラ~セーヌの黒いバラ~』でセザール賞主演女優賞を受賞したジャンヌ・バリバール。また、ラヴェルを温かく支え続けるシパに、『ダリダ~あまい囁き~』のヴァンサン・ペレーズが扮している。
ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による「ボレロ」に加え、「亡き王女のためのパヴァーヌ」「道化師の朝の歌」などの名曲をアレクサンドル・タローが披露、ラヴェルの今なお輝く多彩な音楽が観る者を魅了する。さらに、元パリ・オペラ座のエトワール、フランソワ・アリュが、生命力が爆発するような跳躍で踊るエンディングの「ボレロ」も見逃せない。
【製作年】2024年
【製作国】フランス
【配 給】ギャガ
【日本公開日】2024年8月9日
【上映時間】121分
【監督】アンヌ・フォンテーヌ
【製作】フィリップ・カルカソンヌ
ダビド・ゴキエ
ジュリアン・デリス
ジャン=ルイ・リビ
パトリック・キネ
【原作】マルセル・マルナ
【脚本】アンヌ・フォンテーヌ
クレア・バー ピエール・トリビディク
ジャック・フィエスキ ジャン=ピエール・ロンジャ
【撮影】クリストフ・ボーカルヌ
【美術】リトン・デュピール=クレモン
【衣装】アナイス・ロマン
【編集】チボー・ダマド
【音楽】ブリュノ・クーレ
【音楽監修】ギョーム・クレマン
【解説】
フランスの作曲家ラヴェルによる不朽の名曲「ボレロ」の誕生秘話を描いた音楽映画。 1928年、パリ。スランプに苦しむモーリス・ラヴェルは、ダンサーのイダ・ルビンシュタインからバレエの音楽を依頼される。彼は失ったひらめきを追い求めるかのように自身の過去に思いを馳せながら、試行錯誤の日々を経てついに傑作「ボレロ」を完成させる。しかし自身のすべてを注ぎ込んで作り上げたこの曲に、彼の人生は侵食されていく。
「黒いスーツを着た男」のラファエル・ペルソナがラヴェル役で主演を務め、ラヴェルの生涯にわたるミューズとなったミシアを「ベル・エポックでもう一度」のドリア・ティリエ、ダンサーのイダを「バルバラ セーヌの黒いバラ」のジャンヌ・バリバールが演じた。監督は「ココ・アヴァン・シャネル」「夜明けの祈り」のアンヌ・フォンテーヌ。ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による「ボレロ」に加え、ヨーロッパを代表するピアニストの1人であるアレクサンドル・タローがラヴェルの名曲の数々を演奏した。(映画COM)
【キャスト】
◯ラファエル・ペルソナ :ラヴェル
◯ドリア・ティリエ :ミシア
◯ジャンヌ・バリバール :イダ・ルビンシュタイン
◯エマニュエル・ドゥボス:マルグリット・ロン
◯バンサン・ペレーズ :シパ
◯ソフィー・ギルマン :マダム・ルヴロ
◯アンヌ・アルバロ :ラヴェルの母
◯アレクサンドル・タロー:ラロ
◯フランソワ・アリュ :ダンサー
【上映の感想】
約2時間の上映の殆どが、ラヴェルの名曲『ボレロ』の完成に結ばれている太い一本の糸が紡がれる、細い糸に絡まる様々な事象についてでした。特にラヴェルの女性関係には、驚きを禁じ得なかった。これまでの自分の理解では、ラヴェルは結婚せず、女性には殆ど興味がなかったというイメージがあったのですが、認識不足だったかも知れません。そもそもラヴェルの端正な顔立ちからして、女性を引き付けない筈がありません。モナコの切手になる位ですから。
あの『ボレロ』曲の何とも言えない色っぽさと、官能臭芬々のエネルギーは、モーリス・ベジャールバレエ団の、ジョルジュ・ドンの舞踊を挙げるまでもなく、本作品で初演のリハーサルで踊るオペラ座のバレリーナイダ役、ジャンヌ・バリバールの実に異性を虜にするセクシーな踊り、またこれに反発するラヴェルの作曲哲学も見ものでした。 ラヴェルは曲の本筋と真逆だと怒って、席を離れてしまうのです。こうした真面目さが、様々な女性が近寄って来ても、最後の一線はついに超えなかったと、この映画では表現されていましたが、もし本当だったら、ラヴェルはもの凄くストイティックな音楽家ですね。まるで聖人みたい。逆に云えば、それだからこそ魅力ある女性(殆どが既婚者です)が、同時に寄ってきて付き合うことが出来たのでしょう。
この映画の監督はアンヌ・フォンテーヌ、何年も前に彼女の作品『ココ・シャネル』を見たことがありますが、洗練されたカメラワークと、美しい風景、特にフランスの海辺を散歩する場面などは、一幅の絵画かと思う殆でした。
今回の映画を見ても、今後『ボレロ』を聴いた時の印象は、これまでと大きくは変わらないでしょうが、ラヴェルが、あれ程苦労して吐き出した作品だという事は頭から離れないので、若しかしたら違って聞こえるかも知れません。
最後にもう一点印象に残ったのは、ボレロを完成した後、ラヴェルは、ピアノ協奏曲の作曲にいそしむのですが、この映画の中で彼は ❝モーツァルトのピアノ協奏曲17番の様な曲を作っている❞ と語っていたこと。今度そうした観点から、両曲を聴き比べてみようかと思いました。