【日時】2023.1.2.(水・休)15:00~
【会場】東急文化村オーチャードホール
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指揮】出口大地
【出演】朝岡 聡(司会)廣津留すみれ(Vn.)
【曲目】
①J.シュトラウスII:ワルツ「美しく青きドナウ」
②ピアソラ:『ブエノスアイレスの四季』より「冬」(独奏Vn.1/2のみ)
③サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ(独奏Vn.1/2のみ)
ラヴェル:ボレロ ほか
④お客様の投票で演奏曲が決まる「福袋プログラム」
⑤o-cya-do豪華景品が当たる「お年玉抽選会」
【主催者言】
オーチャードホール新春の風物詩、「東京フィルハーモニー交響楽団 ニューイヤーコンサート」が、2023年も新年の門出を華やかに祝います。
会場では、ロビーいっぱいの凧と着物姿のスタッフがお正月気分たっぷりにお客様をお出迎え。獅子舞の演舞で厄払いをすれば、いよいよコンサートの開演です。
コンサートは朝岡聡の軽妙な司会のもと、気鋭の若手指揮者・出口大地のタクトで、ニューイヤーコンサートには欠かせない、本場・ウィーンの香りたっぷりの華やかなワルツやポルカをはじめ、オーケストラの醍醐味の詰まった傑作「ボレロ」など、誰もがどこかで耳にしたことのある名曲の数々をお贈りします。
また、毎年話題のアーティストが出演するゲスト・コーナーには、ヴァイオリン:廣津留すみれ(1/2)、ピアノ:亀井聖矢(1/3)がそれぞれ登場。フレッシュな演奏を披露します。
また、30曲もの候補曲の中からお客様の投票で演奏曲が決定する<福袋プログラム>や、舞台上で「ラデツキー行進曲」を指揮する権利など、豪華景品が当たる<お年玉抽選会>もお楽しみに。
【演奏の模様】
今日は正月なので、会場入り口ではいつものプログラムの他に、小さい酒桝が配布されました。休憩中に販売される日本酒をこれで飲む趣向かな?枡の中には小さなボールペン状のチューブが一本入っています。また様々な商品他が当たる抽選もある模様。舞台では開演前に正月らしい獅子舞いが、二人の演者によってなされていました。開演に近づくにつれ座席は続々埋って来て、ほぼ満員状態になりました。
紋付き袴で登場した指揮者の出口さん、(後で朝岡さんの紹介説明で、最初法律を学んだという事が判明)、若手で注目の指揮者です。楽団員も女性は赤や白、黄色の華やかなドレス姿の奏者も多かった様です。演奏前から華やかな雰囲気が舞台に漂っています。
楽器構成は、最初二管編成弦楽五部12型(12-10-10-8-6)でスタート、①「美しく青きドナウ」です。スタートからハイレヴェルのアンサンブルが迸り出ていましたが、やや透明感が少なかったかな?
演奏が終わり司会者の朝岡さんが登場、先ず進行中の「箱根駅伝」の往路優勝校などの結果を話して場をくつろがせる手腕はさすがです。
次の演奏は、②投票リクエスト曲の「パッフェルベルのカノン」でした。楽器構成は管、打が退場、弦のVn.とVc.とCb.及びHp.のみで演奏。弦楽のカノンの単純単位を組み合わせて織りなすジグゾーパズルの如き旋律構成を良く鳴らしていた出口東フィルはさすがこなれた響きを繰り出していました。
続いて今日の目玉演奏家、ヴァイオリニストの廣津留すみれさん登場。Profileは有名なので紹介するまでもないですが、非常に異色で非常に優れた実力と実績を有する音楽家です。多岐にわたる才能はさて置いて、音楽家であるならば、矢張り音楽、演奏で勝負でしょう。初めて聞くヴァイオリニストですが、注目して聴いていました。
最初の演奏曲は③ピアソラ『ブエノスアイレスの四季』より《冬》
ここ数年ピアソラの曲は良く演奏されるようになりました。バンドネオン演奏者として活動する間に作曲も手掛け、新たなタンゴの世界を築き、クラシック音楽の枠組みも広げた功績は生誕100年を機に再評価されているのです。
廣津留さんの演奏は、反音階的旋律変化の箇所も器用にこなし、続くハーモニック音はやや小さかったが、速いパッセッジもハイテクニックで難なく通過、高音の重音演奏も、重音で旋律と伴奏的音階を演奏や、人差し指でpizzicato でをはじきすぐに旋律とpizzicatoと旋律重音に目まぐるしく変化する箇所もハイ・テクニックで見事に弾き切りました。まだ20代だと思いますが、末恐ろしい程の鬼才の大和撫子(じゃなくて菫ですか)が生まれたものです。ほぼ注文の付け様がない演奏でしたが、欲を言えばタンゴを念頭に置いたピアソラの曲が曲だけに、もっと情熱的な側面があってもいい様な気がしました。
続いてもう一曲、廣津留さんの演奏、④サンサーンス『序奏とロンド・カプリッチオーソ』です。
この曲は三年前くらいでしたか、サントリーホールで小澤さんの最後とも言える指揮で、ムターが弾いた時のことを良く覚えています。その素晴らしい音が頭から離れません(勿論それは、ライヴ録音されGramophoneからCD化されたのでそれも時々聴いています)
今日廣津留さんがどの様に弾くかは大きな注目でした。結論を一言で言えば、可憐な澄み切った音楽の風に軽やかに揺れる菫の花の感がする演奏、対するムターさんは、底深い感情のマグマからほとばしる熱き熟年の円熟演奏とした印象でした。今後三年、五年、十年後にどの様に成長していくのか大注目の若手ヴァイオリニストでしょう。
<ここで一旦休憩>
後半最初は、リクエスト曲の⑤エルガー『威風堂々』。出口東フィルの演奏は、それ程個性的ではない通常の、いつも聴く「威風堂々」だったと思います。演奏前に小さくなっていた楽器群が補充され(元に戻り)、特に管楽器が補充された模様。Tub.(1)Trmp.(2)
Trmb.(3)
(2)⑥この曲は、前もって予備抽選がネットで行われたらしく、30候補曲~選ばれた三曲(Ⅰ.スメタナ『モルダウ』Ⅱ.ボロディン『ダッタン人の踊り』)Ⅲ.ウイリアムズ『スター・ウォーズ』より《メイン・タイトル》
この三つから一つを選ぶ方法として、酒桝に入っていたチューブを使います。中ほどを曲げると(恐らく中に入っている二種類の液体が混じりは発光する)緑色に輝くので、Ⅰ.~Ⅲ.の曲名を上げた時、賛成の人は、そのチューブを高く翳して欲しいとのアナウンスを朝岡さんが説明していました。
結果は、⑤として、Ⅲ.の曲でした。(自分としてはⅠ.にしたのですが。)
かなりの強奏が続きました。喧騒の中にいる自分が、音圧にねじ伏せられてしまった感じを受けました。
⑥は抽選で、ラディツキー行進曲の指揮権が当たるという趣向です。
当選者は中年の女性で音楽もやっていて、オルガンを演奏していると言います。指揮台に上がる前に出口さんの指導。コツを教えられました。テンポは正確に取れていたし、立派な素人指揮でした。
会場からの拍手演奏はやや散漫になっていましたが。俄か指揮者は出口さんのサイン入り指揮棒をプレゼントとして貰いました。
最後の曲は、⑦ラヴェル『ボレロ』です。
この曲は随分人気があるのですね。次々と楽器を替えて強まる演舞の輪に何時しか採リ入れられてしまい、次第に踊るスピ-ドも速まり、最後は陶酔の域に達して、踊り狂うのでしょう。丁度、「おどろにゃ損そん」と歌い人を虜にする阿波踊りの様でした。迫力満点。
今日のコンサートは朝岡さん一流の笑わせもあり、軽妙な話術の司会者としては貴重な存在です。
又様々な催し・趣向が凝らされ、新春コンサートとしては大変楽しい時を過ごせました。
さて夜も大分更けて来たので、誤字脱字は後ほど正します。