前中長期経営計画「MLMAP2023」の最終年度でもある2023年12月期の実績は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のすべてにおいて、過去最高を更新することができました。また、2023年12月には株価が10,000円を超え、翌年1月には時価総額が5,000億円を突破しました。お客様のニーズに寄り添い、HORIBAだからこそ叶えられる「ほんまもん」のソリューションを見出すことができた結果であると、オーナー(株主)の皆様のご理解とご支援に感謝申しあげます。
新型コロナウイルス感染症の拡大期間においては、お客様の投資凍結による需要減に加え、脱炭素への動きも加速しました。事業環境の大きな変化に見舞われましたが、行動制限があるなかでも現地・現場で様々な判断を行うことを重視しました。そのなかで、欧州で活況となっていた水素エネルギー関連ビジネスの動向をいち早くつかみ、2022年にはドイツのホリバ・フューエルコン社の拡張を行いました。事業としては成長途上ではありますが、将来を見越した非常に重要な投資であったと感じています。
世界的な部材の調達難においても、生産部隊と調達部隊を含むグローバルなネットワークの貢献による生産の継続を実現したことで、供給力が勝負になることが明白となりました。2026年に稼働を予定する京都府福知山市の新たな生産工場への投資はHORIBAグループ過去最大規模の投資となります。この工場によって、長期的な安定供給体制を確立します。新しい製品を生み出すHORIBAの技術力に、強い供給力を兼ね備えることで、圧倒的な競争優位性を発揮していきます。
2024年2月に、2028年を目標年度とする新たな中長期経営計画「MLMAP2028」を策定しました。売上高4,500億円、営業利益800億円、ROE12%以上の達成をめざす、意欲的な計画といえます。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは沈静化に向かっているものの、地政学的リスクの高まりは過去に例がなく、そのなかで社会はサステナビリティに舵を切っています。このような状況においてもホリバリアンの士気や事業環境を好機ととらえ、HORIBAは今こそ「勝ちにいくタイミング」であると考えています。この機を逃さないよう、MLMAP2028を通じて、売上高5,000億円という次の大きなステージへグループ全体で挑戦します。MLMAP2028実現のための指針の一つが、3つの注力分野(エネルギー・環境、バイオ・ヘルスケア、先端材料・半導体)における社会課題解決をめざす事業戦略です。
2004年に「HORIBA Group is One Company.」を宣言し、グローバルに拡大した事業を一つにまとめ、総合力の発揮を狙いました。また、同時にセグント制を宣言し、対象とする産業に対して保有する技術から様々なソリューション提案を実行しました。セグメント制は、当時の社会や産業の変化に非常に適合しており、5つの事業によってHORIBAは大きく成長しました。MLMAP2023の期間においても、事業セグメントの枠を超えた「クロスセグメント」を意識し、事業領域を超えたシナジーを生み出す取り組みをしてきましたが、今後はさらにそれを加速させていきます。
これまでのHORIBAのビジネスや提供する製品は、最先端の研究目的が多くを占め、各分野でのイノベーションの創出に貢献してきました。一方で、半導体市場で大きなシェアを誇り、MLMAP2023の成功の立役者といえる「マスフローコントローラー」は、半導体の製造プロセスに貢献し、大きなビジネスボリュームを生むことに成功しました。ハイエンドで新たな技術を生み出すことへの貢献に加え、人々の生活の質向上に直接貢献する分野での成長がHORIBAの新たなストーリーといえます。これまでの地道な投資が実を結ぶことで、これから新しいビジネスが次々と生まれてくる可能性をHORIBAは大いに秘めていると確信しています。そして、MLMAP2028においては、事業面の目標達成の大前提として、これらの戦略を実践していく多様な人財「ホリバリアン」が、これまで以上にそれぞれの個性、強み、能力をグローバルで発揮できる舞台の創造を掲げました。世界中のホリバリアンの英知を集め、それぞれの現場で「ほんまもん」を追求し、そのおもいを共有するなかから、世界中のホリバリアンが活躍する新たなステージを造り上げます。
加えて、サステナビリティ戦略を掲げ、ソーシャル・インパクトを生み出す独自の活動を推進します。サステナビリティへの貢献は、HORIBAの創業以来、各製品やサービスを通じて実現してまいりましたが、MLMAP2028においては改めてその意義を共有し、宣言することが重要であると考えています。HORIBAが提供するソリューションを活用してお客様のエネルギー有効活用に資するサービスを提供するなど、様々な事業や活動を通じて社会にインパクトを与え、同時にHORIBAの成長もめざします。
2023年、HORIBAは創立70周年を迎えました。創立記念日の1月26日に、HORIBAの30年先、つまり創立100周年を見据えた「Our Future」を制定しました。Our FutureにはHORIBAのVision,Mission, Values(ビジョン、ミッション、バリュー)が示されています。この不透明な時代において未来を、まして30年先を予想することは不可能であり、自ら未来を創るおもいこそがキーとなります。Our Futureの制定には多くの海外グループ会社のメンバーが協力し、ホリバリアンの力でここまで辿り着くことができたその事実を誇りに感じています。制定にあたっては、これまでとの「つながり」が重要である、ということを、次世代のリーダーや強いおもいを持ったホリバリアン有志に伝えました。過去の歴史や財産を入れ替えるのではなく、それらを新しい考え方や時代の要請にマッチングさせていくことを大切にして欲しい、という私のおもいです。このOur Futureの根本にある思想は、やはり「おもしろおかしく」であり、ビジョンには「おもしろおかしくをあらゆる生命へ」を新たに掲げ、より社会との結びつきが明確なメッセージとなりました。その判断基準となるのが「ほんまもん」です。製品はもちろん、技術も「ほんまもん」であるかどうかを見極めることが重要であり、その選球眼をホリバリアンに磨いて欲しいと願っています。HORIBAがHORIBAである限り、「おもしろおかしく」、そして「ほんまもんの追求」というコーポレートカルチャーは今後も決して変わることのないHORIBAのスピリットであり続けます。
70周年という節目を超え、HORIBAはまた新たな一歩を踏み出しました。掲げた目標は非常に高いものですが、MLMAP2028のスローガンである「MAXIMIZE VALUE」つまり、「HORIBAグループのあらゆるVALUE(価値)を最大限に発揮する」ことで、その高い目標も手の届くところに近づきます。MLMAP2028の最終年度にはどれほどの飛躍を実現しているか。私は今から楽しみでなりません。ステークホルダーの皆様にもぜひご期待いただきたいと思います。2024年も変わらぬご理解とご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます。
※ホリバリアン : HORIBAで働くすべての人を同じファミリーであると考え、ホリバリアンという愛称で呼んでいます
2024年4月
代表取締役会長 兼 グループCEO 堀場 厚