古今東西フェミニズム批判は数多くあるのだが、2019年ぐらいから𝕏/Twitterやまとめサイトや動画配信で「フェミニスト」を標的にした非難が目立つようになった。
2018年10月の著名フェミニストのVTuberキズナアイ批判と、それへの強い反論が転換点となったと思われる。女性表現物をめぐる議論の延長にある「フェミニスト」批判だ。
フェミニストに鍵括弧をつけているのは、彼らがフェミニストとは思われない人物、自分はフェミニストではないと主張している人物も含めて、フェミニストとして非難しているためだ。
ここ5年間ぐらい目立つようになったアンチ・フェミニストを娯楽型と扇動型に分類しよう。従来からの女性優遇策に対する反発*1や、女性蔑視に基づくアンチ*2も依然としているが*3、それらとは別の現代的な集団なので名前が要る。
それぞれの特徴は、私が観察する限り、以下となる。
- 娯楽型アンフェ
- 「フェミニスト」の思慮にかける主張への非難・嘲笑を、娯楽とする界隈で、SNSでの「フェミニスト」の発言とその反応をまとめたブログが典型となる。収益を目的とした冷笑系。不謹慎ではあるが、SNSでの議論の記録装置として機能している面もある。
- 影響力は大きいが、商業化できる少数の集団。
- 扇動型アンフェ
- フェミニストを強く批判するように見せかけて、「フェミニスト」への憎悪を煽っている界隈。虚偽、誇張、憶測に基づく非難により、「フェミニスト」の言動をより極端で非常識なものに見せたり、「フェミニスト」の持つ社会的影響力をより強く見せようとするのが特徴になる。
- フェミニズム自体には関心はないので、フェミニスト間での意見の不一致などは考慮せず、より非難を受けそうな「フェミニスト」の意見をフェミニストの代表的意見として吹聴する。リベラル・フェミニズムとラディカル・フェミニズムの相違は理解できない。
- 最終的には、統率されたフェミニスト集団が大きな権力を持ち、オタクもしくは弱者男性を迫害していると言うストーリーに沿った主張を、詭弁と強弁で繰り返すようになる*4。自覚的かは定かではない。
- 扇動型アンフェの著名人物の何名かは、個人や法人に対しても虚偽、誇張、憶測に基づく非難を繰り返すことで、名誉毀損で訴えられることになり、敗訴している。敗訴した人物の発言を観察していると、その後も同様の論法を繰り返している。
なお、クリエイターやオタクの人々は、創作活動の自由の維持が主な興味関心で、それに加えて作品に難癖をつける「フェミニスト」を嫌っているだけで、表現物に関係のないジェンダー問題の議論への関心は薄く、これらのアンフェとは距離のある集団となる。
昔のフェミニズム批判も娯楽や扇動の面もあったと思うが、オールドメディアはフェミニズム批判だけでは間が持たず、継続に続けられることは無かった。ゆえに、娯楽型と扇動型が、SNS時代での特色になる。1990年代のフェミニズム批判と、2020年代の「フェミニスト」批判も大して変わらない言葉で綴られているような受け止め方をしているジェンダー学者を見かけたのだが、異なる部分が多々ある。
*1教員の女性率を引き上げるために、非常勤講師の雇い止めにあったと言う体験談を語る大学教員などがいる。
*2男性よりも女性の方が恵まれているという主張も、一面的で強い根拠はないので、女性蔑視の部類に入れて良いかも知れない。
*3フェミニストの過激言説や無責任な発言、ジェンダー学者の学術的に稚拙な議論などを発端としてフェミニスト非難がおきることもよくあるが、それら自体はアンチとは言えない。ジェンダー学者の皆様は、フェミニスト個人の言説への批判を、女性全体への差別だと摩り替えて認識して、批判を不当なものだとし勝ちなのが残念だ。なお、具体的にはソラナス「男性皆殺し協会マニフェスト」や、男性もしくは弱者男性は絶滅しろ的な発言、草津町のフラワーデモあたりが非難されている。
*4家父長制によって男性が大きな権力を持ち、女性を迫害していると言うストーリーに沿って、社会現象すべてを説明しようとするアカデミックなフェミニズムとの類似している。
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