女子高生の間で美容整形への関心が高まっていることに、ルッキズムだという批判が𝕏/Twitterでされていたのだが、言葉の選択が誤っているので指摘したい。
ルッキズムはデブは仕事ができないと言うような偏見から、採用や昇進など容姿が重要ではない場面で容姿を重視することを言う。これはこれでハマーメッシュ『美貌格差』のように興味深い議論があるのだが、美容整形への関心の高まりを表す適切な言葉はセクシー化(sexualization)もしくは性的自己モノ化。
セクシー化は、女は容姿と愛嬌と言う価値観に沿った女性表現や振る舞いのことを指す。セクシーと言うと肌の露出が過剰な肉感的な美女を想像しそうだが、学童向けの衣類のセールススローガン"Make those heads turn in H&M’s Back to School fashion."(拙訳:H&Mの新学期ファッションでみんなを振り向かせろ)もセクシー化だと非難されていた*1。興味関心が化粧や美容整形に向かい、それに費やす時間が増える社会風潮はまさにセクシー化。アメリカ心理学会のレポート*2の中でも、セクシー化の影響として美容整形が言及されている。自己の身体を交換可能なモノとして扱うわけで、性的自己モノ化とも言える。
フェミニズムとの関係
フェミニストは美容整形をどう考えているのかと言う疑問を投げかけている人がいたのだが、一人一派だけに統一見解はない。
ラディカル・フェミニストはミスコンに反対してきており、化粧についてもナオミ・ウルフ『美の陰謀: 女たちの見えない敵』のように否定的な意見もある。マルクス主義フェミニズムは、化粧や美容整形を、女性から搾取するための資本主義の機構と糾弾している。
一方、第3波フェミニズムでは、女性の自律的な選択はエンパワーメントにつながる、つまり化粧や美容整形については女性の地位向上に有用な面もある*3と言うのが一般的な見解だとか。第3波以前でも、初の女性整形外科医Suzanne Noëlはフェミニストとして知られている。だが、欧州優越主義(Eurocentrism)のような、よくない社会風潮に毒されてするのであれば、やはり良くないと考えるようだ*4。少女をセクシー化する社会風潮に影響されての美容整形への関心は、おそらく肯定されない。
結局、女性が美容整形を求めてる理由次第でフェミニストの見解は変わることになる。
*1関連記事:H&Mの広告が炎上したのは、女の子をおめかしして可愛くみせようとする社会慣習を肯定していたから
*2Report of the APA Task Force on the Sexualization of Girls
*3どういう理路でつながるのかは明確では無いのだが、化粧で美醜が分からなくなる女性の方が、ルッキズムの被害にあいづらいという話を見かけた記憶がある。
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