2024年12月19日木曜日

オタクは差別可能だよ、オタクだと判別できれば — アンフェのオタク差別批判は、実証的に批判しよう

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批評家の藤田直哉氏の「「オタク」は属性ではないので、定義上、「オタク差別はない」という結論にならざるをえない」と言う主張*1が話題になっている。オタクも属性ではないかと批判されているが、属性をどう定義するかに関係なく、おかしな論考だ。

差別は取り扱いの差異のことを意味するので、オタクをオタクと判別できる限りは差別は可能。オタクだと言う理由で何かの場から排除されれば、それは差別だ。属性をどう定義するかは関係ない。思想や信仰も究極的には捨てられるが、思想や信仰で取り扱いに差異をつければ、それは差別になる。

ただし、原理的にオタク差別は不可能とは言えないが、どれほどあるのか、それが不当なものかは別の議論になる。オタクに対するネガティブなイメージは昨今それほどもない。ぜこんな論考をしだしたのかと思いきや、藤田直哉氏は

フェミニズムによる批判に反発する「オタク」が、「オタク差別」について言挙し、その苦痛を訴えかけたときに、反差別の人々が「オタク差別は存在しない」と言い、感情的な反発を受けることがある。これも、「オタク」は属性ではないので、定義上、「オタク差別はない」という結論にならざるをえない。

と言っているので、どうも6年前(から)のアンフェの青識亜論氏らとC.A.R.C(レイシストをしばき隊)の野間易通氏の議論*2に対して、新提案をしたいようだ。藤田氏は、

しかし、一方で、「オタク差別」だとしか言いようがない、そうとしか捉えられない経験や傷つきが、そこで感情的に燃え上っている当事者たちにあるだろうことも確かであろう。これは、属性による「差別」ではなく、流動的であるがゆえに対応が困難な「覇権/従属」で考えた方が、クリアに問題が切り出せるのではないか。

と続け、オタクの被差別感は男性社会での敗北が理由だと主張している。藤田直哉氏の論考は、二重の意味でよくない。「「オタク差別」について言挙し、その苦痛を訴えかけた」ことの意味を議論するのであれば、まずは具体的な差別される行為の実態を検討すべきだ。

オタクは差別されてきたと言う人が示す根拠は、1980年代から1990年代の同人誌の製作を異常とし、アニメ趣味と児童性虐待を結びつける報道だ*3。体験談を語る人は乏しい*4。同級生にアニメ雑誌を取り上げられて破かれたという文筆家の体験談を紹介されたことはあるのだが、オタクだからか、気弱そうだからかは分からなかった。入試や採用や昇進で差別されたと言う話も聞かない。面接でserial experiment lainの岩倉玲音の絵を踏むように言われたという事件は、寡聞にして知らない。夫のコレクションを全て無断で捨ててしまうドメスティック・バイオレンスのような行為もあるが、オタク趣味への差別なのか、夫が趣味に勤しみ家庭に奉仕しないことが問題なのか判別ができない。また、2015年ぐらいには、オタクは一般にはポジティブな印象を与える言葉になっている*5

アンフェがオタク差別を口にするとき、既に小さいものとなったオタク蔑視を糾弾しているわけだ。差別解消を目的としているわけではない。どちらかと言うと、表現規制派が多いフェミニストへの憎悪を掻き立てるためのスローガンのひとつと看做すべきだ。アンフェの青識亜論氏はフェミニストを虚偽に近い誇張で非難していたが、批判対象の罪と影響力を大きく見せようとするのは、批判対象への憎悪を煽る主張だ。オタクの皆さん、フェミニストに迫害されていますよと言う呼びかけになっている。藤田直哉氏の議論の本題の弱者男性論も、アンフェが俎上に載せるときは、フェミニズムに対するWhataboutismに過ぎない。男性はフェミニストの言うように競争から降りてはいけないとも主張しているからだ。

もっともオタクの皆さんは、クレジットカード会社のエロコンテンツの締め出しや、画像生成AIの是非の方に関心が高く、もうあまりフェミニストに関心が無いようだ。オタクにとってはコンテンツの作成と消費ができるか否かが問題なのであって、フェミニストの非難自体は耳障りなノイズでしかない。年齢制限によるゾーニング程度であれば受け入れられない施策と言うわけでもない。フェミニストがコンテンツを批判すれば、反発もするであろうが、何年も前のフェミニストの主張にこだわっているのはオタクというよりもアンフェだ。アンフェとオタクには溝がある。

1 コメント:

Lamron さんのコメント...

オタクが今では「体制側」になってるにも関わらず「オタクは差別されている」と弱者の地位を「守ろう」としている事を以下の記事で書いてます -> 「オタクはもはや帝国側」であることはオタク自身が認めている|Lamron🖇
note.com/lamrongol/n/ne3e827c80c62

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