2006年 04月 04日
Super League Funds |
欧米でのプライベートエクイティ投資は引続き活況が続いており、投資銀行のハイイールド部門や投資銀行部門も少なからずその恩恵を預かっています。
今日も新たに巨額のファンドレイジングのニュースがFTに出ていました。その記事によると、大手LBOファンドのTexas Pacific Groupが、$14 billion(約1.7兆円)の資金を新たに調達することになったそうです。これは単独のファンドとしては世界最大だそうです。
アジアではNewbridge Capitalの名前で知られるTPGは、当初$10~$12 billion規模のファンドレイジングを予定していたそうなのですが、人気の高まりからサイズの拡大を決めたとその記事では報じていました。TPGはPEのほかにもベンチャーキャピタルや株、債券の運用も行っており、運用総資産額は$20 billion(約2.4兆円)と言われています。
その他の最近の目立ったファンドレイジングの中には、米系ではBlackstoneの$13.5 billion、Apolloの$10 billion、KKRの$10 billion(欧州もあわせると$15 billion)、欧州ではPermiraの€9.8bnと言うのもありました。こんな感じでいわゆる「スーパーリーグファンド」には巨額の資金が流れ込み、それが最近のLBOの巨大化につながっています。
規模が大きくなると資産の運用が難しくなるヘッジファンドと違って、プライベートエクイティでは案件規模を大きくすることでかなりの額の運用が可能なため、資金の受け手としては最適と言うことになるのかもしれません。以前はLBOは何となく「M&Aマーケットを“利用”して行う投資」と言うイメージがあり、レバレッジドファイナンスのうかがい知れないリスクから、規模も数百億円と比較的小さなものが多かったのですが、今では金額のキャップはすっかりなくなって、完全にM&A市場の主流になっています。
日本でも報道されていると思いますが、最近の例では、経営難に陥っているGM(ジェネラルモータース)が金融子会社のGMACのまず住宅ローン部門をKKRに、そして本体の過半数をCerberusに売却すると言うニュースがありました。GMAC51%の買収額は実に$14 billion(1.7兆円)に上るそうです。この案件にはCitigroupも参加しているようで、以前にも書いた通り、エクイティ投資を行うと共に関連のデットビジネスとして$25 billion(3兆円)のシンジケートローンもGMACに対して提供するそうです。(Cerberus傘下のあおぞら銀行も1,200億円程度を拠出すると噂されています。)
欧米のプライベートエクイティ業界は、完全に大手とその他に二分しています。大手と言うのは、KKR、Blackstone、TPG、Apollo、Carlyle、Goldman、MDP、Apax、Permiraなどの20社程度で、その他には無数の中小規模のファンドが存在し、マーケットの深みを物語っています。
これは投資銀行業界も同様で、大手10社とそれ以外で、資金力なノウハウなどで大きな差ができつつあります。(ちなみに大手10社とはGoldman、Morgan Stanley、Lehman、Merrill、Bear Stearns、Citigroup、JP Morgan、Credit Suisse、UBS、Deutsche、Bankで、人によってはBearの代わりにBank of Americaと言う人もいます。)もちろんブティックと呼ばれる小さい会社で数人の個人のリレーションシップに頼って成功している会社もないことはないですが、LBOはファイナンシングの案件なため、M&Aのアドバイザリー以外であまり顔を出すことはないようです。
プライベートエクイティは当然「ファンド」なわけですから、その裏にはお金を出している投資家がいます。具体的には、銀行や生命保険といった金融機関、民間及び公的の年金ファンド、大学の資金運用ファンド、個人の富裕層などです。アメリカにはビリオネア、つまり純資産額が1,200億円を超えている人が世界でも突出して多いとForbesに載っていました。また業界の人と話していると、投資信託の運用会社などもかなり巨額の資金を拠出しているようです。
こういったいわゆる専門家の投資家は、年利にして20%超と言う高いリターンが見込まれるこうした投資に非常に積極的で、彼らの払う高いフィーが更に優秀な運用担当者を業界にひきつける要因にもなっています。(良くも悪くも「金あるところに才能あり」と言う感じです。)
またFTの記事によると、最近では中東からの資金も相当プライベートエクイティに流入しているようです。これなどはまさに最近の石油高に支えられている面も大きいと思われますが、Michael Mooreがブッシュ大統領を風刺した映画「華氏911」で、Carlyleとそのアドバイザーであるアメリカの大物政治家の中東コネクションが名指しで批判されていたのが思い出されます。もちろん各ファンドとも一般に投資家の情報は開示していませんが、例えば日本企業でも銀行などでオルタナティブ投資を担当している人などは、大体どういったところがお金を出しているかは知っていると思います。
ともかく世界にはお金のあるところにはお金があり、2005年だけで実に$250 billion(約30兆円)もの資金がプライベートエクイティ市場に流入したと言われています。これは当然史上最大なのですが、人によっては2006年はさらに額が増えるだろうと予想する人もいます。そして活況なM&Aとハイイールドのマーケットを背景に、引続き投資を進めて行くものと思われます。
ただ、以前から繰り返し書いていますが、完全無欠に見えるプライベートエクイティの弱点は、何と言ってもエグジットが景気に左右されることだと思います。案件規模が小さければまだしも、例えば数千億円規模のIPOやM&Aによる事業売却となると、景気によっては投資家が全く見つけられなくなる可能性があります。実際にIPOやM&A案件を担当していると、投資家の「食欲」の移り変わりを実感します。2002年や2003年のことは思い出したくないと言うのが正直なところです。
プライベートエクイティ業界の人に言わせると、そういう事を想定してPEのセカンダリーに投資するようなファンドも増えているから大丈夫だ、とのことですが、結局いつかはエグジットが必要なわけで、投資銀行が「景気が悪くなっても金が必要な人はいる」と言っているのと同じような感じがします。最近の投資銀行の好業績を支えている最大の要因の一つは間違いなくLBOの活況さであり、Goldmanや銀行系のように自らエクイティやデットの投資と言う形でバランスシートリスクを取っているところは、景気低迷で大きな打撃を受ける可能性があると思います。
とは言えアメリカのLBOファンドは本当に関心してしまうような人材と頭脳の宝庫で、ウォールストリート、実業界、ワシントンなどから「専門家の中の専門家」を集めています。そんなこともあってウォールストリートの若手からも羨望のまなざして見られているそんなLBOファンドですが、次の景気の波をどう乗り切るのか、非常に興味深いところです。
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今日も新たに巨額のファンドレイジングのニュースがFTに出ていました。その記事によると、大手LBOファンドのTexas Pacific Groupが、$14 billion(約1.7兆円)の資金を新たに調達することになったそうです。これは単独のファンドとしては世界最大だそうです。
アジアではNewbridge Capitalの名前で知られるTPGは、当初$10~$12 billion規模のファンドレイジングを予定していたそうなのですが、人気の高まりからサイズの拡大を決めたとその記事では報じていました。TPGはPEのほかにもベンチャーキャピタルや株、債券の運用も行っており、運用総資産額は$20 billion(約2.4兆円)と言われています。
その他の最近の目立ったファンドレイジングの中には、米系ではBlackstoneの$13.5 billion、Apolloの$10 billion、KKRの$10 billion(欧州もあわせると$15 billion)、欧州ではPermiraの€9.8bnと言うのもありました。こんな感じでいわゆる「スーパーリーグファンド」には巨額の資金が流れ込み、それが最近のLBOの巨大化につながっています。
規模が大きくなると資産の運用が難しくなるヘッジファンドと違って、プライベートエクイティでは案件規模を大きくすることでかなりの額の運用が可能なため、資金の受け手としては最適と言うことになるのかもしれません。以前はLBOは何となく「M&Aマーケットを“利用”して行う投資」と言うイメージがあり、レバレッジドファイナンスのうかがい知れないリスクから、規模も数百億円と比較的小さなものが多かったのですが、今では金額のキャップはすっかりなくなって、完全にM&A市場の主流になっています。
日本でも報道されていると思いますが、最近の例では、経営難に陥っているGM(ジェネラルモータース)が金融子会社のGMACのまず住宅ローン部門をKKRに、そして本体の過半数をCerberusに売却すると言うニュースがありました。GMAC51%の買収額は実に$14 billion(1.7兆円)に上るそうです。この案件にはCitigroupも参加しているようで、以前にも書いた通り、エクイティ投資を行うと共に関連のデットビジネスとして$25 billion(3兆円)のシンジケートローンもGMACに対して提供するそうです。(Cerberus傘下のあおぞら銀行も1,200億円程度を拠出すると噂されています。)
欧米のプライベートエクイティ業界は、完全に大手とその他に二分しています。大手と言うのは、KKR、Blackstone、TPG、Apollo、Carlyle、Goldman、MDP、Apax、Permiraなどの20社程度で、その他には無数の中小規模のファンドが存在し、マーケットの深みを物語っています。
これは投資銀行業界も同様で、大手10社とそれ以外で、資金力なノウハウなどで大きな差ができつつあります。(ちなみに大手10社とはGoldman、Morgan Stanley、Lehman、Merrill、Bear Stearns、Citigroup、JP Morgan、Credit Suisse、UBS、Deutsche、Bankで、人によってはBearの代わりにBank of Americaと言う人もいます。)もちろんブティックと呼ばれる小さい会社で数人の個人のリレーションシップに頼って成功している会社もないことはないですが、LBOはファイナンシングの案件なため、M&Aのアドバイザリー以外であまり顔を出すことはないようです。
プライベートエクイティは当然「ファンド」なわけですから、その裏にはお金を出している投資家がいます。具体的には、銀行や生命保険といった金融機関、民間及び公的の年金ファンド、大学の資金運用ファンド、個人の富裕層などです。アメリカにはビリオネア、つまり純資産額が1,200億円を超えている人が世界でも突出して多いとForbesに載っていました。また業界の人と話していると、投資信託の運用会社などもかなり巨額の資金を拠出しているようです。
こういったいわゆる専門家の投資家は、年利にして20%超と言う高いリターンが見込まれるこうした投資に非常に積極的で、彼らの払う高いフィーが更に優秀な運用担当者を業界にひきつける要因にもなっています。(良くも悪くも「金あるところに才能あり」と言う感じです。)
またFTの記事によると、最近では中東からの資金も相当プライベートエクイティに流入しているようです。これなどはまさに最近の石油高に支えられている面も大きいと思われますが、Michael Mooreがブッシュ大統領を風刺した映画「華氏911」で、Carlyleとそのアドバイザーであるアメリカの大物政治家の中東コネクションが名指しで批判されていたのが思い出されます。もちろん各ファンドとも一般に投資家の情報は開示していませんが、例えば日本企業でも銀行などでオルタナティブ投資を担当している人などは、大体どういったところがお金を出しているかは知っていると思います。
ともかく世界にはお金のあるところにはお金があり、2005年だけで実に$250 billion(約30兆円)もの資金がプライベートエクイティ市場に流入したと言われています。これは当然史上最大なのですが、人によっては2006年はさらに額が増えるだろうと予想する人もいます。そして活況なM&Aとハイイールドのマーケットを背景に、引続き投資を進めて行くものと思われます。
ただ、以前から繰り返し書いていますが、完全無欠に見えるプライベートエクイティの弱点は、何と言ってもエグジットが景気に左右されることだと思います。案件規模が小さければまだしも、例えば数千億円規模のIPOやM&Aによる事業売却となると、景気によっては投資家が全く見つけられなくなる可能性があります。実際にIPOやM&A案件を担当していると、投資家の「食欲」の移り変わりを実感します。2002年や2003年のことは思い出したくないと言うのが正直なところです。
プライベートエクイティ業界の人に言わせると、そういう事を想定してPEのセカンダリーに投資するようなファンドも増えているから大丈夫だ、とのことですが、結局いつかはエグジットが必要なわけで、投資銀行が「景気が悪くなっても金が必要な人はいる」と言っているのと同じような感じがします。最近の投資銀行の好業績を支えている最大の要因の一つは間違いなくLBOの活況さであり、Goldmanや銀行系のように自らエクイティやデットの投資と言う形でバランスシートリスクを取っているところは、景気低迷で大きな打撃を受ける可能性があると思います。
とは言えアメリカのLBOファンドは本当に関心してしまうような人材と頭脳の宝庫で、ウォールストリート、実業界、ワシントンなどから「専門家の中の専門家」を集めています。そんなこともあってウォールストリートの若手からも羨望のまなざして見られているそんなLBOファンドですが、次の景気の波をどう乗り切るのか、非常に興味深いところです。
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by harry_g
| 2006-04-04 08:51
| LBO・プライベートエクイティ