水の月刊ニュース 2020年1月号
- 2019/12/30
- 12:51
水の月刊ニュース NEWs On Water1月号は、2019年11~12月の2ヶ月間に起きたニュースをまとめたものです。(ニュースは新聞記事やテレビ報道を要約していますが、記事の趣旨を損なわないようにしています)
堤防決壊の8割 支流と本流の合流点に集中 台風19号
台風19号の大雨で堤防が決壊した140カ所(71河川)のうち、8割にあたる112カ所(62河川)が、支流と本流の合流点から約1キロの範囲だったことが、朝日新聞のまとめでわかった。
専門家は「合流点近くに住む人は、浸水が起きやすいことを自覚しておくべきだ」と指摘している。
河川氾濫(はんらん)のメカニズムに詳しい早稲田大の関根正人教授(河川工学)によると、河川のなだらかさや橋が近くにあるかなどによって変わるが、合流点から約1キロ以内の決壊であれば、多くで「バックウォーター現象」が起きた可能性があるという。
この現象では、増水した本流の流れにせき止められる形で支流の水位が上がり、行き場を失った水があふれて決壊につながる。宮城県丸森町では、本流の内川に流れ込む支流の五福谷川や新川が氾濫。支流側の合流点付近では7カ所で堤防が決壊し、市街地全体が浸水した。
昨年の西日本豪雨でも起きており、岡山県倉敷市真備町では、本流との合流点付近で支流の堤防が次々と決壊し、50人以上が犠牲になった。 朝日新聞11月7日
紅葉と灰色のコントラスト 異形の秋迎えた八ツ場ダム
(写真は放流により水位が下がり、泥にまみれて白くなった木々が現れた八ッ場ダム)
台風19号による記録的な大雨で、試験湛水中の八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)が一気に満水となった。周辺の紅葉が見頃を迎えるなか、放流で水位が下がると、泥をかぶって白っぽく変色した草木が現れ始めた。台風で流れ込んだ濁り水で今も湖面は茶色く、ところどころ流木が浮かぶ。
来春完成予定の八ツ場ダムは10月1日から試験湛水を始めた。国土交通省によると、当初は3~4カ月で満水位まで水をためる予定だったが、台風の大雨の影響で10月11~13日の51時間に東京ドームの容積の約60倍にあたる約7500万立方メートルの水が流れ込むなどし、わずか半月で満水に。今は放流で調節しながら水位を下げ、7日午前9時現在の湖面は満水位より約20メートル低くなっている。
ダム建設に伴って高台に移住した川原湯温泉の樋田省三さん(55)は「(白い木々は)景観としてはしょうがない。むしろ、上流の泥水をせき止めた勲章に見える」と話した。
朝日新聞11月8日
台風19号 緊急放流の6ダム 事前放流の実施体制整っておらず
ダムの貯水量が限界に近づくと流入する水と同じ程度の水を放流し、下流域で氾濫のおそれがでる「緊急放流」。先月の台風19号では6つのダムで行われました。しかし、このダムすべてで、あらかじめ水の利用者と協議して事前に水を放流するルールを決めていないなど、事前放流の実施体制が整っていなかったことが分かりました。
台風19号による豪雨では関東や東北を中心とする146のダムで、洪水を防ぐために下流に放流する水の量を抑制する「洪水調節」が行われました。
このうち、いずれも県が管理する福島県の高柴ダム、茨城県の水沼ダム・竜神ダム、栃木県の塩原ダム、神奈川県の城山ダム、それに国が管理する長野県の美和ダムでは貯水量が限界を超えると予想されたため、流入してくる水と同じ程度の量を放流する「緊急放流」が行われました。
「緊急放流」をすると下流で氾濫のおそれがでるため、国は1つの回避策として、事前に水を放流してダムの水位を下げ容量を確保する「事前放流」が有効だとしています。
ただ雨が少なかった場合にはダムの水を水道や発電、農業などに使う利用者に影響が出るため、「事前放流」を行うにはあらかじめ実施体制を整えておく必要があります。
しかしNHKが取材したところ、この6つのダムすべてで、あらかじめ水の利用者と協議して事前に水を放流するルールを決めていないなど、「事前放流」の実施体制が整っていなかったことが分かりました。 NHK 11月12日
「水道民営化止めよう」市民350人、仙台で集会
(写真は市中心部を行進して水道民営化反対を訴える参加者)
水道3事業の運営を民間に委ねる「みやぎ型管理運営方式」への慎重な議論などを求める市民団体主催の集会が23日、仙台市青葉区の肴町公園であった。
県内の9条の会や市民連合みやぎなどの約100団体でつくる県民運動連絡協議会みやぎが実施。約350人が参加した。
集会では、水道民営化による経営の実態やコスト削減効果などについて、県の説明が不足していると指摘。情報公開や県議会での十分な議論を求めた。
命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ(仙台市)の小川静治さん(69)は「パブリックコメントで寄せられた意見のうち、賛成はわずか。多くの県民が疑問の声を上げているにもかかわらず村井嘉浩知事は根本的な議論もなく推し進めようとしている」と主張。「県民の意思を反映しない政策は絶対に許してはいけない」と呼び掛けると、参加者から大きな拍手が起こった。
河北新報 11月24日
石木ダム訴訟 原告側が上告
川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する元地権者の住民などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判で、住民側の訴えを退けた福岡高等裁判所の判決を不服として10日、原告側が最高裁判所に上告しました。
石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に、285億円をかけて川棚町に建設を進めているダムで、反対する住民など100人余りが「ふるさとが奪われる」などとして、国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしています。
1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のため必要がある」として訴えを退け、2審の福岡高等裁判所も「国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」などとして住民の訴えを退けました。
この判決を不服として10日、原告側が最高裁判所に上告しました。し。 NHK 12月10日
検証 台風19号 「皆伐」跡で崩落多発 「人災」対策後手
東北地方などに被害をもたらした台風19号の被災地を歩くと、森を全面伐採して丸裸にする「皆伐(かいばつ)」の跡地から土砂崩落が起きたケースが頻発していた。近年の他の豪雨災害でも同様の事例がみられる。政府が効率重視で林業の成長産業化を図る一方、こうした「人災」の検証は進まず、識者や林業関係者から懸念の声が漏れる。
台風19号の通過から9日後の10月21日、記者は死者10人・行方不明者1人が出た宮城県丸森町に向かって国道113号を車で南下した。阿武隈川にかかる丸森大橋を渡ると、数キロ先の山腹に幅数十メートル、長さ100メートルを超える土砂崩れの跡が見える。「あれは皆伐跡地では?」と直感した。
現場は町中心部から約3キロ。町道から延びる林道の両側に約10ヘクタール、森を皆伐したらしい跡地が広がる。大型の林業機械を使ったらしい幅4~5メートルの作業道が標高約10メートルごとに幾重にも造られ、まるで段々畑だ。その路肩が複数崩れ、下の作業道の路肩を次々と押し崩して大きく崩落していた。伐採されていない周囲の森に崩落の形跡はない。 このほか町内には、皆伐跡地の崩落とおぼしきケースがいくつもあった。
安倍政権は昨年、林業の成長産業化を図る森林経営管理法を制定。今年は国有林法を改正し、適齢期を迎えた森の皆伐を後押しする。宮城県によると、県内の森林の2017年度の皆伐面積は5年前の倍の1207ヘクタール。輸入材との価格競争には皆伐が効率的だ。だが植林費用をまかなうのが難しいため、丸森町森林組合は間伐を重視しており、皆伐するのは町外の業者だという。
一方、台風19号で皆伐跡地が崩壊したとの報告は県まで上がっておらず、実態解明も進まない。県は「皆伐跡地が崩れやすい、と一概にはいえない」(森林整備課)とあいまいだ。
毎日新聞は過去の豪雨災害でも、皆伐とみられる跡地から土砂が崩壊したケースを確認した。ただし、政府は一連の災害の原因について「異常気象」を強調する一方、皆伐の影響に言及することはほとんどない。 毎日新聞 12月17日
福島原発処理水、海洋放出・水蒸気放出など3案をたたき台に議論
12月23日、福島第一原子力発電所にたまり続けるALPS(多核種除去設備)処理水の処分方法について、経済産業省の有識者小委員会は16回目の会合
を開き、政府への提言の取りまとめに向けた議論を行う。
福島第一原子力発電所にたまり続けるALPS(多核種除去設備)処理水の処分方法について、経済産業省の有識者小委員会は23日午後に16回目の会合を開き、政府への提言の取りまとめに向けた議論を行う。事務局が示した「海洋放出」、「水蒸気放出」、「海洋放出と水蒸気放出を併せて行う」3案をたたき台
として議論を進めるが、取りまとめにつながるかは不透明だ。
小委員会では、風評被害などの社会的な観点も含めた総合的な検討を行い、政府への提言を取りまとめる。 朝日新聞コム 12月23日
「脱石炭を」南太平洋の大統領、安倍首相に異例の書簡
(写真は第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議で、高い削減目標を掲げることを求める「野心連合」の会見にのぞむマーシャル諸島のティナ・ステギ気候変動特使(右から5人目)。
• 地球温暖化による海面上昇に直面する南太平洋の島国の大統領が今月、安倍晋三首相宛てに異例の書簡を送った。「私たちが生き残れるかは日本のような大排出国が野心的な温暖化対策を取るかにかかっている」と切実に訴えている。
書簡は南太平洋に浮かぶ人口約5万8千人の島国マーシャル諸島のヒルダ・ハイネ大統領が送ったもので、12月4日付。スペインで開かれた第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)の期間中だった。
朝日新聞記者が確認した書簡の写しによると、「我々のような海抜の低いサンゴ礁の国々にとって、長期的に生き残れるかどうかは、日本のような大排出国が野心(削減目標)を引き上げられるかどうかにかかっている」と指摘。日本が掲げる2030年度までに13年度比で26%減という温室効果ガスの削減目標は「我が国の未来を守る助けとなり、日本への最悪の影響を避けるには十分とは思えない」とした。30年に少なくとも10年比で60%減、再生可能エネルギーの比率も50%に引き上げることを促した。
また、世界的に石炭火力を使い続けることが、平均気温の上昇を1・5度に抑える最大の障害になっていると指摘。日本政府が30年までの脱石炭を約束し、国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)を通して進める海外での石炭プロジェクトを直ちに見直すよう求めた。
朝日コム 12月24日
災害のニュースが少ない2020年でありますように! 東京の水連絡会