PFAS汚染 国と都に健康調査などを求める意見書~小平市~
- 2024/07/22
- 16:11
(小平市議会 写真はひばりタイムズから借用)
2024年6月28日、PFAS汚染問題を考える会(注1)が小平市議会に提出した請願2件が可決され、請願で求めた国や東京都宛て意見書1件も可決されました。早速、東京新聞が報じてくれました。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/336726
全会一致となった請願「有害性が指摘されている一部有機フッ素化合物(PFAS)による地下水汚染の原因究明を求めることについて」は、「市は、PFOS 等の流出源の特定に向け、PFOS等を保管及び使用していた在日米軍基地及び民間事業者などの施設や工場を調査するよう、また必要な場合は立入り調査をするよう、都内の25市と連携して国や東京都に働きかけてください」と求めるものです。
流出源は複数ありえますが、泡消火剤の大量流出が明らかな横田基地への立ち入り調査はぜひ実現してほしいです。私たちの環境と健康を守るために、基地が米軍の治外法権のようになっている実態を変えるために、今、多摩地域の市民が声を上げるべき時です。
一方、「有害性が認められている一部有機フッ素化合物(PFAS)汚染から小平市民の健康を守るために、早急な対策を求める意見書」は一人会派の会以外の賛成多数で可決されました。(注2)
この意見書を求める請願の審議では、もともと請願事項にあった「血液検査を中心とした健康調査を実施」というところを、「現時点で必要と思われる健康調査を実施」に修正することになり、残念ながら「血液検査」が入れられませんでした。血中濃度の基準値がなければ行政は血液検査をできない、という根強い意見があったためです。結果として次の事項を求める意見書となりました。PFASによる健康被害に対する市民の不安、事実を知りたいという思いが届き、国や都が取り組みを加速することを願っています。
1 国内外の最新の科学的知見を集め、PFOS等に関して健康に影響が出ることが考えられる血中濃度の基準値を早急に決定し、国民に対する情報発信に努めること。
2 現時点で必要と考えられる健康調査を実施し、データを蓄積すること。
今回採択された意見書と請願の全文を下段に掲載してあります。かなりの譲歩をしましたが、保守系会派も代替案を提示するなど、合意のための努力をしてくれたので、幅広い賛同を得て採択にこぎつけました。紹介議員として、まちづくり市民小平、共産党、生活者ネットワーク、れいわ新選組が名を連ね、折衝や議論で応援してくださいました。
また、6月議会に提出してからの短い期間に、「健康を守るための意見書提出の請願」に940筆、「原因究明を求める請願」に923筆の署名が集まりました。署名に協力してくださった皆さん、ありがとうございました。
多摩の他の市議会でも、PFASに関するこうした請願、意見書が次々に可決されていけば、米軍基地への立ち入り調査を含めたしっかりした調査が行われ、予防原則に基づいて血液検査が行われるような情勢を作っていけるのではないでしょうか。
血液検査の実施に向けては、医師との連携などを模索するため、新たに「PFAS汚染問題を考える会・小平」を立ち上げました。PFAS問題に取り組む全国の市民団体のネットワークが作られていることも心強い動きです。
注1) 辺野古問題を考える小平市民の会、「語やびら沖縄」もあい練馬、小平・環境の会で構成。
注2) この過程で、一人会派の会(2人)は「意見書は議員が提案するべきもので、市民が請願で意見書を出すよう求めるのはおかしい」との考えに基づき、膨大な質問を浴びせ、審議時間を引き延ばしました。請願内容に直接関係のない制度的な問題で、なぜ請願者が追及されなければいけないのか、全く理解に苦しみます。
こうした動きの根底には「アンチ市民」的な姿勢があり、「請願と意見書は別物だ、請願が可決されても意見書はまたイチから議員で審議することになるんだから二度手間だ、税金の無駄遣いだ」と主張、自民系や立憲系の会派までその主張に流されがちなのが心配です。
意見書提出を求める請願で、請願内容からかけ離れた意見書が可決されたことは未だかつてなく、そんな市民の請願権を踏みにじるようなことはあってはならないはずです。
これまで当然、請願が可決されれば、意見書はほぼそのまま同時に可決されてきました。どうせ賛成多数で意見書が可決されるのはわかっているのに、「意見書を出せなどと議会に求めてきた不埒な市民を懲らしめるため」一人会派は様々な妨害工作をして、意見書の可決を次の9月議会まで先延ばししようとしましたが、そこには他のどの会派も乗らず、幸いにもこの6月議会中に意見書も含め可決されました。
慣例、手続論的な理由で、今回は「意見書提出を求める請願」と「意見書」が同時に可決されたのですが、市民の請願権を守るため、基本的にこの二つは同じ内容で同時に通すべきものだという原則を市議会で確認してほしかったと思っています。
元維新と元宇宙飛行士選抜試験ファイナリストの二人から成る一人会派の会に、今後も小平市議会が混乱させられるのではないかと心配です。
~国と都への意見書~
議員提出議案第14号
有害性が認められている一部有機フッ素化合物(PFAS)汚染から小平 市民の健康を守るために、早急な対策を求める意見書提出について
上記に関し、(別紙)により意見書を提出するものとする。
令和6年6月28日提出
提出者
小平市議会議員 深 谷 幸 信
小平市議会議員 虻 川 浩
小平市議会議員 岩 本 誠
小平市議会議員 さとう 悦 子
(別紙)
有害性が認められている一部有機フッ素化合物(PFAS)汚染から小平 市民の健康を守るために、早急な対策を求める意見書 有機フッ素化合物(PFAS)は1940年代から、生活用品、工業製品、泡消火剤 などとして、幅広く便利に利用されてきた合成化学物質で、 1万もの種類があります。
PFASの一部、PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(パーフルオロオクタン酸)(以下、「PFOS等」という。)等の有害性について、全米アカデミーズが令和4年(2022年)に、甲状腺疾患、血中コレステロール値の上昇、 肝疾 患、腎臓がん、精巣がんなどの発がん性リスクや、 胎児やこどもの発育不全との関連を 指摘しています。
また、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関が人に対しての発がん性評価の基準を4グループに分 類していますが 、 昨年11月に、 そのうちのPFOAをグループ2Bの「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」からグループ1の「ヒトに対して 発がん性がある」へ分類を変更し、 PFOSをグループ2Bの「ヒトに対して発がん性 がある可能性がある」に分類しました。
PFOS等の水汚染問題では、沖縄県、神奈川県等の米軍基地からの漏出が原因とみられる河川や地下水などの汚染が顕在化し、大阪府など全国各地で PFOS等を製造・ 使用していた工場周辺の汚染が問題になっています。
小平市を含む多摩地域では、令和 4年(2022年)から令和5年(2023年)に かけて、市民団体によって、当該市区の住民の PFOS等の血中検査が実施されました。 791人分の検査結果では、PFOS等の血中濃度が令和3年(2021年)の環境省 の全国調査と比べ2~3倍高いことが分かりました。現状、どの程度の血中濃度で PF OS等が存在する場合に健康にどのような影響が出るかについてはいまだ確定的な知見 はありませんが、PFOS等は半減期が約3∼8年と残留性が高く、生物蓄積性、難分 解性を持つことから、健康への影響については、 現在も国際的に様々な知見に基づく検 討が進められています。
国及び東京都に対し、PFOS等の健康へのリスクについて調査を行い、血中濃度の 基準値の決定等を行うことを、私たちは求めます。 よって小平市議会は、国会及び関係行政庁に対し、次の事項を求めます。
1 国内外の最新の科学的知見を集め、PFOS等に関して健康に影響が出ることが考えられる血中濃度の基準値を早急に決定し、国民に対する情報発信に努めること。
2 現時点で必要と考えられる健康調査を実施し、データを蓄積すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣
環境大臣
東京都知事 宛て
~小平市への請願~
有害性が指摘されている⼀部有機フッ素化合物(PFAS)による 地下⽔汚染の原因究明を求めることについて
請願理由
有機フッ素化合物(PFAS)は、航空燃料⽕災⽤の泡消⽕剤、フライパン等の表⾯加⼯、 半導体等の製造に広く使⽤されてきました。しかしながら、PFAS の⼀部、PFOS(パーフ ルオロオクタンスルホン酸)、 PFOA(パーフルオロオクタン酸)及び PFHxS(パーフル オロへキサンスルホン酸)(以下 「PFOS 等」という。)について発がん性等が指摘され、 PFOS が平成 21 年(2009 年)に、PFOA が令和元年 (2019 年)に残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)で製造及び使⽤が原則禁⽌になりました。当該条約を 締結する⽇本においても、予防的な取組⽅法の考え⽅に⽴ち、国内担保措置として、化学 物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づき、PFOS は 2010 年、PFOA は 2021 年に製造・輸⼊等を原則禁⽌しています。
東京都⽔道局は⽔源井⼾の調査で平成 17 年(2005 年)に既に⾼濃度の PFOS 等を検出し、 令和元年 (2019 年)以降、多摩 8 市の浄⽔施設で使⽤していた⽔源井⼾ 40 本について PFOS 等が基準値以上の濃度で検出されたため、使⽤を停⽌していたことが明らかとなりました。
平成 28 年(2016 年)に沖縄県の⽶軍基地周辺における⽔道⽔源において PFOS 等が⾼ 濃度に検出されたのを発端に、PFOS 等の漏出や⽔汚染問題が報道されています。令和 2 年(2020 年)に普天間基地で沖縄県と国が、令和 4 年(2022 年)には横須賀市が要請して国とともに横須賀基地に⽴⼊り調査を実施しています。また、多摩地域の⽶軍横⽥基地でも、 過去に何度も PFOS 等を含む泡消⽕剤やその汚染⽔の漏出があったことを、防衛省も認め ています。⽇⽶地位協定により、⽇本の関係機関は⽶軍施設に許可なく⽴ち⼊ることがで きませんが、浜⽥靖⼀防衛⼤⾂(当時)は昨年7⽉、関係⾃治体から具体的な要請があれば 関係省庁と連携し、⽶側に働きかけていきたいとも発⾔しており、東京都や関係市の要請 で調査は可能です。
⼀⽅で、⼤阪府のダイキン⼯業株式会社の淀川製作所をはじめ、⽇本各地の⼯場などからも⾼濃度の PFOS 等が流出していたことが分かってきました。市内の事業所について、 現在の PFOS 等の保有状況や、過去に PFOS 等の漏出などがなかったか等の調査が重要だ と考えます。多摩地域では地下⽔を貴重な⽔源として活⽤してきました。PFOS 等による 汚染の広がりを放置せず、必要な対策を講じるためにも、まずは現状を把握するべきではないでしょうか。
以上の理由により、次の事項について請願いたします。
請願事項
市は、PFOS 等の流出源の特定に向け、PFOS 等を保管及び使⽤していた在⽇⽶軍基地及 び⺠間事業者などの施設や⼯場を調査するよう、また必要な場合は⽴⼊り調査をするよう、 都内の25市と連携して国や東京都に働きかけてください。
⽔⼝かずえ 柴尾ひろみ 鈴⽊だいち 中倉茂和
2024年5⽉21 ⽇
請願者 PFAS 汚染問題を考える会 ⽒名 深澤洋⼦
⼩平市議会議⻑ 殿
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2024・7・22 ブログ記載