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水道民営化の源流~その9~ みやぎ県の水道民営化 第1話

①竹中B:毎日新聞
(構造改革の名のもとに日本に格差社会を持ちこんだと評される経済学者で、政治家、そして人材派遣会社パソナを傘下に持つパソナグループの会長を務めるなど企業経営者でもある竹中平蔵氏は、水道民営化への潮流を作った新自由主義のキーマンです。写真は毎日新聞)
                                                                                          
プロローグ
2021年11月10日。
スマホのSNSに「また、竹中平蔵だってさ」「ヴェオリアの名前もある!」「なにが、新自由主義からの脱却だよ」と岸田政権への批判が飛び交いました。
岸田政権が発表した、地方の活性化を謳う「デジタル田園都市国家構想実現会議」なるものの名簿を見て飛び交った批判です。
更にSNSには、「これって、田園都市・利権構想だよね。竹中パソナが暗躍だよ」「フランスの水メジャー〈ヴェオリア〉日本法人の会長も名を連ねています。地方の水道を民営化して食い物にするんでしょう」「そうかデジタル田園都市構想に、悪名高いヴェオリア社も乗り込んできた。農業者の水利権も乗っ取るつもりだろう」などと、手厳しいコメントが並びました。
  日本愛国者団体・一水会はTwitterで、このニュースを以下のようにツイートしていました。
「デジタル田園都市会議には、水道に関わる外資のヴェオリア社日本法人の野田由美子氏の名も含まれる。同社の系列は宮城県の水道民営化に関わる会社の議決権株式の51%を占める等、既に生活の為の水から利益を貪ろうとしている。結局、構想とは公共インフラも市場の餌にする小泉以来の伝統芸ではないか。」

日本初の水道民営化を 宮城県が始めようとしています
2021年7月5日
宮城県議会は7月5日、上下水道と工業用水の運営権を20年間にわたって民間企業に売却する「みやぎ型管理運営方式」(注1)の運営権設定議案を可決しました。これまで宮城県が行ってきた水道と下水道それに工業用水の運営権を、民間企業に売り払ったのです。
村井嘉浩宮城県知事が永年にわたって推し進めてきた懸案が日の目を見たとも言い換えられます。

②村井5選
(村井嘉浩知事は防衛大学を卒業後に自衛隊に入隊。東北方面航空隊でヘリコプターパイロットという特異な経歴の持ち主。松下政経塾で学び宮城県県議員を経て2005年宮城県知事に就任。2021年10月31日投開票の知事選を制して現在5期目です。“日本初の水道民営化”という議案を、なにやら得意になって推し進めてきた節があります。写真は当選を喜ぶ村井知事・読売新聞)

民営化の運営権を手に入れたのは、東京に本社を置くメタウォーター社が幹事を務める企業グループ「株式会社みずむすびマネージメントみやぎ」です。
その構成企業はヴェオリア・ジェネッツ、オリックス、日立製作所、日水コン、メタウォーターサービス、東急建設などの株式会社10社。
この企業グループが高く評価されたのは、実際に運営にあたるOM(オペレーション&メンテナンス)会社を地元に設置、人材を地元から採用して構築したノウハウを地元に還元すると謳っている点でした。
ところが、この設置されるOM会社は議決権株式の51%をフランスの水メジャー・ヴェオリア傘下のヴェオリア・ジェネッツ社が握っていることが、6月の県議会で判明しました。議会の追及で県がこの事実を把握したのは2021年5月19日ということでした。
県議会は騒然としたそうです。しかも新OM会社と県の間には契約が結ばれていないことも判明しました。つまり、実際に水道事業を担う現場企業に県の手が届かないということです。

2021年7月2日
建設企業委員会で同県議案の賛否をはかったところ、賛成4,反対4で真っ二つに割れました。その結果、宮城県政史上初となる委員長裁決で可決。
   7月5日の県議会で賛成33、反対18で“宮城県の水道民営化案”は可決しました。
この「みやぎ型管理運営方式」には、水道の小売り部分にあたる各自治体の
水道事業は含まれていません。そのことから、この議案を“私ごと”として考えない県民が多かったようです。
しかし、この民営化に危機感を抱いている市民も多くいます。
はたして水質などのモニタリングをきちんとできるのか?
自然災害時の危機管理を民間企業が対応できるのか?
コスト削減が水道技術者の継承を困難にさせないか?
急がれる管路の改修や更新が先送りされていくのではないか?
   市民グループ「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は県に議案を採決しないように求める署名運動を展開、県内外の多くの団体や市民から1万9449筆を集め県議長に提出しています。

日本進出をめざす水メジャー・ヴェオリア社
岸田政権が謳う“新しい資本主義”の柱となる政策・デジタル田園都市国家構想のメンバーに名を連ねたヴェオリア・ジャパンの野田由美子社長とは、どんな人物でしょう。

③野田由美子
(写真は野田由美子ヴェオリア・ジャパン会長。毎日新聞より)

2018年12月11日 
水道民営化法案の成立(12月6日)を受けて日刊ゲンダイ・デジタル版は、
水道民営化で特需か 仏ヴェオリア日本人女性社長の“正体”」の見出しで、以下のような記事を掲載しています。

【10日閉幕の臨時国会で安倍政権が強行成立させた「水道民営化法」のバックに気になる人物がいる。フランスの水メジャー「ヴェオリア」の日本法人社長・野田由美子氏。                                 野田氏は10年ほど前、民間資金の活用による公共施設の整備運営(PFI)を推進する内閣府の委員会の委員としてPFI(注2)の旗振り役をしていたのだ。
野田社長は1982年に東大卒業後、外資系金融機関やコンサル会社を経て、2007年6月に横浜市副市長に就任(09年9月に退任)。当時、内閣府の「民間資金等活用事業推進委員会総合部会」の委員に名を連ねていた。
副市長時代には、メディアのインタビューにも「日本におけるPFI普及の第一人者」として登場。『「民」が必死で頑張った結果が、企業としての利益だけではなく、国民に安くて良質な公共サービスという形で還元される。PFIの考え方こそ、日本が必要としているものではないかと感じたんです』と話していた。
その野田氏は2017年9月、ヴェオリアの日本法人である「ヴェオリア・ジャパン」の社長に就任。同社はすでに今春から静岡県浜松市で下水道施設の運営権を獲得している。「水道民営化法」が成立したことで、全国で上下水道の民営化が加速することが予想され、ヴェオリア社がウハウハなのは間違いない。
しかもヴェオリア社からは、女性社員が内閣府のPFI推進室に出向中であることが、法案審議中の先月、参院厚労委で明らかになってもいる。この問題を質した社民党の福島みずほ議員は、「まるで受験生が採点する側に潜り込んで、いいように自分の答案を採点するようなものだ」と憤激】

このような人物がメンバーとなっているデジタル田園都市構想には、地方の水道民営化が視野に入っているのでしょう。
  さて、フランスの水メジャー・ヴェオリアとはいかなる企業なのか? 世界各地で水ビジネスを展開したヴェオリアの実態を知ると宮城県の水道民営化の危うさが浮かびあがってきます。

④シラクと横綱・クーリエ・ジャパン
(2007年朝青龍を大統領府で迎えるシラク大統領。写真はクーリエ・ジャポン)
親日家で大相撲の大ファンだったジャック・シラク大統領、実は水メジャー・ヴェオリア社とは深い関わりがありました。(この稿は次回に続きます)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~                      

注1)みやぎ型管理運営方式:県と民間が役割を分担して水道事業にあたる独自のコンセッション方式です。
【県が受け持つ業務】管路の維持管理と更新。建築等の改築。事業全体を総合的に管理・モニタリング。
【民が受け持つ業務】浄水場・処理場の運転と管理。水量水圧等の監視(24
時間・365日)。水質のチェック。薬品等の調整。動力費の負担。設備等の更新。
(宮城県保険医協会HPを参照。http://miyagi-hok.org/?p=11884 )

注2)PFI:PFI(Private Finance Initiative)とは、民間資金を利用して民間に公共施設の整備と公共サービスの提供をゆだねる手法。1992年英国生まれの法案で、日本では1997年公布されました。
2011年6月に改正PFI法が公布。PFI法に「公共施設等運営権」という権利が新たに追加されました。コンセッション方式と呼ばれています。
公共施設等運営権が設定できる事業は、「利用料金を徴収するものに限る」とされており、上下水道事業や空港事業、公営鉄道・地下鉄事業、公営住宅などでの活用が中心です。改正水道法(水道民営化法案)はPFIへの垣根を低くしたものです。
英国ではPFIで、かえって利用料金が割高になるなどの弊害が指摘され、近年見直しの方向にあります。
注)命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ:活動の様子は下記のフェイスブックとブログを参照してください。
フェイス・ブック
https://www.facebook.com/mizumiyagi/

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ
https://miyagi-suidou.hatenablog.com/

2021・11・29記 山本喜浩

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プロフィール

Tokyo no Mizu

Author:Tokyo no Mizu
プロフィル

東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                   
      

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