2014年08月19日
裏座小
裏座小
うらざぐゎー
'uraza gwaa
◯裏座敷
語句・うらざ 「裏座敷。女部屋。婦人の居間。遊郭では、女郎が客をとる部屋。」【沖縄語辞典】。・ぐゎー 沖縄語辞典によると「小」をつける場合は幾つかのケースがある。たとえば①小さいことを表し、またその愛称。 ②子供の名について愛称となる。③少量であること。 ④軽蔑の意。 ⑤分家の意。とある。歌の名前を呼ぶ時に「宮古根小」(なーくにーぐゎー)などと、「小」をつけたるする場合、すこし卑下した感じを受ける時がある。愛情があるのだが人前では卑下する④の「小」でないか、と推測する。本土で「・・小唄」とつけるようなものではないだろうか。
作詞/照屋 林助 作曲/喜納 昌永
一、(男)無蔵が裏座や ぬくぬくとぅ 冬ん春風 吹ちがすら 梅とぅ桜ぬ 花活ちてぃ 一鉢に咲かち 眺みぶさ
んぞがうらざやぬくぬくとぅ ふゆんはるかじ ふちすがら んみとぅさくらぬ はないちてぃ ちゅばちにさかち ながみぶさ
Nzo ga 'uraza ya nukunuku tu huyuN harukaji huchisugara 'Nmi tu sakura nu hana 'ichiti chubachi ni sakachi nagamibusa
◯貴女の裏座はぬくぬくと 冬も春風が吹いているのか 梅と桜の花を活けて一鉢に咲かせてみたいものだ
語句・んぞ 男性が愛する女性を呼ぶ時の呼称。形容詞「んぞーさん」から。九州にも「んぞらしい」(可愛い)という語があり関連している。「無造作」から来ているという説も。・ふちがすら 吹いているのか。<ふちゅん。ふち+が 「疑わしさを表す文に用いて、文の疑わしい部分に付く」。+ すら しているのか?
ニ、(女)互にかながな語る夜や 冬に夜長ん なぎ足らじ 時計ぬ針ん 押し戻ち まじゅん朝寝 しち見ぶさ
たげにかながなー かたるゆや ふゆにゆながん なぎたらじ とぅちーぬはーいん うしむどぅち まじゅんあさにーしちみぶさ
◯互いに仲良く語る夜は冬の夜長であっても長さ足らないだろう。 時計の針を戻して一緒に朝寝をしてみたいわ
語句・かながな 仲良く。<かながなーとぅ。・なぎ 長さ。・たらじ 足らないだろう。「じ」は打消し推量。「ないだろう」。
三、(男)どぅくから止みてえ 呉んなよう 明日ん明後日ん 有いどぅする 行くなんでぃ 云ゆる 汝やかにん 行ちゅる我がる 苦りさしが
どぅくからとみてーくぃんなよー あちゃーんあさてぃん あいどぅする いくな んでぃ いゆる やーやかにん いちゅるわーがる くりさしが
◯ひどく帰るのを止めてくれるなよ 明日も明後日もあるのだから 行くなと言うお前は こんなにも行く私こそ苦しいのだけど
語句・どぅく「過度に、余りに(も)ひどく」【沖辞】。・んでぃ ・・と。・かにん かに+ん 「かように」も。 ・わーがる 私こそ。私のほうが。<わーがどぅ。 ・くりさしが 苦しいのだけど。<くりしゃん。くりさん。苦しい。+しが。だが。
四、(女)里前やらち うぬ後や 枕ぬ一ち けえ余てぃ まあが行ぢょうら 今時分のー ちゃあし暮すが 我ん一人
さとぅめーやらち うぬあとぅや まくらぬてぃーち けーあまてぃ まーがんぢょーら なまじぶのー ちゃーしくらすが わんひちゅい
◯貴方を行かせてその後は 枕が一つ余って どこに行っているのやら 今時分にはどうやって暮らそうか 私一人
語句・さとぅめ 貴方様。<さとぅめー <さとぅ。 女性が愛する男性を呼ぶ呼称。+めー 様。「尊敬の意を表す接尾辞」【沖辞】。・やらち 行かせて。<やらしゅん。やらすん。「遣る。つかわす。行かせる」【沖辞】。・けー ちょっと。・まー どこ。・んじょーら 出て行っているのやら。<んじ<んじゅん。出る。
五、(女)かんし毎夜通いねえ 噂ぬ立ちゅんでぃ 知りなぎな (男)何がやら行逢らね やしまらん (男女)あんしん愛さる 二人が仲
かんしめーゆるかゆいねー うわさぬたちゅ んでぃ しりなぎな ぬーがやらいちゃらねーやしまらん あんしんかなさる たいがなか
◯こんなに毎夜通うなら噂が立つと知りながら 何故か会わないと心が休まらない それほども愛している二人の仲
語句・かんし「かように。こんなに」【沖辞】。<かん(こう)+し<っし(して) ・かゆいねー 通うなら。<かゆゆん、かゆいん(通う)の語尾と「ば」が融合して「ねー」となり、仮定を表す。 ・んでぃ…と。 ・なぎな ながら。しているのに。「逆説の場合に用いる」<なぎーな。 ・いちゃらね 会わないと。<いちゃゆん いちゃいん。(出会う)の否定形。いちゃらん。+ねー(仮定法)。 ・あんしん そんなにも。<あんし(そんなに)+ん(も)。
戦後の民謡界の重鎮二人が作詞作曲している人気の高い名作。
設定は遊郭の「じゅり」(女郎)と客の話であろうか。
ほのぼのとした曲調とお互いを深く思い遣る男女の機微が節々に込められている。
裏座小とは、沖縄の古民家において北側にある裏間取りのことである。
たいていは南向きに客間(一番座)、仏間(二番座)があり、それぞれの裏側にある部屋が裏座であった。
大抵は寝室として使う。
産室や若夫婦の部屋、子供部屋にも使われる。
体や心を病んだ者もこの裏座で治療したという。
遊郭では客を取る部屋であるが、「じゅり」が生活もできるようにしてあったという。
音源は喜納昌永の「芸歴70周年記念 沖縄民謡情歌特集」。
YouTubeでは、よなは徹とユイユイシスターズの山川まゆみが「第二回コザてるりん祭」で歌ったもの。
【このブログが本になりました!】
書籍【たるーの島唄まじめな研究】のご購入はこちら
うらざぐゎー
'uraza gwaa
◯裏座敷
語句・うらざ 「裏座敷。女部屋。婦人の居間。遊郭では、女郎が客をとる部屋。」【沖縄語辞典】。・ぐゎー 沖縄語辞典によると「小」をつける場合は幾つかのケースがある。たとえば①小さいことを表し、またその愛称。 ②子供の名について愛称となる。③少量であること。 ④軽蔑の意。 ⑤分家の意。とある。歌の名前を呼ぶ時に「宮古根小」(なーくにーぐゎー)などと、「小」をつけたるする場合、すこし卑下した感じを受ける時がある。愛情があるのだが人前では卑下する④の「小」でないか、と推測する。本土で「・・小唄」とつけるようなものではないだろうか。
作詞/照屋 林助 作曲/喜納 昌永
一、(男)無蔵が裏座や ぬくぬくとぅ 冬ん春風 吹ちがすら 梅とぅ桜ぬ 花活ちてぃ 一鉢に咲かち 眺みぶさ
んぞがうらざやぬくぬくとぅ ふゆんはるかじ ふちすがら んみとぅさくらぬ はないちてぃ ちゅばちにさかち ながみぶさ
Nzo ga 'uraza ya nukunuku tu huyuN harukaji huchisugara 'Nmi tu sakura nu hana 'ichiti chubachi ni sakachi nagamibusa
◯貴女の裏座はぬくぬくと 冬も春風が吹いているのか 梅と桜の花を活けて一鉢に咲かせてみたいものだ
語句・んぞ 男性が愛する女性を呼ぶ時の呼称。形容詞「んぞーさん」から。九州にも「んぞらしい」(可愛い)という語があり関連している。「無造作」から来ているという説も。・ふちがすら 吹いているのか。<ふちゅん。ふち+が 「疑わしさを表す文に用いて、文の疑わしい部分に付く」。+ すら しているのか?
ニ、(女)互にかながな語る夜や 冬に夜長ん なぎ足らじ 時計ぬ針ん 押し戻ち まじゅん朝寝 しち見ぶさ
たげにかながなー かたるゆや ふゆにゆながん なぎたらじ とぅちーぬはーいん うしむどぅち まじゅんあさにーしちみぶさ
◯互いに仲良く語る夜は冬の夜長であっても長さ足らないだろう。 時計の針を戻して一緒に朝寝をしてみたいわ
語句・かながな 仲良く。<かながなーとぅ。・なぎ 長さ。・たらじ 足らないだろう。「じ」は打消し推量。「ないだろう」。
三、(男)どぅくから止みてえ 呉んなよう 明日ん明後日ん 有いどぅする 行くなんでぃ 云ゆる 汝やかにん 行ちゅる我がる 苦りさしが
どぅくからとみてーくぃんなよー あちゃーんあさてぃん あいどぅする いくな んでぃ いゆる やーやかにん いちゅるわーがる くりさしが
◯ひどく帰るのを止めてくれるなよ 明日も明後日もあるのだから 行くなと言うお前は こんなにも行く私こそ苦しいのだけど
語句・どぅく「過度に、余りに(も)ひどく」【沖辞】。・んでぃ ・・と。・かにん かに+ん 「かように」も。 ・わーがる 私こそ。私のほうが。<わーがどぅ。 ・くりさしが 苦しいのだけど。<くりしゃん。くりさん。苦しい。+しが。だが。
四、(女)里前やらち うぬ後や 枕ぬ一ち けえ余てぃ まあが行ぢょうら 今時分のー ちゃあし暮すが 我ん一人
さとぅめーやらち うぬあとぅや まくらぬてぃーち けーあまてぃ まーがんぢょーら なまじぶのー ちゃーしくらすが わんひちゅい
◯貴方を行かせてその後は 枕が一つ余って どこに行っているのやら 今時分にはどうやって暮らそうか 私一人
語句・さとぅめ 貴方様。<さとぅめー <さとぅ。 女性が愛する男性を呼ぶ呼称。+めー 様。「尊敬の意を表す接尾辞」【沖辞】。・やらち 行かせて。<やらしゅん。やらすん。「遣る。つかわす。行かせる」【沖辞】。・けー ちょっと。・まー どこ。・んじょーら 出て行っているのやら。<んじ<んじゅん。出る。
五、(女)かんし毎夜通いねえ 噂ぬ立ちゅんでぃ 知りなぎな (男)何がやら行逢らね やしまらん (男女)あんしん愛さる 二人が仲
かんしめーゆるかゆいねー うわさぬたちゅ んでぃ しりなぎな ぬーがやらいちゃらねーやしまらん あんしんかなさる たいがなか
◯こんなに毎夜通うなら噂が立つと知りながら 何故か会わないと心が休まらない それほども愛している二人の仲
語句・かんし「かように。こんなに」【沖辞】。<かん(こう)+し<っし(して) ・かゆいねー 通うなら。<かゆゆん、かゆいん(通う)の語尾と「ば」が融合して「ねー」となり、仮定を表す。 ・んでぃ…と。 ・なぎな ながら。しているのに。「逆説の場合に用いる」<なぎーな。 ・いちゃらね 会わないと。<いちゃゆん いちゃいん。(出会う)の否定形。いちゃらん。+ねー(仮定法)。 ・あんしん そんなにも。<あんし(そんなに)+ん(も)。
戦後の民謡界の重鎮二人が作詞作曲している人気の高い名作。
設定は遊郭の「じゅり」(女郎)と客の話であろうか。
ほのぼのとした曲調とお互いを深く思い遣る男女の機微が節々に込められている。
裏座小とは、沖縄の古民家において北側にある裏間取りのことである。
たいていは南向きに客間(一番座)、仏間(二番座)があり、それぞれの裏側にある部屋が裏座であった。
大抵は寝室として使う。
産室や若夫婦の部屋、子供部屋にも使われる。
体や心を病んだ者もこの裏座で治療したという。
遊郭では客を取る部屋であるが、「じゅり」が生活もできるようにしてあったという。
音源は喜納昌永の「芸歴70周年記念 沖縄民謡情歌特集」。
YouTubeでは、よなは徹とユイユイシスターズの山川まゆみが「第二回コザてるりん祭」で歌ったもの。
【このブログが本になりました!】
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この記事へのコメント
突然のコメント失礼します。
三番の後半部分
「行くなんでぃ 云ゆる 汝やかにん 行ちゅる我がる 苦りさしが」
について本文上では
「行くなと言うお前は こんなにも行く私こそ苦しいのだけど」
と解説されていますが、
「行くなと言うお前よりも行く私こそ苦しいのだけど」
という訳文が適当かと思われます。
単語の切れ目を「汝や(お前は)・かにん(こんなにも)」ではなく、「汝(お前)・やか(より)・にん(も?)」と捉えたわけですが、こちらの方が自然な感じでしっくりくるような気がします。
三番の後半部分
「行くなんでぃ 云ゆる 汝やかにん 行ちゅる我がる 苦りさしが」
について本文上では
「行くなと言うお前は こんなにも行く私こそ苦しいのだけど」
と解説されていますが、
「行くなと言うお前よりも行く私こそ苦しいのだけど」
という訳文が適当かと思われます。
単語の切れ目を「汝や(お前は)・かにん(こんなにも)」ではなく、「汝(お前)・やか(より)・にん(も?)」と捉えたわけですが、こちらの方が自然な感じでしっくりくるような気がします。
Posted by はーまー at 2021年04月15日 20:52
はーまーさん
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
単語の切れ目をどこにするか、ヤマトゥンチュには苦手なところです。
やー やか にん
の「にん」のところが
おまえよりも とならず おまえよりにも となると
すこし難しくなりますが、おっしゃるとおりの文節になると思います。
検討して修正します。
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
単語の切れ目をどこにするか、ヤマトゥンチュには苦手なところです。
やー やか にん
の「にん」のところが
おまえよりも とならず おまえよりにも となると
すこし難しくなりますが、おっしゃるとおりの文節になると思います。
検討して修正します。
Posted by たる一 at 2021年04月16日 10:12
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