音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

研究

キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』第二部ノート

愛の労働あるいは依存とケアの正義論作者: エヴァ・フェダーキテイ,Eva Feder Kittay,岡野八代,牟田和恵出版社/メーカー: 白澤社発売日: 2010/08/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 46回この商品を含むブログ (16件) を見るロールズ批判の部分(第二部…

問題関心:自由主義について

思想史研究者はしばしば、自分の研究対象の思想にシンパシーを覚える。かくいう自分もこれまで「自由主義」思想の研究をしてきたわけだが、他の思想と比較して、自由主義にもっとも共感を覚えている(もっとも自由主義それ自体、きわめて多義的なイデオロギ…

近況:紀要論文を書いています

久々のブログ。結局この夏はこまごました家のことや論文執筆に追われて、まったく更新できなかった。自分の要領の悪さ、仕事の遅さがいつもながらの課題。本当は7月に行ったイギリス理想主義ワークショップの記録も書きたいのだが…。それはまたいずれ。執筆…

報告原稿を書いています

この2月3月はけっこう文献を読み進められました。学生の海外引率がこの冬はなかったことが大きいです。しかし肝心の執筆の方はあまり進まず、新年度の授業開始が見えてきた焦りから(貴重な研究期間が終わってしまう!)、ようやく3月後半から筆が進むよ…

自立と介入の適切な関係とは?(知的障害者福祉をめぐって)

引き続きイギリスの知的障害者福祉の歴史を勉強中。以下の本は、第二次世界大戦後から2001年までの知的障害者をめぐる思想、政策、生活実態、国際比較が網羅的にまとめられていて、基礎知識やイメージを得るうえでとても有益だった。ただし、著者たちはイギ…

マシュー・トムスン『精神薄弱の問題――イギリスの優生学、デモクラシー、社会政策1870-1959』

The Problem of Mental Deficiency: Eugenics, Democracy, and Social Policy in Britain C.1870-1959 (Oxford Historical Monographs)作者: Mathew Thomson出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand発売日: 1998/05/14メディア: ハードカバーこの商品を含…

最近の関心事:トマス・ヒル・グリーンと障害の歴史

今学期も勤務先大学の授業は無事終了。ようやく少し腰を据えて読み書きができそうだ(まだ採点とシラバス執筆が残っているが・・・)。最近は、トマス・ヒル・グリーンの倫理学を少ししっかり読んでいる。人間の本質を「他者と意識を介して関係する」ことに…

R.ホフスタッター『アメリカの社会進化思想』

アメリカの社会進化思想 (1973年) (研究社叢書)作者: 後藤昭次出版社/メーカー: 研究社出版発売日: 1973メディア: ?この商品を含むブログ (2件) を見る今度、社会進化論について論文を書くことになったので、基礎文献であるこの本も読んでみた。原著は1944年…

リッチー(D.G. Ritchie)「ダーウィンとヘーゲル」を読む

以下の著作の表題論文。原著は1893年。Darwin and Hegel, with Other Philosophical Studies作者: Ritchie David George 1853-1903出版社/メーカー: Hardpress Publishing発売日: 2013/01/28メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る一読…

イギリス観念論における形而上学と倫理学の関係

某所でイギリス観念論(イギリス理想主義)について解説文を書くことになったので、改めてお勉強中。難解で、それだけに誤解を受けやすい論点の一つに、イギリス観念論における形而上学と倫理学の関係がある。観念論者たちが議論のなかで誰を仮想敵にしてい…

社会思想史学会で研究報告

週末は関西大学で行われた社会思想史学会に行ってきました。自分も二日目の今日、朝一のセッションで報告してきました。私の報告のテーマは、政治思想史研究の方法論についてでした。 実はこのテーマは、大学院の時以来の、自分にとってのいわば宿題と言える…

研究会で報告

ものすごく久しぶりの更新になってしまいました。昨日は都内の某研究会でニューリベラリズムの福祉国家思想について報告してきました。昨年某学会誌に掲載した拙論が今回お声をかけていただいたきっかけになったようです。論文を書くという行為は、他の研究…

『イギリス哲学研究』第38号(2015)が届く

手元に今年の『イギリス哲学研究』(日本イギリス哲学会の年報)が届いたのでざっと読む。特に自分の研究に大きく関わる以下の二篇を面白く読んだ。①論文:尾崎邦博「D.G.リッチーとJ.A.ホブスン――財産権についての比較考察――」ともにニューリベラリズムの思…

R.H.トーニーらの社会主義思想について

この夏はイギリスの社会主義思想家R.H.トーニーについて、少し勉強を進めています。トーニーは、私がこれまで研究してきたL.T.ホブハウスやT.H.グリーンとも、かなり思想的な親和性が強いと言える人物です。三人ともJ.S.ミル以後の自由主義の系譜につらなり…

近況報告です

色々と雑事が立て込んでしまい、相変わらずなかなかブログに時間が割けないでいますが、いくつか近況報告がありますので記しておきたいと思います。 この4月から、東京の某私大に専任教員として就職することになりました。研究分野に近い科目での公募による…

近藤和彦『イギリス史10講』+今後の研究の方向性について雑感

イギリス史10講 (岩波新書)作者: 近藤和彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/12/21メディア: 新書この商品を含むブログ (8件) を見る 著者の近藤先生には、3年ほど前にケンブリッジの研究会でお会いしたことがあります。史料に対する緻密かつ真摯な姿…

神戸研究会・ルーマン読書会・離乳食

なかなかブログを更新できておらず申し訳ないです。日々の雑事で忙しいのも理由の一つですが、何より私が文章を書くのがとても遅い(論文執筆時に特に顕著)せいだと思います。あとブログには何かまとまりのあることを書かなければならないという(別に誰か…

京都で研究発表

週末は某学会の関西部会で報告するために、京都を訪れました。愛知県に引っ越してから、京都や神戸など関西圏が地理的にぐんと身近に感じられるようになりました。東海地方の研究者ネットワークは名古屋に集中しておりそれほど大規模ではないのですが(その…

研究会で報告

今日は非常勤先で授業二コマ行った後、夕方から某研究会で報告した。ぐだぐだの発表になってしまい、反省。内容が準備できててもプレゼン練習は大事と痛感した。鋭い質問をいくつも頂き、質疑応答もたじたじだった。でも懇親会はとても有意義だった。政治と…

Viva受かりました

二週間のイギリス滞在もあっという間に終わり、先ほどヒースロー空港近くのホテルに辿りつきました。博士論文の口頭試問(Viva)に加えて、ロンドンでの資料収集、そしてカーディフとシェフィールドでの旧友との再会など、大変充実した二週間でした。帰国後…

Viva直前

博士論文の口頭試問(viva)を金曜日に控え、18日からイギリスに来ています。およそ8か月ぶりの渡英ですが、Vivaのことで頭がいっぱいになってしまっていて、あまり感慨にふけることができないでいます。ロンドンでは半日をLondon School of Economicsの図…

現代イギリスの移民政策にかんする文献メモ

An Immigration History of Britain: Multicultural Racism since 1800作者: Panikos Panayi出版社/メーカー: Routledge発売日: 2010/06/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見るImmigration Under New Labour作者: Will Somerville出版社/メ…

博士論文提出しました

またもや更新が途絶えてしまいました・・・。ちゃんと生きてます。年末、年始はずっと博士論文の仕上げに取りかかっていました。思ったよりも時間がかかりましたが、先日、ようやく仮製本してカーディフ大学に郵送することができました。口頭試問(イギリス…

東京滞在ほか

10月末は一週間ほど東京へ行ってきました。滞在中はあわただしい毎日でしたが、研究者仲間や修士課程時代の指導教官の先生方とお会いして、人生相談(?)も含め、いろいろとお話してくることができました。研究は元来孤独な営みであり、特に私の分野では文…

研究会に出席しました

昨日は某先生の報告を聞きに、名古屋大学まで行ってきました。帰国以来、家で博士論文の執筆にかかりきりになってしまい気がつけば会話する相手は妻のみ、という状態が続いていましたので、社会復帰のリハビリも兼ねての研究会出席でした。結果的に様々な研…

帰国後の近況です

日本に帰国後、また長らくブログを放置してしまいました。帰国後は妻と私の双方の実家に戻ったり投稿論文の修正に追われたりと、しばらくばたばたしましたが、8月終盤になってようやく博士論文の仕上げに腰を据えてとりかかれるようになりました。しかし、…

一時帰国を終えて

またもや一カ月ぶりの更新になってしまいましたが、ちゃんと生きてます。無事に日本からカーディフへ戻ってきました。今回はイギリスの先生方との一時帰国ということで、自分にとっても特別な経験となりました。東京の学会でのセッションでは、イギリス理想…

一時帰国のお知らせ

また更新が途絶えてしまいました…。4月終わりあたりから色々と忙しくて、この一カ月間はあっと言う間に過ぎてしまいました。急なお知らせになってしまいますが、今週末に日本へ一時帰国することになりました。東京での学会報告と、関西でのセミナー出席が目…

ベルファストでの学会報告

先日、北アイルランドの首都ベルファストまで学会に行ってきました。電車とバスと飛行機を乗り継いで、カーディフから片道6時間あまり。同じイギリスとは言え、気分はほとんど外国旅行でした。道中は同じ研究科の台湾人の友人と一緒だったので、退屈せずに…

英国トインビー・ホール関連文献メモ

そろそろ博士論文後の研究テーマについても、考えていこうと思います。いくつか研究したいテーマはあるのですが、その中のひとつに、初期トインビー・ホールのセツルメント運動を、思想史的に追っていくというものがあります。関連しそうな先行研究を以下に…