少し前に、Appleが選択したポピュラー音楽ベスト100という企画あったけれど、2000年までのいわゆるオールドロックの類はチャートにパラパラとあるだけで、名前を知っているだけか全く知らないものが多かった。元からそうだが、いかに自分がメインストリームの音楽を聴いていないかを再認識。実は、このチャートの3位だったBeatlesの「Abby Road」ですら、 あまり興味が持てなくて、ちゃんと聴いたことがなかったりする。
それに、誰か個人が選んだランキングなら、その人となりや生きてきた時代と音楽の関わりが分かって面白かったりするが、メディアや評論家がアルバムに星や点数を付けたり、ランキングにすること自体に意味があると思えない。
なので、中古のレコードやCDを買う時も、気になったもの、手に取ったものから、自分が関心があるものを自由に選んでいる。最近はこんなもの。
Steve Jansen / Tender Extinction (CD 2016)
「元JAPAN」(ということに何も意味もないのだが)のドラムのSteve Jansen(1959-)の2作目。前作の『Slope』は素晴らしいアルバムで、日本人のゲストメンバーを加えた一夜だけの東京公演は、強く記憶に残っている。この2作目も『Slope』を踏襲したアルバムで、曲ごとのゲストボーカルと室内楽的なサウンドが、音の物語を紡いでいく。
James McVinnie / PHILIP GLASS - THE GRID(CD 2018)
James McVinnie(1983-) は、英国のパイプオルガン、キーボード奏者で現代音楽を得意とする。Philip Glassの作品を作曲者本人以外では、最も優れた演奏を聴かせてくれる。Glassの作品をパイプオルガンで弾いたものはECMをはじめ各種リリースされているが、Glassの作品が抱える焦燥感、不安感がパイプオルガンだともっさりしてボケてしまうことが多い。しかし、彼の演奏はそうでなく作品の本質を表現している。それはこのピアノの演奏でも感じられる。
Parson Sound (CD 2001)
これも少し前に記事にした60年代末期のスウェーデンのヒッピーコミューンバンド「Harvester」の前身となる「Parson Sound」 の1966 - 1969年ごろのライブやラジオ、テレビ放送の音源を集めたCD2枚組。内容はプリミティブな演奏で初期Amon Duulに通じるものがある。こういうサウンドをスピーカーで大きな音で聴くリスニング体験は、この時代の音楽ならでは。
アルバムカバーのクレジットで気がついたが、古い音源を含むこのアルバムの制作はスウェーデンの文化省が後援している。日本でなら、裸のラリーズの古い音源のリリースを文化庁が後援するようなもの。ドイツや北欧圏は、自国の文化に対して幅広く公的機関の援助が充実しているようだ。金額の多少は不明だが、支援があるというのはアーティストにとって重要。
Cosmic Jokers / SCI FI Party (1974)- Galactic Supermarket (1974) (1994 再発CD)
1970年代の独Ohrレーベルのアーティストが参加して、「Cosmic Jokers」名義で何作かのセッションアルバムをリリースしている。これはその中の2枚。Manuel Gottesching、Klaus Schulze などが参加し、GotteschingのガールフレンドだったRosiの語りやスキャットも入っている、単なるリラックスしたセッションではなく、かなり密度の高い演奏で、曲によってはAsh Ra Temple名義でリリースしてもいいかと思うほど。
Cream / Fresh Cream(LP初期米国盤 1966)
Cream, Yardbirds, Ten Years After, Humble Pieといった60年代〜70年代のグループをこの10年位の間によく聴くようになってきた。理由はいくつかあって、僕は当時はこうしたグループをあまり聴かなかったので、知らなかった(再発見した)ジャンルとして、今新鮮に聴けること。もう一つはオーディオが、MMカートリッジにビンテージのアンプとスピーカーという、こうした類の音楽のグルーブ感がよく出るシステムなったこと(この影響が一番かも)。演奏を含め音楽がストレートで、サウンド的にもシンプルなのでバンドのバイブレーションがダイレクトに伝わってくる。
僕にとってのCreamの面白さは、やはりJack Bruceの書く曲とGinger Bakerのダイナミックなドラムにある。このファーストアルバム(と次のアルバム)は、基本にブルースというよりもサイケデリックで60年代後半特有の匂いが染み付いている。
Nice/ Third (LP 初期東芝盤 1969)
Kieth EmersonのキーボードトリオのNiceも60年代後半特有の匂いがする。それは新しく何も演っても許容される時代の無垢で自由な精神につながっているのかもしれない。このアルバムはNiceの3枚目でA面がスタジオ録音で、B面はフィルモアイーストでのライブ。
この頃のKieth Emersonの演奏はピアノとハモンドオルガンだけのシンプルなもの。ベースのドラムの残り二人は見た目も地味で、このNiceのままでは商業的な成功はなかっただろう。Carl Palmer、Greg Lakeという美形のカリスマメンバーと組み、ムーグが唸りを上げるドラマチックな音楽によってELPは最初のスタジアムロックのプログレグループとして大成功を収める。
それとは対象的な無垢で素朴なものとして、最初のNiceの音楽の魅力は褪せることない。
Spirit / Best of (LP 初期米国盤 1973)
Spiritは、1971年デビューのLAのグループ。大学生に人気がある白人インテリロックの最初のグループの一つかもしれない。サウンド的にはプログレッシブで、少し風変わりがところがある。このベスト盤を探してたのは、シングルでのみのリリースだった「1984」が収録されているから。
もちろん、ジョージ・オーウェルの小説「1984」がベースの曲で、
1984年
誰かがお前のドアをノックする
その用意はできているか?
と歌われる。
Dylan Howe / Subterranean (LP英国盤 2014)
Dylan Howeは、プログレバンド YESのギターのSteve Howeの息子。パブロックバンドのBlockheadsのドラマーであり、父 Steve Howeとは、オルガンを加えたジャズトリオとして活動したりしている。
このアルバムことは最近まで全く知らなくて、Dylan HoweがDavid Bowieのベルリン時代の楽曲をジャズアレンジで録音するプロジェクトへの出資をクラウドファンディングで募り、それが達成されて実際に録音が行われたもの。Philip Glassも、Low Symphony、Heroes Symphony とオーケストラアレンジをしていたので、楽曲として異なるジャンルへ展開したいという魅力があるのかもしれない。
このジャズアレンジでは、インスト曲を中心に演奏されている。内容はフリージャズ的なシリアスなものではなく、原曲のメロディはそのままにラウンジっぽい方向のアレンジになっている。なのではハードなリスニングを強要することはなく、リラックスして聴けるし、それなりに楽しめる。
Demen / Nektyr(LP 米国盤 2017)
bandcampで見つけたスウェーデンのダークアンビエンス アーティストのアナログ盤の中古を偶然見つけた。深い霧の向こう側から聴こえてくる。今の時代の音楽。