記事一覧

ソーラーのインバーターと力率


この記事は、広告を含む場合があります。

2021-12-20(月)

コンセントで使う家電をソーラー発電の電気で使うには “インバーター” が必要です。

ソーラーパネルや蓄電池の電気は直流、コンセントは交流だからです。

で、直流にはなかった、交流の面倒な要素のひとつが力率 (りきりつ)です。

力率について

交流の電圧と電流は、常に変化しています。

位相

基本的には、上のグラフのように、電圧と電流が同じタイミング (これを位相 (いそう) といいます) で変化します。(書いていませんが、グラフの横軸は時間です)

が、負荷によっては、必要とする電圧と電流の位相が違うことがあります。

位相

この電圧と電流の位相のズレが大きいことを、“力率が低い (力率が悪い)” といい、ズレが小さいことを “力率が高い (力率が良い)” といいます。
下でもう少しくわしく説明します。

有効電力・無効電力・皮相 (ひそう) 電力

いきなりレベルアップ。

まずは、用語の確認です。

  • 有効電力:消費電力のこと。抵抗により発生する。単位は "W"(ワット)
  • 無効電力:コイルやコンデンサーにより発生。単位は "var"(バール)
  • 皮相電力:抵抗とコイル,コンデンサーを合わせたもの。単位は "VA"(ボルトアンペア)
  • 力率:皮相電力に占める有効電力の割合。小数や百分率で表される (単位なし)

この中で、わかりやすいのが有効電力 (消費電力) でしょう。
家電には有効電力が表示されており、電力会社から請求されるのもこれだけです。

対して、無効電力は消費されず、インバーターに帰っていく電力です。

例えば、この蛍光灯安定器なら……

安定器

電圧100Vに対して、流れる電流が0.36A、消費電力が24Wとあります。

オームの法則的には、36な雰囲気ですが、おぼろげながら24なのです。

この場合、36[VA]が皮相電力、24[W]が有効電力 (消費電力)、力率は、有効電力を皮相電力で割って0.667 (66.7%) と求まります。
で、無効電力は26.8[var]と計算されます。

つまり、蛍光灯が使うのは24Wだけなのに、36VAをあげないと光ってくれないのです。
まるで消費税ですね。無駄な税金を支払わないと売ってもらえませんから。

力率ベクトル

こういう、ベクトル図というのを書いて説明されるのですが、ここでは、上の用語が伝わればよいです。

直流と違って、単純な足し算じゃないのが交流の面倒なところです。

力率が低いと

ぶっちゃけ、コンセントの電気を使う場合は力率なんて気にする必要はないです。
力率が悪くても、電力会社に追加料金を請求されることはありません。

インバーターと安定器

しかし、インバーターで交流電力をみずから供給する場合には、力率を考える必要がでてきます。
力率や皮相電力を考えないと、インバーターは過負荷で止まってしまいます。

これは、インバーターだけでなく、発電機や変圧器,ACアダプター,UPS (無停電電源装置) も同じです。

ソーラー発電システムにおいて、力率が低いと次のような問題が起こります。

  • 出力の大きいインバーターが必要になる (高価でデカい)
  • 一次側 (直流・蓄電池) の消費電力が大きくなる
  • 二次側 (交流) の電流が大きくなり、電線での損失 (発熱) と電圧降下が大きくなる
  • ブレーカーやヒューズ,スイッチ,電線・ケーブルは、より大容量のものが必要となる

ちょっと大層ですが、ソーラーパネルを発電所、インバーターを変電所と見ることもできます。超小規模な電力網 (グリッド) なんですね。

ソーラー発電は電気を作る側なので、力率などがからんでくるのです。

力率の改善

蛍光灯の安定器やモーターなどは、コイルを利用した製品です。
コイルには、電流を電圧より遅らせる性質があります。

この逆、電流を電圧より進ませる性質を持つのが “コンデンサー” です。(つまり、ズレの方向が逆)

特に、力率を改善するために使われるものを力率改善コンデンサー (進相用コンデンサー) と呼びます。

コンデンサーをコイルと並列につなぐと、お互いの電流のズレを打ち消しあって、力率が1 (100%) に近づきます。

例えば、上の安定器の力率を1 (100%) にする場合、26.8[var]のコンデンサーを使うとよいです。

ただし、インバーターとコンデンサーの相性が悪いと、また別の問題につながることもあります。

家電の力率の目安

参考として、家電の力率の目安を書いておきます。

家電には、力率に関する法律的な規定がなく、メーカーは力率を公表していません。
ですから、目安でしかないのです。

一般的に、電気を熱に変えるタイプの家電の力率は高く、モーターや安定器を含む家電の力率は低いです。

家電 力率の目安
白熱電球,アイロン,電気こんろなど 1
(100%)
蛍光灯器具 (低力率型) 0.5〜0.7
(50〜70%)
洗濯機・冷蔵庫・掃除機など 0.6〜0.8
(60〜80%)

まとめ

力率は、直流にはない概念なので難しいです。

  • 有効電力 (ワット)・無効電力 (バール)・皮相電力 (ボルトアンペア)
  • 力率は、皮相電力に占める有効電力の割合
  • コイルとコンデンサーは無効電力を打ち消し合う (力率改善)
  • 力率が低いと、でかいインバーターや太いケーブルが必要
  • おしり

正直、オフグリッド・ソーラー発電をやる人でも、力率なんて知らないことが多いと思います。
逆に言うと、力率が理解できれば、オフグリッド・ソーラー界のプロフェッサーでしょう。

インバーター選びの参考になればうれしいです。

閲覧ありがとうございました。

訂正:
“少数→小数”
関連記事
にほんブログ村 その他生活ブログ 一人暮らし貧乏・生活苦へ

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

しゅう

Author:しゅう
1991年北海道三笠市生まれ。プロフィール

全記事表示リンク