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科学な本のご紹介: 迫力の逸品『噴火した! 火山の現場で考えたこと』

科学に佇む書斎



噴火した

科学の本高温粉体流である火砕流の規模は、構成物質の量で表現すると、10-6乗立方kmから10の3乗立方kmの範囲であるから、九桁の範囲にわたる。
 10億倍の規模の差がある現象を1つの概念で表現できるということはある意味でユニークな地学現象ではないかと考えている。

科学の本【セントヘレンズ火山】
 ある日、火砕流堆積物の表面で、突然水蒸気爆発が起きて、噴煙柱が2000mも立ち昇った。たまたまそばを飛行していたヘリパイロットが言うには、ベトナム従軍の時よりも怖い体験だったという。
 厚い火砕流堆積物に覆われてしまったトゥートル川の水が火砕流堆積物により過熟されて、水蒸気爆発を起こしたのだった。それ以後、元の河道の上を決して飛ぶなという厳命が出された。


科学の本【雲仙普賢岳】
 火砕流が襲ってから数分から10分経過した後でも、「家が爆発するように発火した」とか「家が次から次にマッチを擦るように、ボッと火がつくのが見えた」との証言から、最外側の家屋のフラッシュオーバー現象であることがよく理解される。

科学の本多くの消防士が持っているような状態と同じ程度にまで、噴火活動を特定の個人が体験するには、少なくとも一個人が1万年くらいは生きのびる必要があるのかもしれない。

科学の本日本の防災組織の中枢となる、内閣官房や内閣府の優秀な官僚たちが集まる防災の会議に、火山専門家として出席するたびに、この人たちが、官僚として火山噴火災害を個人的に体験し、その体験を生かして、災害対策に活躍できる時間の長さは、せいぜい30〜40年間であり、その後はまったくの新人に入れ替わり、一からやり直しになるのかと思うと、心配というか、それを通り越して、ある種の不思議な感覚を覚えることがある。





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『噴火した! 火山の現場で考えたこと』
 荒牧重雄
 東京大学出版会 


ゆったりとした経験の粋語りが心地よい!
著者は著名な火山学者さん、いや、著名な、どころか「火砕流」の名付け親という屹立したポジションの大先生。
リンク『 荒牧重雄 - Wikipedia 』 日本の地球科学者

本書は、出版の際に火山学徒の間で「荒牧先生の本が出る!」とどよめきが応酬されていたほどの逸品。
長年の経験と思い出語りを、今後の展望含め語ってくださる火山学者人生クロニクル本だ。

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目次より:
 ひとつの都市が消えた 火砕流序説、プレー火山の噴火
 火山研究のきっかけ 伊豆大島1950〜51年噴火
 史料と足で読み解いた博士論文 浅間火山天明三年噴火
 実験岩石学や巨大カルデラとの出会い フルブライト留学生としてアメリカヘ
 フランス気質、イギリス気質 火山をめぐるヨーロッパの国民性
 ハワイの楯状火山はなぜ上に凸か キラウエア火山1963年噴火
 月面は玄武岩か、岩塩?か アポロ11号の月面着陸
 溶岩と氷河の国アイスランド 極地での野外調査
 フランス人の大論争に巻き込まれる スフリエール火山1976年噴火
 「火砕流」と言えない? 有珠火山1977年噴火
 山体崩壊と爆風の威カ セントヘレンズ火山1980年噴火
 迅速な避難と溶岩冷却作戦 三宅島1983年噴火
 全島避難の島で 伊豆大島1986年噴火
 火砕流の恐怖、目撃者の証言 雲仙普賢岳1991年噴火
 大都市のそばの火山 イタリアの火山と防災
 ハザードマップと対策本部 有珠火山2000年噴火
 火山噴火災害対策について考える
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世界各地で噴き上がる地の熾りにアンテナを張る。
噴火直後の高温粉体の奇妙な挙動。
観測者をいとも簡単に薙ぎ払う物理現象の規模。
雲仙普賢岳の生死を分けた条件と体験の書き留め。
観測当事者ならではの絶妙な大島噴火裏話も語ってくださっている。

長大な時空スパンで蠢動する大地を見守り解き明かしていくには、ヒトの寿命はあまりにも短すぎる。
致命的な異世界体験は、ヒトの理解力など意に介さない次元でここ(此岸)にある。

個人的には有珠山で活躍した岡田先生の、火山学者人生クロニクル本もオススメなので、併読してみてね。
岡田弘●本『有珠山 火の山とともに』

有珠山 火の山とともに



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噴火した!: 火山の現場で考えたこと




→『ミニ特集:地震・火山災害研究の本 その2』
→『ミニ特集:地震・火山災害研究の本 その1』
→『ミニ特集:火山災害研究の本 その2』
→『ミニ特集:火山災害研究の本 その1』
 




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