ミニ特集:地震・火山災害研究の本 その1
『地震と噴火は必ず起こる 大変動列島に住むということ』
『地震と噴火の日本史』
『死都日本』
『きちんとわかる巨大地震』
『死都日本』
石黒耀 講談社
●火山災害小説の名作!
この本が出版されたとき、考証のすごい迫真っぷりに地学や防災方面でかなりどよめかれたんだよ。
綿毛のような浮遊火山灰の『狭蝿 さばえ』は大量の有害物質を含み、呼吸器疾患を持っている者が吸うと死にかねない。健康な者でも大量に吸うと珪肺をおこす。まさに死を呼ぶ『ハエ』なのである。
地震や富士火山噴火といった大地変を予言するように踊狂(ようきょう)現象を起こすのが、日本人という民族の不思議さである。
踊狂の終点が、日本最大の活断層・中央構造線の東端上に建てられた伊勢神宮というのは偶然にしては出来過ぎた話だ。
0.8秒後、摂氏300度を越す瘴気(しょうき)が人々を襲い、血液が沸騰し、皮膚が風船の様に膨れて破裂した。熱風が悲鳴を上げ続ける口内に侵入し、熱膨張で歯が砕け、肺胞が弾ける。
二次ラハールは、堆積火砕物が雨で流されて土石流となる現象で、噴火鎮静後も長期に渡って繰り返す傾向がある。姶良火山が二万五千年前に形成したシラス台地が、今も毎年のように土石流を起こすのが良い例である。
本当の問題は世間が、
(大火砕流とはあの程度の物だ)
と誤解してしまった点にある。
「あの程度」とはどの程度かと言うと、乗用車が宙を舞い、電柱が折れ、家が倒れて火を噴く程度である。普賢岳の火砕サージは気体温度が300度、粒子温度が600度程度のジェット粉体流で、仮に圧死しなくてもこれに巻かれると確実に熱死してしまう。
当時、日本中が震え上がったものだが、本物の「 _大_ 火砕流」とはこんなヤワなものではない。
鬼界火山は薩摩半島の先端から約50キロ南方の海中に潜む霧島火山帯の巨大カルデラ火山で、カルデラだけで東西20キロ、南北17キロある。6300年前にじょうご型の破局的噴火を起こし、このため西日本の縄文文化は一気に衰亡した。
そのあまりの評判に、漫画版も出ています。
石黒耀『死都日本』 ←九州を呑み込む巨大噴火に臨場した火山学者のサバイバル
— 科学に佇むサンクコスト 📚 🖲 🍵 (@endBooks) 2022年1月16日
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正吉良カラク『カグツチ』
(石黒耀原作のコミカライズで主人公はお子さんたち)
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火山学者の方々お墨付きの書「死都日本」。きわめてリアルに「いまの九州」が描かれています。一人でも多くの人々がこの本を読むことによって「破局的噴火」がどういうものなのかを理解し、そのうえで川内原発再稼働を論じてほしいと願ってやみません。 pic.twitter.com/nImkx2S1eE
— 黒森庵の、こんくらい。 (@konkurai) 2014, 7月 25
【火山紹介】霧島山は鹿児島と宮崎の県境にある火山群だよ。2011年に新燃岳が噴火したのを覚えている人もいるかな?実は、この火山は加久藤カルデラというカルデラの上にあるんだよ。このカルデラの噴火を題材にした「死都日本」という小説があるんだよ。とても面白いから読んでみてほしいんだよ!
— 火山たん (@volcano_tan) 2014, 9月 23
「破局噴火」がトレンドに上がっていますが、元々これは石黒耀さんの小説「死都日本」の造語。面白いのは、小説の中で「漏斗型カルデラの破局的噴火」が、マスコミや人口に膾炙する中で「破局噴火」の略称が普及していく様が描かれてること。
— 封豚 (@SealingPig) 2022年1月16日
そして、現実でも「破局噴火」の呼称が普及。#破局噴火 pic.twitter.com/IcnAfwq6Ps
『地震と噴火の日本史』
伊藤和明 岩波新書
●日本各地の火山の古今の悪行いろいろがコンパクトに読める、温故知新ロングセラー。
京都ヤバイ。
この本が出たあとにも、北海道がヤバイ、山陰ヤバイなど、いろいろ新たな研究で明らかになってきています。
各地ヤバイ。
日本書紀に「地震」と記されているのは、「なゐふる」と読んだものであろう。「なゐ」とは土地または地面のことをさす言葉で、「なゐ」が「ふる」、つまり「揺れる」ということで地震現象を表現したのである。
統計的にみれば、京都は160年に一回ぐらいの割合で、大震災に遭遇しているのである。
ところが、1830年の京都直下地震以後、現在まで170年以上も、この町は大震災に見舞われていない。
しかも京都は、戦災を免れたこともあって、老朽化した木造家屋が密集している地区が多い。市の中心部、左京区や東山区の建物の半数以上は、戦前や戦中の木造家屋であるという。
『日本書紀』に、日本最古の地震記録が載っている。允恭(いんぎょう)天皇5年7月14日の項に、「五年秋七月丙子朔己丑、地震」と記されているのである。これは、西暦416年8月23日にあたる。
【博物月報】[今日は何の日]最古の地震の日 https://t.co/yB8tlzQKeF 日本書紀によると、允恭天皇5年の今日、地震が起きた。日本の地震の最古の記述だ。実はこの時の災害対応が原因で責任者が処刑された。地震記録第1号にして、地震対応の不手際第1号というのはなんとも教訓めいている。
— 博物月報 (@hakubutu) 2019年7月14日
『きちんとわかる巨大地震』
産業技術総合研究所 白日社
●どっちかというと、これは産総研の「自分たちの仕事アピールしますよ」本。
産総研の研究者さんたちが、自分のやってることをそれぞれ紹介した寄せ書き。多彩なお題が興味深いのです。
M9クラスの地震は、20世紀に4回しか発生しておらず、それらは、チリ、アラスカ、アリューシャン、カムチャッカと、いずれも太平洋周辺の沈み込み帯で発生した。
歴史記録のない古い時代についても、液状化の痕跡が大きな地震の存在を示す証拠となる。琵琶湖北西岸からは弥生時代や縄文時代に発生した液状化現象の痕跡が多く見つかっている。
『地震と噴火は必ず起こる 大変動列島に住むということ』
巽好幸 新潮社
●「早急に首都機能を分散させるべし!」
えええそんなどうしよう!とあせっちゃうほど、わかりやすく教えてくれる。(というか、おもきし読み手を脅かしてる)
紹介ページ
『地震と噴火は必ず起こる 大変動列島に住むということ』
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