最も面白かったのは「下山国鉄総裁謀殺論」だった。
下山総裁は戦後の混乱期、行方不明になり、翌朝、常磐線線路内で轢死体として発見される。当時は国鉄職員大幅削減をめぐり、労組とのハードな折衝が続いていたこともあり、労組による謀殺説や、ノイローゼによる自殺説まで諸説入り混じり、結局捜査当局の結論は出なかった。
おもしろかったのさまざまな事件で垣間見ることのできるGHQの内幕である。GHQは一枚岩の組織ではなく、占領当初から日本を民主化することを目標においていたGS(民政局)が主導権をとっていたが、将来の対ソ戦が見えてくるとG2(参謀第2部)が主導権を握りはじめ、共産党、労組の弾圧に向かっていく。
GHQのこうしたゆらぎが増幅されて、日本の政策や社会へ大きく影響しているところが興味深い。
たぶん、占領されたイラクでも似たようなことがおきているんだろうと思う。