CEの未来を担う若者の意識
中部臨床工学会に参加してきました。テーマのひとつは「匠」、個人的にはとても好きな言葉です。人工知能や電子化が進行する現代、人間らしさがどんどん失われている気がします。経済最優先で合理化や利益至上主義の競争原理で、人間自身が自分で自分の首を絞めている気配を感じます。「匠」は人間らしい技術と感性の結晶であり、下積みから修行を重ねて到達する簡単には真似できない、至極の世界だと思っています。だからこそ価値があり、憧れがあり、夢があり、その世界を目指すことに大きな意味と感動が得られるものだと思います。臨床工学技士は臨床工学”わざ士”ですから、匠の域に目指すにふさわしい職種であり、今回のテーマ設定は素晴らしいと感じました。
この学術大会の「呼吸器の匠」のセッション終盤で、ある若者から質問がありました。
「僕は呼吸器が嫌いです。どうすれば好きになれるか教えてください」
「匠」の域を極めるセッションです。あまりの低次元の質問に会場には異様な空気が漂い、すっかりその場はシラケてしまいました。壇上の演者はそれなりに回答を返していましたが、とても「匠」をテーマとした社会人の学術大会で取り上げる話題だとは思えません。幼稚園や小学校レベルの生徒が「先生~ボクわかりませ~ん」のレベルです。これが今の若い臨床工学技士の現実です。
ここまで危機感が欠如している要因は、敗戦、平和、ゆとり、豊かさ、教育、認知度、養成校の偏差値、啓発不足、時代・・・数々考えられますが、彼らを責めるのは間違いだと思います。なぜならそのような彼らを育てたのは我々大人なのですら。実際に危機感がない世の中で、危機感を持てと言っても、所詮無理な話なのかもしれません。でも絶対に言えることは、このままでは確実に臨床工学技士の未来はありません。(日本の未来も危ういかも・・・)。戦争の悲惨さを後世にしっかり伝えるように、辛抱強く、根気強く、我慢強く、彼らの未来を憂うなら、試されているのは大人の方だとも言えると思います。
他のセッションでは「管理職vs一般職」のワークショップもありました。そのセッションでも意欲が欠如している若者に、どうすれば火をつけることができるかが主な話題となりました。さらに、会場外で行われる各都道府県の首脳井戸端会議においても、多くの話題は若者の意欲と危機感の欠如です。さて困ったどうすれば・・・・・。
今年に入って、全国の臨床工学会で組織化が話題となるようになりました。これは連盟の創設が引き金となったと言っても良いと思います。しかし、組織化や連盟をテーマとした会場はほぼ閑古鳥が鳴いています。講演も若者に対して危機感や叱咤激励をする内容となっているのですが、参加者は熟年の方ばかり。首脳陣の意識が徐々に変化して、若者への啓発と意識付けを働きかけているにも関わらず、若者との意識解離は非常に大きなものがあります。そもそも参加のきっかけとなっているのは、自主参加では無く、上司から課題を与えられたからに過ぎないのではないのでしょうか。自主的に組織や連盟について真剣に考えるところまで至るには、相当長く険しい道のりが待っています。
自分自身で創造して行動することが感動を呼び起こし、さらに意欲につながってゆく好循環を実体験して頂かなければなりません。何事においても遊びの無い成熟した世の中になってしまったので、叱咤激励という昔ながらの手法ではなく、暗にそうなってしまったという、無意識のプログラミングが必要だと思います。マニュアルに沿ってやっていたら知らない間に感動が得られた!意欲が生まれた!建設的な発想ができる人間になった!そのプログラムをを構築し検討し実践するのは、若者ではなく我々大人であり、本当に行動を起こすべきは我々大人自身なのかもしれません。
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