不動産小口化投資商品「みんなで大家さん」運営元への行政処分を受け、処分が公表された6月17日の午後5時から24時間で、投資家470人あまりから解約の申し入れがあったことがわかった。期間中、一連のファンドに対する解約請求の総額は28億円以上になった。
みんなで大家さんは、不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて組成された、個人投資家向けの不動産ファンド。いずれも共生バンクグループに属する、都市綜研インベストファンド(本社:大阪市)と「みんなで大家さん販売」(本社:千代田区、以下・販売会社)が運営している。
主力の「シリーズ成田」は、成田空港近くで計画される複合開発プロジェクト「GATEWAY NARITA」の用地、45万m2強の一部を対象とする金融商品で、想定利回り年7.0%、運用期間5年、出資金1口あたり100万円という条件で募集された。2020年11月に第1号の募集が開始されて以降、2024年2月の第18号まで、募集総額は累計約1973億円に上る。
今回、行政処分のきっかけとなったのは、これらのうち2023年秋に運用を開始した「シリーズ成田16号」だ。大阪府と東京都は2024年6月17日、都市綜研と販売会社にそれぞれ行政処分を発表。都市綜研には翌18日から、また販売会社には同月21日から各30日間の一部業務停止を命じた。
処分の理由は不特法違反。具体的には、(1)建設計画の大幅な変更に伴う資産価値や収益性への影響を投資家に十分説明をしなかった、(2)本来は開発許可の対象ではない土地を誤って書類に記載し、この情報を基に勧誘や契約を実施した、(3)造成工事完了後の形状や構造を記載すべきところ、完了前の形状を記載していた、などが理由だ。
他方、販売会社は東京都を相手取り、6月18日付で東京地裁に業務停止処分の取り消しを求める裁判を起こしている。冒頭に挙げた解約申し込みの状況が明らかになったのは、同20日、地裁による通知が、販売会社のウェブサイトに掲載されたことによる。販売会社は、21日に予定された行政処分の執行停止を求めており、地裁はその主張の一部を認めて、処分の開始を上記裁判の一審判決の後までいったん延期した。都市綜研も大阪府に対し、大阪地裁で同様の申立を行っているもようだ。
なお、都市綜研に対する行政処分は2012年、2013年に続き3度目。今回の処分に関し、同社は当日「今後の事業計画等に与える影響はない」としたが、翌18日には解約請求の多発を受け、その受付を一時的に停止する措置を発表した。6月21日午後の時点では、公式ウェブサイトに解約申し込み受付フォームが新設されている。
<追加情報:2024年6月25日>
みんなで大家さんの公式サイトが掲載した、大阪地裁の通知を下記リンクに追加した。また、その情報に基づいて、冒頭の投資家数など本文中の数字を更新している。