トキ・アートスペースの高橋理加展を見る

 東京神宮前のトキ・アートスペースで高橋理加展が開かれている(1月19日まで)。高橋理加は1963 年東京生まれ、多摩美術大学絵画科を卒業している。トキ・アートスペースでの個展は2年ぶりになる。ギャラリーのホームページに高橋のコメントが載っている。

 

死者からの視線について~le regard~

 

 よく地方の旧家、古民家などで仏間の鴨居にご先祖の写真が並んでいるのを見かける。不用意にその場所に踏み込むと、何か場違いなところに来てしまったような居心地の悪さを感じる。名前も知らない昔の、といっても写真なのだからせいぜい明治以降だと思うが、彼らの見下ろす視線に「何者? 何しに来た? 何をしている?」と問いかけられているような心持ちになるのだ。

 今回のインスタレーションに使用したのは、主に戦前に撮られた古い写真である。ある人は戦地で亡くなり、ある人は内地で戦火に焼かれ、また生き残って人生を全うした人もいる。全て死者たちである。今私たちに近しい霊魂は無く、死者からの声も遠く届かず、切り離された茫漠たる自由の中で何かを選び取って行かなければならない。自分は彼らの”まなざし”にさらされる不安を乗り越え、見返すことができるのか。

 正月は冥土の旅の一里塚。年の初めに死者とともに今を考えてみたい。

 


 いつものように紙で作られた子供の立体像が並んでいる。その立体像は手に肖像写真を持っている。それらの服装から、戦前の肖像写真のようだ。軍帽をかぶっている者もいる。数年後には皆軍隊に入隊したり、女性たちは厳しい銃後を守ったりしたのだろう。ロシアの詩人ブロークの詩を思い出す。「子供たちよ、もしお前たちが来るべき辛い苦しい日々を知っていたら」。

 壁面に並べられているのは「死者からの視線」なのか。「年の初めに死者とともに今を考えてみたい」と高橋が言っている。

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高橋理加展

2025年1月7日(火)-1月19日(日)

12:00-19:00(日曜日17:00まで)13日(月)休み

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トキ・アートスペース

東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F

電話03-3479-0332

http://tokiart.life.coocan.jp/

※東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口より徒歩約5分