2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

飯田市の赤門

赤門といえば本郷東大の赤門を誰も思い浮かべる。しかし長野県飯田市にも赤門がある。飯田市の赤門は長姫城櫻丸の後門とのこと。市は長姫城趾唯一の遺構であるこの赤門を保存して碑を建てている。その碑から。 赤門は長姫城櫻丸の門で、宝暦4年4月(1754年…

山本弘のエッセイ「自分と絵画」

山本弘のエッセイ「自分と絵画」を全編掲載する。飯田美術協議会の機関誌「飯美協」No.1(昭和35年5月発行)に掲載されたものだ。末尾に「60.3.16」の日付があるから30歳のときだ。 「自 分 と 絵 画」 という題で何か書いてくれ、という。題を指名されて3…

スリリングな書「音楽のアマチュア」

四方田犬彦「音楽のアマチュア」(朝日新聞出版)を読んだ。著者は映画に関するプロだ。映画はほとんど試写会で見ている。それも時にはたった一人、四方田のためだけの試写会で見ることもある。若い頃は年間400本の映画を見た。最近は200本だ。大学で映画を…

小原泫祐遺作展

長野県飯田市の飯田市美術博物館市民ギャラリーで「展 今、小原絵画との交錯」という展覧会が開かれている(8月28日午後3時まで)。 これは一昨年83歳で亡くなった小原�忍祐の遺作21点と、40年ほど前に小原さんが飯田市で開いていた絵画塾で学んだ60歳前後…

誰が考えているのか?

娘と八百屋へ野菜の買出しに行った。ニラの前に立ち止まった娘が、ニラ買う? と聞いてきた。うん買おう、食べたいというと、いつも父さんニラ嫌いだっていうのにどうしたのと言う。その日はなぜかニラが食べたかった。 疲れたときは甘いものが食べたい、汗…

大和田俊之「アメリカ音楽史」がおもしろい

大和田俊之「アメリカ音楽史」がとてもおもしろかった。具体的にはポピュラー音楽史。取り上げられているのは、ミンストレル・ショウ、ブルース、カントリー、スウィング・ジャズ、モダン・ジャズ、リズム&ブルースとロックンロール、ロック/ポップス、ソ…

あの時代に会いに行こう。

東武鉄道の駅に会津のポスターが貼ってある。1枚は農道に初老の男がステッキを持って立っている。もう1枚は同じ男が向こう向きに歩いている。そのコピーを拾ってみる。 あの時代に、会いに行こう。 初めて来たときから、懐かしい感じがしました。 昔の風景…

藍画廊の亀山尚子展

東京銀座の藍画廊で亀山尚子展が始まった(9月3日まで)。今年の5月にも山梨県石和のiGallery DCで個展を行ったが、今回はその時の作品の一部に新作を加えて発表している。亀山尚子は1970年静岡県生まれ、1995年に武蔵野美術大学大学院を修了している。大…

街で見つけた面白商品

銀座の酒屋にこんな商品が置いてあった。本物の魚肉ソーセージで、酒のつまみにする客がいるのだろう。何が面白いのかと聞いてくださるな。 「ホモ」という商品名は、よく牛乳のパッケージに書かれる英語のhomogenized(均質化された)に由来するのだそうだ…

「ゴダールと女たち」を読む

四方田犬彦「ゴダールと女たち」(講談社現代新書)を読む。読み始めてすぐ、私たちは幸福な本に出会うことができたと感じた。ゴダール論であり、そのゴダールの映画に主演した女優でゴダールと深く関係した5人を取り上げた女優論でもある。その5人は、ジ…

INAXギャラリーの石田真也の祭壇

東京京橋のINAXギャラリー2で石田真也展「ワンダフルトラッシュ」が開かれている(8月29日まで)。石田は1984年和歌山生まれ、2007年に大阪成蹊大学芸術学部美術工芸学科テキスタイルコースを卒業している。関西を中心に何度もグループ展で発表してきたが個…

吉田秋生の「海街diary4 帰れない ふたり」を読む

吉田秋生の「海街diary」の待望の4巻が出た。「帰れない ふたり」(小学館)だ。以前にも書いたが、これは吉田秋生の「BANANA FISH」とか「YASHA−夜叉−」のようなヒーローものから家族をテーマにした青春ものへの回帰だ。4巻に記された「あらすじ」から、 …

「ギャラリー椿オークション2011」が始まる

明日8月20日から京橋のギャラリー椿でオークションが始まる(8月22日まで)。 オークションは8月20日(土)、21日(日)、22日(月)の3日間。誰でも自由に入札できる。出品点数が400点以上も予定されている。銀座でも特に大きなギャラリーだが壁面はぎ…

取引先の部長のペットの犬が死んだとき

得意先の部長がペットの犬を可愛いがっていた。最初に部長に会ったころ、○○ちゃんが、○○ちゃんが、と何度も言うので、子供のことかと思ったらそれがペットの犬だった。帰宅しても玄関に迎えに来てくれるのは○○ちゃんだけだよ、奥さんや娘なんて出てこないん…

松屋銀座の「ルパン三世展」を見る〜黒テントのこと〜ル・カレ

松屋銀座の「ルパン三世展」を見た(8月22日まで)。「ルパン三世」はモンキー・パンチによって1967年『漫画アクション』に連載マンガとして始まった。その後1971年にアニメ化される。本展ではマンガの原画、アニメの設定画、セル画、フィギュア、秘蔵資料…

金井美恵子「目白雑録4 日々のあれこれ」を読む

金井美恵子が朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」に連載しているエッセイをまとめた「目白雑録4 日々のあれこれ」(朝日新聞出版)を読む。「目白雑録」の4巻目だ。今回なぜかいつもの辛口毒舌がトーンダウンしているように思う。2009年4月号から2011年3月号…

損保ジャパン東郷青児美術館の「GLOBAL NEW ART」を見て

損保ジャパン東郷青児美術館の「GLOBAL NEW ART」を見た(8月31日まで)。「タグチ・アートコレクション」という副題で、現代美術の平面作品が並んでいる。タグチというのはミスミの元社長、現在エムアウトの社長田口弘氏のことで、個人コレクションらしい…

磯江毅展を見てその巧さに舌を巻く

練馬区立美術館で磯江毅展を見る(10月2日まで)。スーパーリアリズム、あまりの巧さに舌を巻く。磯江は1954年大阪生まれ、大阪市立工芸高校を卒業後、まもなく単身でスペインへ渡り、30年以上スペインで活躍したという。 裸婦と静物が見事だ。ほとんどの作…

「大鹿村騒動記」を見て

映画「大鹿村騒動記」を見た。主演の原田芳雄が先日急死し、それが話題になったのかヒットしているという。だが派手な映画ではない。 大鹿村は長野県の南部に実在する山村だ。岩塩が採れ鹿が舐めに来るとかでこの名がある。日に何本かのバスが走っているくら…

東京が3月15日に被爆した?

先日、現代美術画廊会議主催のシンポジウム「3.11以降のアートとアトム」が開かれた折り、パネラーの一人で武蔵野美術大学教授(名を失念)が言われた「東京は3月15日に被爆しました」という発言が気になっていた。それが、8月11日付け朝日新聞朝刊に、ほ…

江成常夫の戦跡の写真展と太田三郎展

東京都写真美術館で江成常夫写真展「昭和史のかたち」が開かれている(9月25日まで)。太平洋戦争に関連した写真展で、これがとても感動的だった。いくつかのテーマで展示されている。 まず「鬼哭の島」として、戦場となっていた太平洋の島々の戦跡を撮って…

テレビのお笑い番組やバラエティ番組への異議

太宰治「人間失格」に有名な次のシーンがある。 その日、体操の時間に、その生徒(姓はいま記憶していませんが、名は竹一といったかと覚えています)その竹一は、れいに依って見学、自分たちは鉄棒の練習をさせられていました。自分は、わざと出来るだけ厳粛…

安部公房の苛立ち

安部ねり「安部公房伝」(新潮社)より、元アサヒカメラ編集者の丹野清和へのインタビューから。 僕(丹野)が「アサヒカメラ」を移って(安部公房に)お会いしなくなって、10年ぐらい経ってから、「朝日ジャーナル」で中上健次の連載やったんです、『奇蹟』…

「ふしぎなキリスト教」がおもしろかった

橋爪大三郎×大澤真幸「ふしぎなキリスト教」(講談社現代新書)がおもしろかった。キリスト教をめぐる二人の社会学者の対談だ。「まえがき」で大澤は、「われわれの社会」とは「近代社会」であり、近代というのは西洋的な社会というものがグローバル・スタン…

東電OL殺人事件の受刑者ゴビンダ氏の強さ

東電OL殺人事件でネパール人のゴビンダ・プラサド・ゴビンダ受刑者(44歳)が有罪とされ無期懲役が確定している。先日新たな証拠が見つかり、再審請求がされている。「東電OL殺人事件」(新潮文庫)を書いた佐野眞一が婦人公論にエッセイを書いている(2011…

日本橋のヨウシュヤマゴボウ

東京の真ん中日本橋の交差点脇にヨウシュヤマゴボウが実をつけている。草丈150cmくらい、花は地味だが実は山ブドウに似ているかもしれない。 名前から誤解されるが漬け物にするヤマゴボウとは縁が薄い。こちらのヤマゴボウは正式にはモリアザミで、キク科の…

大沢在昌「新宿鮫」を読んだ

大沢在昌の新宿鮫シリーズの最新作「緋回廊 新宿鮫X」(光文社)について、毎日新聞の書評で丸谷才一がほとんど絶賛している(2011年7月17日)。 戦後の日本は多くのすぐれた娯楽読物を持ったけれど、シリーズものの主人公として、新宿鮫はあの剣豪眠狂四郎…

六本木のShonandai My Galleryの「川本紀子展−金魚のフンになりたい−」が良い

六本木のShonandai My Galleryで「川本紀子展−金魚のフンになりたい−」が開かれている(8月8日まで)。川本は1980年大阪府生まれ、はじめ大阪工業大学短期学部建築科で学び、その後ハワイ州立大学マノア校芸術学部美術科ファイバーアート専攻を卒業し、さ…

文春新書「弔辞」から見えるもの

文藝春秋編「弔辞」(文春新書)を読む。副題が「劇的な人生を送る言葉」。本書は月刊「文藝春秋」2001年2月号、2011年1月号に掲載された「弔辞」から50人分を収録したもの。弔辞をまとめたものは20年以上前に中公新書で刊行されたものに始まり、今まで何…

丸谷才一「樹液そして果実」を読む

丸谷才一の新刊「樹液そして果実」(集英社)を読んだ。久しぶりの文学評論集という。冒頭に長めのジェームズ・ジョイス論が2篇並んでいる。ひとつは「若き芸術家の肖像」論、もうひとつが「ユリシーズ」を中心にしたものだった。どちらも私には難しくて読…