東京スカイツリー(2010年2月6日取材)


東京スカイツリーを見上げる

2010年2月6日取材の最後は東京都墨田区で現在建設中の「東京スカイツリー」です。
※写真は特記以外2010年2月6日撮影。

■東京スカイツリーの建設の経緯と概要

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今更説明するまでもありませんが、東京スカイツリーは2011年に完全移行※1が予定されている地上デジタルテレビジョンの送信用電波塔として建設が進められているものです。
現在テレビの地上波放送はアナログ・デジタルともに港区にある東京タワーから送信されていますが、近年東京区部では高さが200mを超える高層ビルが多数建設されており、送信アンテナの高さが300m前後の東京タワーではこれらのビルで電波がさえぎられ受信障害が多発するようになっています。このため、東京タワーの2倍の高さとなる600m級の電波塔の必要性が唱えられるようになり※2、2003(平成15)年12月に在京テレビ局6社(NHK+民法5局)により「在京6社新タワー推進プロジェクト」が設立され、新宿区やさいたま市など様々な候補地が検討されてきました。その結果、2006(平成18)年3月31日に新タワーの建設地を東京都墨田区の業平橋・押上地区とすることが決定されました。

押上駅から急こう配を登り曳舟駅に進入する半蔵門線8000系電車。東京スカイツリーの建設地はこの電車最後尾のさらに奥である。着工前の状況を一切撮影していないことが悔やまれる。2007年2月17日撮影
押上駅から急こう配を登り曳舟駅に進入する半蔵門線8000系電車。東京スカイツリーの建設地はこの電車最後尾のさらに奥である。着工前の状況を一切撮影していないことが悔やまれる。2007年2月17日撮影

新タワーは東武伊勢崎線業平橋駅南側の東武鉄道が所有する敷地に建設されています。(このため、事業主体も東武鉄道となっている。)この場所はかつて東武伊勢崎線の朝ラッシュ時専用ホーム※3が置かれていた場所で、2003(平成15)年の地下鉄半蔵門線直通後は使用する列車が無くなりホームが撤去され遊休地化していました。
工事は建設地が決定した直後の2006(平成18)年夏から開始され、まず国内では未知の領域となる高さ600mのタワーの建設に適した土地であるかを評価するため深さ130mに及ぶボーリング調査上空の気流の観測などが行われました。その後、模型によるタワーの構造の検討を行い、2007(平成19)年からは基礎工事など本格的な工事が開始されました。新タワーの基礎は地下35mの洪積砂礫層(東京礫層)まで打ち込まれており、樹木の根のような多数枝分かれした杭や杭先端の突起により常時作用するタワーの重量と地震や強風時に作用する引き抜き力の双方に耐えうる構造となっています。
なお、2007年10月には新タワーの名称の公募が行われその後行われた投票の結果、2008(平成20)年6月にタワーの名称が「東京スカイツリー」に決定しました。

2009年11月3日にアパホテル&リゾート東京ベイ幕張から撮影した建設中の東京スカイツリー(この時点の高さは189m)
2009年11月3日にアパホテル&リゾート東京ベイ幕張から撮影した建設中の東京スカイツリー(この時点の高さは189m)

そして、2009(平成21)年からはいよいよタワー本体の鉄骨を組み上げる工事に入りました。タワーの構造体をなす鉄骨は通常の建築物で使用される者の2倍の強度を持っており、この鉄骨を強固に溶接することでタワーの構造を構成しています。また、タワー内には鉄筋コンクリートでできた直径8mの「心柱」と呼ばれる円筒が貫いており、この心柱にオイルダンパを介してタワーの鉄骨を接続することで地震や強風時の制振性も確保しています。この技術は日本の伝統建築である五重塔を参考にしたものです。タワー鉄骨の組み立てはタワー最上部に設置したクレーンで部材を釣り上げる原始的な方法を用いて行われており、早い時で1週間に10mのペースで進んでいます。2009年の秋にはタワーの高さが早くも200mを突破し、東京都内のみならず東京湾を挟んだ対岸の神奈川県や千葉県からでもその姿を肉眼で確認できるようになりました。ちなみに、上の写真は昨年11月の当ブログ更新再開の記事を飾った東京スカイツリーの遠望写真で、千葉市美浜区のアパホテル&リゾート東京ベイ幕張の49階にあるレストランから撮影したものです。
なお、この前月にはそれまで610mとされてきたタワーの高さが634mに変更されました。この数字は自立式電波塔としては世界一の高さとなります。(建築物としての世界一はドバイに建設中の「ブルジュ・ハリファ」(旧称:ブルジュ・ドバイ、高さ828m)で、東京スカイツリーはそれに次ぐ2位となる。)

▼脚注
※1:東京スカイツリーの完成(電波の発射開始)は2011年12月となっている。したがって2011年7月に予定されている地上デジタル放送の完全移行には寸分の差で間に合わない。このため、地上デジタル放送をスカイツリーから受信するには2011年12月以降に改めてアンテナの改修(向きの変更など)を行う必要がある。しかし、このことは地上デジタル放送のPRにおいて極めて大きなマイナスポイントとなるため、全く触れられていない。
※2:特に地上デジタルテレビ放送のようなデジタル変調では電波の品質がある閾値を下回る(誤り訂正能力を超える)と全く受信できなくなるため、受信障害の軽減はサービス拡充のため極めて重要な課題となる。
※3:東武浅草駅は建設が古く設備が狭小なため、最大でも8両編成までしか入線できない。そのため朝ラッシュ時は業平橋駅南側の専用ホームで10両編成の列車が折り返しを行っていた。

■“工事現場が観光地に”2010年2月6日の建設地
脇で東京スカイツリーの建設が進む業平橋駅と通過する200系特急「りょうもう」
脇で東京スカイツリーの建設が進む業平橋駅と通過する200系特急「りょうもう」
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この東京スカイツリー建設地を去る2010年2月6日に訪問してきました。まず降りたのは建設地の脇を通る東武伊勢崎線の業平橋駅です。この日の時点での東京スカイツリーの高さは289mで、このとき持っていたコンパクトデジカメでは広角側の撮影領域が狭い(35mmフィルム換算で最小28mmまで)ため、駅のホーム上からでは塔体のすべてを撮影することができませんでした。

建設地を囲む柵に掲示された完成予想パースと建築計画
建設地を囲む柵に掲示された完成予想パースと建築計画

業平橋駅前はほとんどが東京スカイツリーの工事用地となっており、一面が高い柵で覆われています。この柵には東京スカイツリーの完成予想パースや建築計画に関する掲示のほか、住宅地が近接している下町特有の事情を考慮して至る所に今週1週間分の作業予定が掲示されていました。

北十間川に架かる東武橋から見たスカイツリーとそれを撮影する人々 京成橋の脇からスカイツリー全体を見上げる
左:北十間川に架かる東武橋から見たスカイツリーとそれを撮影する人々
右:京成橋の脇からスカイツリー全体を見上げる

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スカイツリー建設地の南側には北十間川が流れており、こちら側は工事現場が公道に面していないため柵が設置されておらず工事の様子をよく見ることができます。このため、北十間川の業平橋駅側に架かる東武橋※4と押上駅側に架かる京成橋※4はともにスカイツリーを撮影しようという人で連日大混雑となっています。なお、この北十間川はスカイツリー建設に合わせてタワーと水辺の間に連続性を持たせた公園として整備されることになっており、現在は護岸の改修工事が行われています。

京成橋から見た北十間川。護岸の改修工事が行われている。 北十間川の対岸から眺めたスカイツリーの足元
左:京成橋から見た北十間川。護岸の改修工事が行われている。
右:北十間川の対岸から眺めたスカイツリーの足元

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タワーとは対岸の北十間川沿いは公道となっており、作業が進むタワーの足元を間近に見ることができます。タワーの低層部分は港区の東京タワーと同様商業施設になる予定となっており、東京スカイツリー公式ページのライティングデザインのページなどで示されている通り、タワーの骨組みは建物の中に隠れてしまうことになります。樹木の幹の如く多数に枝分かれした巨大な鉄骨群を見ることができるのも今のうちだけです。

去る2010年3月29日、東京スカイツリーの高さが338mとなり、東京タワーを抜いて日本一高い建築物となりました。これにともない、スカイツリー周辺を訪れる観光客も激増しているようです。しかし、タワー付近を通る浅草通りなどではタワーに注目しすぎて通行する自転車にぶつかりそうになるなどのトラブルが頻発しているとの報道が行われています。これから現地を訪問される方はくれぐれも交通ルールなど安全に気をつけ、混雑している場所では譲りあって撮影などを行われるよう願うところです。

▼脚注
※4:いずれの橋も東武鉄道・京成電鉄の本社が至近にあることからそのような名称となった。なお、京成電鉄は2013(平成25)年をめどに本社を千葉県市川市(本八幡駅前の再開発地)に移転する意向を示しており、創業の地である押上を去る日も近い。

▼参考
TOKYO SKY TREE(公式Web)
東京スカイツリー建設プロジェクト-GO!GO! TOKYO SKY TREE by OBAYASHI
日建設計 東京スカイツリー設計プロジェクト
ほぼ日刊イトイ新聞 - 東京スカイツリー うんちく50
北十間川水辺活用構想 墨田区公式ウェブサイト
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