まもなくオープン!東京スカイツリー(2010~2011年取材まとめ)
公開日:2012年01月04日18:17
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2012年の記念すべき第1記事は来る5月22日のグランドオープンが決定した東京スカイツリーです。今回は前回取材後から継続して記録してきたスカイツリーの建設状況などをまとめてお伝えいたします。
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東京スカイツリー(2010年2月6日取材)(2010年3月31日作成)
■東京スカイツリーの概要
高層ビルに囲まれて建つ現在の東京タワー。2008年2月14日、聖路加ガーデン展望室(現在は閉鎖)より。
2011(平成23)年7月24日、我が国の地上波テレビジョン放送は58年間に及んだアナログ方式からデジタル方式へ完全移行しました。(東日本大震災で被害が大きかった福島・宮城・岩手の3県を除く)これまで首都圏の地上アナログ放送の送信には東京タワーが使用されていましたが、近年東京都内を中心に高さが200mを超えるような高層ビルが多数建設されており、高さ333mの東京タワーではアンテナの高さが不足し、電波障害が多発するようになっています。このため、高さ600m級の新しい送信タワ―が求められるようになり、在京放送事業6社(NHKと民放キー局)で組織した「在京6社新タワー推進プロジェクト」がタワーの建設候補地について検討しました。この検討の中で、墨田区と地元関係者は進行中の土地区画整理事業の一環としてタワーを誘致しようと敷地を持つ東武鉄道に働きかけ、2005(平成17)年2月に誘致が決定されました。そして、翌2006(平成18)年3月には新タワーの建設地が東京都墨田区の業平橋・押上地区に決定しました。
新しいタワーは東武伊勢崎線業平橋駅と都営浅草線押上駅に挟まれた東武鉄道貨物駅の跡地に建設されます。タワーを中心とする区画整理地区(Rising Eastプロジェクト)の面積は計6.4haで、この中にはタワーの他に約4千平方メートルの交通広場、公園、緑地などが整備されるほか、南側を通る北十間川には歩行者用デッキや親水テラスなどが合わせて整備される計画とされました。また、タワーの周囲、業平橋駅から押上駅の間の3.69haに延べ床面積約23万平方メートルの商業施設(東京スカイツリータウン)が付属して建設されることになりました。
■スカイツリー「成長」の記録
1、設計
東京スカイツリーは国内では前例のない600m超の高さとなるため、2006年の建設決定後は現地にて地盤強度や上空の気流の綿密な調査が行われ、並行して模型によるタワーの構造の検討などが行われました。東京スカイツリーはテレビの電波の送信所という性格から、大規模災害時でも機能を停止することは決して許されません。このため、タワーの設計にあたっては建築基準法で規定されている最大規模の地震に対しても一切損壊が無いばかりでなく、未知の活断層による想定外の直下型・長周期地震やタワー頭頂部における最大瞬間風速100m/sを超えるような暴風でも倒壊しない強度を有することとされました。
なお、この設計期間中に新タワーの愛称が公募され、2008(平成22)年6月に「東京スカイツリー」に決定しました。
2、着工
2008年7月にはいよいよタワー本体の工事が開始されました。タワーの基礎は地下35mの洪積砂礫層を支持層としており、基礎本体は深さ35mの場所打ち杭131本と厚さ1.2m、深さ50mの鉄筋コンクリート製地中連続壁から構成されています。地中連続壁の周りにはとげ状の突起を多数設けられており、タワーの上部に作用する風圧や地震動による引き抜き力に対して強力に抵抗するようになっています。
左:タワーが遠方からでも確認できるようになった頃(高さ189m)。2009年11月3日、アパホテル&リゾート東京ベイ幕張より撮影
右:今は建物に隠れて見えなくなったタワー下層部分。2010年2月6日撮影
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京成橋の脇からスカイツリー全体を見上げる(高さ289m)。2010年2月6日撮影 ※クリックで拡大
その後、2009(平成21)年4月からはタワーの鉄骨の組み上げに着手しました。タワー本体はは横浜ランドマークタワーなどでも実績がある高強度鋼(材料強度:500N/mm2、通常の建築物で使われる物の約2倍)を使用した鋼管を強固に溶接して構成されており、上にいくにつれて三角形から円形に変化する断面となっています。鉄骨表面は白色のフッ素樹脂塗装が施されており、塗り替え間隔は20年を予定しています。また、この鉄骨の骨組みの中心には375mの高さまで「心柱」と呼ばれる鉄筋コンクリート製の円筒が貫通しています。この円筒とタワーの骨組みはオイルダンパで接続されており、それぞれ異なる固有振動数を持つことから地震時は相互に揺れを打ち消し、タワーの変形を抑制します。タワー完成時、この心柱の内部はエレベータシャフトとして利用される予定です。
なお、着工当初タワーの高さはそれまで暫定的に610mとされていましたが、2009年10月に634mに正式に決定しました。この634mは自立式電波塔としては世界最大(建築物としてはドバイのブルジュ・ハリファ:高さ828mに次ぐ第2位)となるもので、首都圏西部の旧国名である「武蔵(むさし)」にちなんだものでもあります。
左:第1展望台までが完成したところ(高さ418m)。2010年8月11日、総武線錦糸町駅より撮影
右:塔本体がほぼ完成したところ(高さ497m)。2010年11月21日、総武線両国駅付近の車内より撮影
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タワー本体の建設は順調に進み、2010年の夏には第1展望台までがほぼ完成しました。第1展望台の高さは地上350mで、3層構造になっており、1層目は床面を一部ガラス張りにした展望スペース(地上への帰還ロビー)、2層目はレストラン、3層目は展望スペース(地上からの到着ロビー)と第2展望台へ続くエレベータへの乗り換え階となっています。なお、この第1展望台と地上4階の出発ロビーの間は40人乗り・最高速度600m/minの高速エレベータ4機で接続されます。
この第1展望台までの部分はタワーの頂上に設置された3機のクレーンを使用して組み立てが行われましたが、ここから上は1機のクレーンで部材を引き上げるのは困難であるため、第1展望台を中継基地とし、そこから上の部分は2機の別のクレーンを使用して組み立てが行われました。そして、2010年秋になると早くも第2展望台付近までの鉄骨の組み立てが完了しました。第2展望台は高さが地上450mで、2層構造となっており、外側にはスパイラルチューブ状の空中回廊が設けられ、眼下に広がる町並みを余すところ無く楽しむことができるようになります。
3、ゲイン塔の建設
第2展望台のすぐ上、地上495mから上は地上デジタルテレビ放送の送信アンテナを取り付ける「ゲイン塔」という部分になります。このゲイン塔はこれまでのようにクレーンで部品を1つ1つ吊り上げながら組み立てていくのではなく、塔内部であらかじめ組み立てておき、それをリフトアップさせるという建設方法がとられました。ゲイン塔は6本の鋼管が組み合わさってできており、鋼管の材料強度は国内の建築物で最高の700N/mm2を誇ります。また、このゲイン塔の頂部には25トン・40トンの制震装置(Tuned Mass Damper:TMD)が組み込まれており、ゲイン塔の揺れを最大で30%抑制します。
ゲイン塔のリフトアップは2010年末頃より開始されましたが、途中ゲイン塔全体が回転するという予期しない事態が発生し、工事関係者を悩ませたことは、昨年10月に放送されたNHKスペシャル「東京スカイツリー 世界最難関への挑戦」で語られておりおぼえていらっしゃる方も多いことでしょう。最終的には回転防止の仮のストッパーを設けることにより、ゲイン塔のリフトアップはそのまま継続されました。
ゲイン塔のリフトアップは2010年末頃より開始されましたが、途中ゲイン塔全体が回転するという予期しない事態が発生し、工事関係者を悩ませたことは、昨年10月に放送されたNHKスペシャル「東京スカイツリー 世界最難関への挑戦」で語られておりおぼえていらっしゃる方も多いことでしょう。最終的には回転防止の仮のストッパーを設けることにより、ゲイン塔のリフトアップはそのまま継続されました。
ゲイン塔の引き上げ真っ最中(高さ610m)。東日本大震災はこの写真を撮影した翌日に発生した。2011年3月10日、京葉線新木場駅より撮影
こうして、まもなく完成と思われた矢先に発生したのが、あの東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)でした。しかし、観測史上最大規模のマグニチュード9.0という巨大地震にもかかわらず、この東京スカイツリーでは作業員の怪我は一切無く、塔本体も全くの無傷であり図らずもその安全性を立証してしまったのでした。数日間の中断のあと、工事は再開され3月18日13時34分、めでたくゲイン塔の634mまでのリフトアップが完了しました。
4、2011年11月26日の状況
タワーが完成時の高さである634mに達してから半年以上経過したということで、昨年11月末に現地に赴いてまいりました。
左:地下鉄押上駅構内で始まった東京スカイツリータウン連絡通路の工事。
右:仮設壁に掲げられていた図。
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東京スカイツリーを取り巻く商業施設「東京スカイツリータウン」の直下に位置する都営浅草線・東京メトロ半蔵門線押上駅では東京スカイツリータウンに直結する連絡通路の新設工事が始まっていました。連絡通路は半蔵門線の改札口前にあった駅事務室を移転した跡に新設されることになっており、今回訪問時はすでに改札口は移転し、通路の接続部分は仮囲いで覆われた状態となっていました。
東方、西十間橋から東京スカイツリーを望む。手前に重なるのが「東京スカイツリーイーストタワー」。
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タワー本体の工事がほぼ完了したことから、東京スカイツリーの周囲では東京スカイツリータウンの建物の建設が急ピッチで進められています。この東京スカイツリータウンは「東京ソラマチ」と「東京スカイツリーイーストタワー」の2つの施設から構成されています。このうち、「東京ソラマチ」は地下3階、地上4~7階建の一般向けの商業施設で、ファッション・雑貨・食料品などの専門店やテレビ局のグッズショップなど計310店が出店するほか、水族館、ドームシアター(主にプラネタリウムとして利用)など様々な娯楽施設が展開する計画です。また、タワーの東側にある「東京スカイツリーイーストタワー」は地上31階建のオフィスビルで、主に貸事務所として利用される計画です。
左:建設が進む東京スカイツリータウンと護岸の整備が進む北十間川。
右:タワーの足元は建物に完全に覆われた。
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今回訪問時には既に東京スカイツリータウンの建物は大方完成しており、2010年訪問時は見えていた東京スカイツリーの根元部分は建物で完全に囲まれ、見えなくなっていました。また、東京スカイツリーの南側を通る北十間川で並行して行われている護岸の整備も2010年訪問時と比較してかなり進んでおり、タワー前には新しく歩行者専用の橋が架けられたほか、水面近くまで降りられるテラスなども整備されていました。
なお、東京スカイツリーの脇にある東武伊勢崎線の業平橋(なりひらばし)駅は東京スカイツリーのオープンにあわせて駅名を「とうきょうスカイツリー駅」に改称する予定となっており、あわせて駅施設の大幅なリニューアルも行われることになっています。また、東武伊勢崎線を走る特急「スペーシア」も東京スカイツリーの開業に向けて現在内外装のリニューアルが進められています。これについては今後取材が完了次第お伝えする予定です。
■入場券は超高倍率!?
この東京スカイツリーは来る2012年5月22日(火)にグランドオープンする予定です。気になる入場料ですが、以下の通りとなっています。
東京スカイツリー展望台入場料金(単位:円)
区分 | 券種 | 大人(18歳以上) | 中人(中・高生) | 小人(小学生) | 幼児(4歳以上) | |
個人 | 第1展望台 | 2000 | 1500 | 900 | 600 | |
第2展望台 | 1000 | 800 | 500 | 300 | ||
団体 (25名以上) | 一般 | 第1展望台 | 1800 | 1350 | 810 | 540 |
学校 | 1600 | 中:1050 高:1200 | 720 | 480 |
※第2展望台は団体の割引設定はなし。
※個人の場合は障がい者割引がある。
※事前販売の日時指定券は上記料金+500円。
このように、大人の場合第2展望台まで上がると計3000円というなかなか強気の価格設定となっています。ITmediaの調査では「高い」が63.8%、「やや高い」が29.7%と9割以上が「高い」と感じているという結果が出ているとのことですが、世界で指折りの注目度が高い観光地ということもあり、開業から数年間は混雑することが予想されます。
特に5月のオープンから1ヵ月半程度は相当な混雑が予想されることから、当日券の販売はせず日時を指定した事前販売のみの完全予約制となることが発表されています。このうち、団体の予約券については2011年11月22日より既に受付が開始されていますが、開業初日の応募倍率は実に10倍という非常に高いものとなっており、それ以降の日にちもかなり早いペースで完売という状況になっているとのことです。個人の予約券は来る2012年3月22日より受付が開始される予定ですが、同様に非常に高倍率となることが予想されます。
落ち着いて見に行きたいという方は向こう1年程度は待ってから訪問される方がよろしいかと思われます。
▼関連記事
東京スカイツリー(2010年2月6日取材)(2010年3月31日作成)
▼参考
黒田,東京スカイツリー(R)の設計と施工の概要 - 土木技術2010年10月号59~63ページ
三菱重工|MBE、東京スカイツリー®に制振装置TMDを2基納入
TOKYO SKY TREE(公式サイト)
伊勢崎線業平橋駅の駅名を「とうきょうスカイツリー」に改称します! - 東武鉄道(PDF)
特急スペーシアをリニューアルします!! - 東武鉄道(PDF)
Business Media 誠:東京スカイツリーの展望台料金、3000円は高い? 安い?
団体予約倍率10倍 スカイツリー : 東京23区 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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