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偏光サングラスをかけると立体感が増す

最近気づいたのだ。偏光サングラスをかけると、世界が立体的に見えるということに。この記事では、偏光サングラスの良さをひたすら語る。私は主に自転車と釣りのためにサングラスを使うのだが、散歩でも通勤でも、外に出る際には偏光サングラスをかけるとQOLが上がる。勢いでサイトマスターの高級サングラスを買ったのだが、そのレビューもしてみる。


人間が立体感を感じる要因はいくつかある。左右の目に映る画像の視差(左右でずれが大きいものは近い)、錯乱円の大きさ(ピント面から離れたものはボケる)、幾何学的遠近法(大きいものは近い)、空気遠近法(色が薄く、青っぽいものは遠い)などなど、多数ある。その中でも、左右の視差に次いで重要なのが、錯乱円の大きさである。カメラ好きにはお馴染みであるが、人間の目にも水晶体という名のレンズがついていて、その厚さでピント位置を調整している。また瞳孔という名の絞りもついていて、その開き方で光量を調整している。さて、サングラスをつけると立体感が増すのは、光量が下がることで瞳孔が開くからだ。よほど暗い時以外は瞳孔は絞り開放にならないので、普段我々が見ているのは瞳孔を絞ってパンフォーカス気味にした映像である。そこで、サングラスをかけて眼球に入る光量を半分にしてみよう。それに体が反応して、瞳孔の面積は2倍になり、すなわち直径は√2倍になり、網膜に届く光量を同じくらいにしてくれる。結果として、F値を1段分下げた効果が発生する。すなわち、ピント面から離れた物の錯乱円の面積は2倍になり、立体感が増す。光量が4分の1になれば、F値を2段分下げた効果が発生する。2段も違えば誰だって立体感の違いに気づく。F4とF2の画像を以下に並べるが、全然違うのがわかるだろう。

人間の眼のF値はF1相当だとか書いている記事をたまにみかけるが、それは嘘である。虹彩の中にある瞳孔の散大時の直径は20歳で8mm、30歳で7mm、40歳で6mmくらいが平均だ。そして瞳孔から網膜の中心である中心窩までの距離は24mmくらいが平均だ。F値は焦点距離を絞りの直径で割った値なので、20歳でF3.0、30歳でF3.5、40歳でF4.0くらいということになる。もしF1を達成するなら、直径24mmの瞳孔が必要となり、アニメのキャラみたいに巨大な虹彩になっていないといけない。そんなのは、眼球が球体である以上は無理だ。フクロウやハトみたいに眼球の可動性を捨てて平べったい眼にすれば可能だろうが、それこそアニメキャラになってしまう。焦点距離24mmというのは私が普段使っているマイクロフォーサーズの25mmのレンズとほぼ同じである。そのF4の作例(上掲の1枚目の写真)のボケ量よりは私が肉眼で見ている世界のボケ量の方が遥かに大きいと感じるのが不思議なところだ。「人間の眼のF値はF1相当」という主張にも一瞬同意したくなるほどに、肉眼で感じる立体感は写真のそれよりも大きい。既に述べた要因の中で視差以外のものは写真でも表現されるので、主観的な立体感が写真より大きいという事実は視差の重要性を示しているとも言えそうだ。あるいは、中心窩の解像度とそれ以外の網膜の部分の解像度が違うからとか、眼球や水晶体が常に動いているからとか、肉眼の解像度が高いから許容錯乱円が小さくなって被写界深度が狭くなるとか、その他の様々な要因が寄与しているのかもしれない。それはともかく、人間の眼のF値は意外に大きく、瞳孔は意外に狭いということは認識しておくべきだ。F4より絞るとさらに立体感は失われるし、回折による解像度低下も起こるので、ある程度暗い方が世界が良く見えるというのは穏当な主張だ。

光量が下がると立体感が増すと気づいたのは、私がレーシック手術を受けた後のことだ。近視と乱視が治ったので、それだけで立体感が増して楽しく生活できるようになったのだが、どうも夕方以降になるとさらに目が良くなった気がしてくるのだ。暗くなって光量が下がるとなぜ視力が良くなった気がするのかと考えるに、瞳孔が開くからとの仮説に行き着いた。レーシックによる角膜の整形は瞳孔が開いた状態で調整されているからとか、瞳孔が開いている方が回折による解像低下が起きにくいとか、弱い視覚刺激を脳内アンプで増幅する心理現象だとか、副次的な説明は各種考えられるが、私は医者でも学者でもないのでそれらが正しいかどうかはわからない。ともかく私の主観としては、真昼間の明るさよりも、ある程度暗い状況の方が、物の輪郭がよく見え、さらに立体感も増して感じられるのだ。そして、しばらくしてから、同じ効果がサングラスをかけても得られることにも気づいた。昼間にサングラスをかけて散歩なりサイクリングなりをすると、街並みがより立体的に見える。道路標識も、信号も、歩行者も、サングラスをかけている状態の方が距離感を掴みやすいし、解像度すら上がって感じられる。それを知ってから、雨の日以外はなるべくサングラスをかけて出歩くようになった。立体感が増すと、目的もなく散歩しているだけでも楽しくなる。世界を観測することこそが知的生物であることの醍醐味だと私は思っているが、知覚刺激の多くを占める視覚の情報量を上げることは、観測者としての人生の価値を向上させると言っても過言ではない。

光量を下げるだけなら普通のサングラスで良いのだが、なぜ殊更に偏光サングラスが良いと私は主張するのか。それは、人間の自動露出モードは平均測光ではなく、ハイライト重点測光だからだ。つまり、視界に入るもっとも眩しい光線にあわせて、そのエネルギーが網膜を害さないように瞳孔を閉じようとする。そして、太陽を直接見ない限りは、視界の中で最も強い光は、鏡面ハイライトと呼ばれる反射光である。ガラスや水面の反射光はもちろん、アスファルトや鉄柵や植物の葉の反射光もそれに含まれる。偏光フィルタでそれを取り除いてやれば、ハイライトが緩和されるので、瞳孔をより大きく開くことができる。結果的に、網膜に取り入れる光量は増える。薄めの色の偏光サングラスだと、サングラスをかけた方がむしろ明るく感じることすらある。また、ギラつきがなくなると全てのものをじっくり見ることができるので、物の輪郭を視認しやすくなる。そして、瞳孔が開けば、ピント面からずれた物体の錯乱円が大きくなって、距離感の把握もしやすくなる。偏光フィルタはコントラストを上げると言われるけれど、それは正確ではない。実際には反射光を取り除くとハイライトが緩和されるとともにシャドーが締まって輪郭が明確になる効果がある。シャドーが締まればコントラストが上がったことになるが、ハイライトが弱まればコントラストは下がったことになるので、全体的なコントラストというかダイナミックレンジは同じかむしろ下がる傾向にあるだろう。この効果はカメラのレンズに偏光フィルタをつけた場合と同じだ。

釣りの際に偏光サングラスがよく使われるのは、水面の反射を除去して水中を見やすくする効果があるからだ。なぜ反射光が偏光するかというと、横波である電磁波は進行方向には振動できないからだ。反射光は反射の前と後の進行方向の振動成分が取り除かれているため、一定の方向の振動が無くなり、残った成分が偏光となる。地面や水面は水平であり、太陽光は垂直方向に反射するので、垂直方向の振動成分が取り除かれて、水平方向の振動のみになる。よって、水平方向の振動を遮断して垂直方向の振動のみを通す偏光フィルタをかけると、地面や水面などの垂直方向の反射光が選択的に除去される。反射角が90度の場合に最も強く偏光するので、偏光除去の効果も90度の反射光に対してが最も大きい。

水面の中を見るためだけでなく、水面からの照り返しの眩しさを軽減するためにも偏光サングラスは効果的だ。変更フィルタなしの場合と有りの場合を以下に並べるが、照り返しの光量はこんなにも違う。実際のところ、晴天時に太陽の方向の水面は裸眼だと眩しくて見られたものじゃないが、偏光サングラスがあれば、眩しいながらもなんとか見られる程度にはなる。

空気の分子が起こすレイリー散乱も偏光であるため、それを取り除くと空気が澄んで見えて、そして空の青さ(というか宇宙の黒さ)がより強調されて、遠景の輪郭が明確になる。しかし、ここで注意すべきは、太陽の方向である。太陽の方向が視界より水平方向に大きくずれている場合、目に入ってくる散乱光は水平方向に曲がった光であるため、垂直方向に偏光している。この場合、カメラレンズの偏光フィルタは垂直方向の成分を遮断するように回転させることで効果を最大化させる。

一方で、偏光サングラスは回転せず、常に水平方向の成分のみを遮断する。よって、太陽に対して水平方向にずれた位置の空はむしろ相対的に明るくなる。偏光フィルタの効果が最低化するように回転させてやればその状況が再現できる。

真夏に太陽が真上に近い非常に高い位置にある場合は、全ての水平方向の空が垂直方向に曲がった散乱光で満たされるために、偏光サングラスをかけると全ての方角の空がより青く感じることだろう。

反射光を取り除くと、物の色や形がよくわかるようになる。一方で、欠点もある。反射光が消えるということは、物体表面の反射率がわからなくなるということだ。特に人々の服の生地や植物の葉の質感がわかりにくくなり、仕上げのハイライトの書き込みを忘れたイラストのように、のっぺりと見えることがある。質感という意味での局所的な立体感はむしろ失われると言っていい。水平偏光を取り除くことの欠点が全く無いなら人類はそう進化していてもおかしくないが、そうでないということは、水平偏光から得る情報も生き残るために有用だということだろう。水平偏光のことを雑光とか呼んでマーケティングされていたりするが、反射光を認知することにも意味はあるので、水平偏光が悪いみたいな印象操作はいかがなものかと思う。とはいえ、特に自転車に乗っている際には、質感を吟味するほど近くの一点を凝視することは稀で、反射光が除去されることによる中景や遠景の視認性向上の恩恵の方が大きい。釣りの際にも、そもそも水面の反射光を取り除かないと中の魚や岩が把握できないので、魚や岩の質感の感知が問題になることは少ない。そして、手元にある何かの質感を吟味したい場合には、その時だけサングラスを外せばいい。間を取って、偏光度が50%とか70%とかの薄い偏光サングラスを選ぶというのもありだと思うが、結局のところ何が最適かは、個々人の趣向に拠る。私は局所的な立体感より大局的な立体感を重視したいので、偏光度が高い方が好みだ。通常状態と偏光フィルタをかけた状態で植物の葉を撮った例を以下に並べる。

偏光フィルタの現代ならではの副作用として、液晶画面が見にくくなるというのもある。液晶が透過光を調節するスリットが偏光を発生させるからだ。液晶画面の縦横を変えると画面の明るさが一気に変わるのが面白いところだ。据え置きのノートPCやカーナビは鉛直方向に偏光させることでサングラスの偏光フィルタと干渉しないようになっていることが多いが、スマホやタブレットではその限りではない。特に自転車やバイクにスマホをつけてカーナビとして使う場合で、縦置きで干渉が起きる場合、問題になるかもしれない。とはいえ、普通は縦置きなら干渉しないだろう。干渉しない方向の偏光であれば、むしろ液晶から出て来る光の光量が落ちにくいので、視認性が良くなる。もし干渉するなら、横向きに使うか、円偏光フィルタをスマホに貼るか、有機ELの製品に買い替えるといい。アンチグレアのカバーガラスを貼るだけでもだいぶマシになる。

偏光フィルタがなぜ偏光を取り除くのかについては、この動画を見ると分かりやすい。偏光フィルタには原子の鎖が縞模様に配置されていて、各原子が鎖と垂直方向にしか振動できないようになっている。各原子に光が当たると、電子は光の振動方向と同じ方向に振動しようとするが、その方向は鎖と垂直方向に限られて、水平方向の成分が取り除かれる。かくして、電子の振動で再び電磁波が放出される際には、鎖と垂直方向の成分だけになっているということらしい。こんなことを最初に解明した人は凄い。そして、その成果を日常生活に使えるというのはありがたいことだ。
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話は変わるが、長距離走と自転車と釣りが趣味であった兄は晩年に白内障を患っていた。自転車に乗る際はサングラスをつけていたっぽいが、ランニングや釣りではつけないことも多かったのではないかと私は推測している。毎日15kmとか走り込んでいたらしいので、おそらくかなりの紫外線を網膜に照射していたのではないかと思う。白内障は老化現象なので長生きすれば誰でもかかるものだが、若くしてならないようにするためには紫外線から目を保護するのは非常に大事だ。私はランニングはしないが、自転車と釣りはするので、やはりちゃんとしたサングラスを使いたい。サングラスのほとんどはUVカットも謳っているので、定評のあるメーカーのものであればその点では安心だろう。普段裸眼で過ごす人の場合、製品の選定というよりは、サングラスをかけずに屋外に出かけてしまう癖をまず何とかすべきだろう。

サングラスをかけると視力が良くなったと感じるもうひとつの原因として、老眼が挙げられる。全ての人は20歳を過ぎれば少しずつ老眼が進行してピントの調節範囲が狭くなっていくが、その度合いは目の訓練で緩和できる。普段から様々な位置にピントを合わせて眼の毛様体筋を使っている人は、スマホやPCなどの特定の距離ばかりを凝視している人に比べると、ピント調節範囲が広く維持できる。よって、日々の生活の中で様々な場所にピントを合わせる時間を持つべきだ。私は自転車に乗っている時も歩いている時も、思い出した時には近くと遠くを交互に見て目を訓練している。ここで問題となるのは、明るい屋外だと瞳孔が絞られてパンフォーカス気味になってしまうので、ピントを合わせる訓練の効果が低くなることだ。そんな場合にも、サングラスで光量を抑えるのが役に立つ。サングラスをかけて散歩やサイクリングをしているだけで、ちゃんとピントを合わせた位置とそうでない位置の陰影に大きな差が出るので、自然にピント合わせの訓練になる。実際、サングラスをかけて10分ほど散歩してからサングラスを外すと、その状態でも散歩の前より視力が上がっているように感じる。

私は特に自転車に乗っている時間が長い。自転車で使うとサングラスは落としたりして失くすことが多いので、今までは安物のサングラスしか使わなかった。その中でも、この冒険王のサングラスは気に入っていた。3000円と安いのに、UVカットで、偏向度99%で、かつ可視光透過率が40%とめちゃ高い。ただ、プラスチック(ポリカーボネイト)レンズであり、視界に若干の歪みが視認できるのが玉に瑕であった。短時間かけるだけなら良いのだが、一日中かけているとさすがに目と脳がおかしくなってくるというか、視力が下がりそうで不安になる。それでも我慢して使っていたのだが、先日箱根峠を下っていた時にどっかに落としてしまった。高くて良いものを長く使うだけでなく安いものでも長く使うポリシーの私だが、サングラスと手袋と傘だけは寿命まで使えたことがほとんどない。

その後、職場の有志がやっているリサイクルコーナーでサングラスが出品されていたので、それをありがたくいただいて使っている。メーカーはわからないが、かなりちゃんとした偏光サングラスだ。液晶の干渉を見る限り、偏光度は99%以上に達してそうだ。プラスチックレンズなので軽いし、歪みや写り込みといった欠点も特に感じられない。しかし、やたら色が濃いのと、フレームレス構造で横からの光と風を防がないので、自転車にはあまり向かない。とはいえ、裸眼よりも遥かに快適に散歩やサイクリングが楽しめる。光量がおそらく20%くらいに下がるので、立体感を増す効果はかなり大きい。真昼間でも標識やら歩行者やらが浮き上がって見えるのは楽しい。

最近はロングライドをよくするようになったので、やはり自転車に最適なサングラスが欲しくなってきた。また、暖かくなれば釣りもしたいので、釣りとサイクリングの両方で使えるサングラスが欲しい。今までは安価品や貰い物を使って来たが、ここらで良いものを買うことにした。それにあたり、以下の要件を掲げた。

  • UVカット率ができるだけ高く(99%以上)、網膜を保護してくれる
  • 偏光度ができるだけ高く(95%以上)、路面や水面の反射光を抑えてくれる
  • 可視光透過率ができるだけ高く(30%以上)、曇天や夕暮れでも使える
  • 景色を楽しみたいので色味はニュートラル(グレー)
  • 傷に強くメンテナンスが容易であるガラスレンズ
  • ガラスレンズの重さを分散させるかけやすいフレーム
  • 視界の歪みの小ささとフィット感のバランスが良い6カーブ
  • 風と虫と迷光が入って来ないようにフレームの上部と側部が太いもの

偏光度が高い方が良い理由は既に述べたが、可視光透過率が高いとサングラスとしての光量低下の効果は薄くなるので、悩ましいところだ。しかし、偏光度が100%に近くなると、地面に対して水平の振動成分をほぼ完全に除去することになるので、可視光透過率の上限は50%になり、必然的にF値1段分の立体感向上の効果が発生する。また、偏光のハイライトを除去することでさらに立体感向上が見込める。以上を踏まえると、立体感に関しては偏光度95%以上を達成している時点で十分だ。というか、実際には偏光度100%かつ可視光透過率50%という理想的な偏光フィルタは存在しない。なので、偏光度95%以上で、できるだけ可視光透過率が高いものを探すことになる。暗すぎるレンズだと利用できるシーンが限られてしまう。限界より暗くなるとサングラスを外すことになるが、自転車の場合には虫が目に入るのを避ける目的で暗かろうが眼鏡をかけていたいので、できれば多少暗い状況でもかけていられるものが良い。明るすぎて困ることは基本的に無い。明るすぎたら瞳孔が勝手に絞られるだけで、立体感が多少失われる程度の副作用しかないからだ。なお、紫外線量で明るさが調整される調光レンズも考えたが、調光レンズは実際の可視光透過率の予測がしづらいという問題と寿命が短いという問題がある。

高いサングラスを買うなら、ガラスレンズにしようと思う。プラスチックの熱膨張率はガラスに比べると10倍くらいだ。よって、プラスチックレンズは、どんなに工作精度を良くしても、気温の変化と経年劣化で必ず歪んでしまう。膨張と収縮によってコーティングの劣化も早まり、そもそも素材が柔らかいので傷がつきやすい。光学性能も耐久性もガラスレンズの方が良いので、高い金を出すならガラス一択だと思う。
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ガラスレンズは重いのが欠点だ。ガラスレンズのサングラスは40gくらいで、プラスチックレンズのサングラスは20gくらいなので、その差は歴然だ。重いのが嫌だからこそ、軽さ以外は全てが劣るプラスチックレンズの方がよく使われているのが実情だろう。しかし、自転車のヘルメットは300gもあり、野球帽でも重さは60gあり、女性の髪の毛は平均125gあるらしいので、20gの差は慣れれば全く気にならなくなる範疇だ。重さでレンズのサングラスのフレームずれたり、鼻や耳の接触部分が痛くなったりしやすいのは問題だが、そうならない鼻当てやツルの製品を選べば良い話だ。

偏光レンズの専門メーカーとしてTALEXという会社が有名だが、レンズメーカーなのでサングラス自体は少ししか作っていない。基本的には他社にレンズを卸しているだけだ。で、TALEXのガラスレンズでサングラスを作っているティムコという会社があり、そこのサイトマスターというブランドが結構有名らしい。サイトマスターは釣りに特化したブランドなので、色展開は水中の見やすさを追求したものであり、フレーム展開も釣り人のニーズに合わせてなされている。レンズもフレームも長時間装用した際の快適さを追求したものなので、私のニーズにも合っている。一方、サイトマスターの製品はサイクリングで使うのには向いていなさそうにも思える。普通、わざわざ重いガラスレンズのサングラスをサイクリングで使ったりはしないだろう。しかし、私はレースに出るわけではないし、そもそも高速走行には向いていないブロンプトンでまったり長く走るスタイルなので、むしろレーシーなサングラスは似合わない。釣りオジが近所の川や海岸に出かけている体で、100kmくらい走りたいのだ。なんなら途中で本当に釣りを楽しみたいところだ。
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サングラスの本来の目的は目の保護であり、その重要な要素がUVカットなのだが、ちゃんとしたメーカーのレンズではUVカット率は当然のように99%以上になっている。サングラスをかけて可視光の光量が下がるとその分だけ瞳孔が開いて多くの紫外線を取り込むため、少なくとも可視光の低下分以上のUVカット率でないと意味がないが、定評のあるメーカーの仕様なら安心だ。目に見えない光線の量は感覚的に確かめることがはできないので、無名のメーカーのものを使うと逆に目を痛めそうで怖い。健康と安全にはそこそこ金を使うべきだろう。必ずしもサイトマスターである必要はなく、オークリーでもシマノでも100パーセントでもレイバンでも良いのだが、とにかくちゃんとしたメーカーの定評のある製品を使いたいところだ。

フレームにどれを選ぶかだが、シクロおよびウルティモというモデルとが私の要求仕様に叶いそうだ。6カーブで、上部と側部にカバーがついていて、鼻当てやツルを自分で曲げて調整できる。ツルにバネが仕込まれていて側頭部を適度に押さえて重さを支えることができるため、長時間装用しても疲れないらしい。いくつかレビューを見ても、評判が良く、そこそこ納得できる理由も述べられていた。レンズの色はスーパーライトグレーが良さげだ。6カーブだと他にも、ウェリントン型のクラシコ、ティアドロップ型のラクリマ、ウェリントン型で大型レンズのエノルメというモデルがあるが、サイクリングの際に風の入り込みを押さえてくれそうなシクロとウルティモが私には合っていそうだ。フレームの色はブラックとマットブラックがあるが、目立ちにくいマットブラックの方が好みだ。サングラスをかけた状態で自分自身の顔を見ることはほとんどないので、似合うか似合わないかは二の次ではあるのだが、格好悪いよりは格好いい方がいい。サングラスをかける際には眉毛が隠れた方がいいらしいが、ほとんどのスポーツ用のサングラスはその条件を満たしている。

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実際の見え方は試着してみないとわからないので、渋谷の上州屋で試着させてもらった。残念ながらシクロもウルティモも置いてなかったのだが、別のフレームのスーパライトグレーとスーパーライトブラウンとイーズグリーンを試せた。色味はどう考えてもスーパーライトグレーが自然で、可視光透過率35%の割には明るく見えて良かった。サイトマスターが最初の一本の色として推すスーパーライトブラウンだが、当然ながら視界が茶色くなって、またスーパーライトグレーより暗く感じるので、私のニーズには合わなかった。可視光透過率が44%もあるイーズグリーンは明るく見えるのは良いのだが、やはり視界が黄緑色に染まるので風景を楽しむのには向いていない感じだ。レンズの重さは全く気にならなかったので、やっぱガラスレンズとちゃんとしたフレームの組み合わせはいいなと思った。オプティモという4カーブのモデルだとやはり横方向から光と風が入るのが気になった。ロトンドという8カーブのモデルは目の周囲を完全に覆ってくれて没入感があるのはいいのだが、ちょっとでかすぎるのと、ツルを折り畳んだ際にも嵩張るのが気になった。となるとやはり6カーブでかつ風防がついているものが良さそうだ。実際に試着してから決めたいところだが、ないものはしょうがないので、投機的に決めるしかない。シクロとウルティモを比べると、だいたい同じ形だが、前者の方がよりスポーティで、後者の方がよりカジュアルって感じか。自転車に乗ることを考えるとシクロの方が向いていそうだ。

買うものを決めたとして、あとはどうやって買うかだ。定価36000円もするので、できればアウトレットや中古で安く手に入れたいところだが、ざっと探した限りではそういうのはなかった。ヤフオクやメルカリを見張っているとたまに中古が出ているのだが、色が違うのばかりだ。釣り人にはイーズグリーンとかスーパーライトブラウンが人気らしいので、スーパーライトグレーはあまり出ないっぽい。フレームはシクロやウルティモじゃなくても似たような形だったらいいのだけど、レンズ色は使用感を支配する要素なので譲れない。スマホだって粘って中古で1万円以下で買う私だが、今回ばかりは新品定価で買うしかなさそうだ。で、アマゾンやら楽天やらを探したのだが、シクロやウルティモのマットブラックのスーパライトグレーという組み合わせはどこも売り切れだった。フレーム色をマットブラックでなくブラックにしたり、レンズ色をスーパーライトブラウンにしたりすれば、まだまだ在庫があり、1割引ですら買える。しかし、レンズ色に妥協できないのは当然だが、フレーム色もマットブラックに拘りたくなった。フレームが太いので、テカるブラックだと目立ちすぎて後悔しそうだからだ。永く使うなら、しかも毎日使うなら、たとえ定価でしか買えなくても、気に入った色を選ぶべきだろう。ということでひたすら探索を続けたところ、山梨の小さな釣具店にシクロのマットブラックの在庫があったので、そこに注文した。定価だと税抜36000円の税込39600円なり。4万円弱なんて、私の買い物としては尋常ではない額だ。たかがサングラスにそこまで金を出すなんてブルジョワジーみたいだと思う。とはいえ、カメラのレンズで4万円だとしたらむしろ安い方だと考えると、使用している時間がずっとずっと長いであろうサングラスに4万円出すのは妥当だとも思えてくる。

そして、製品が到着した。単なるサングラスだが、スマホやノートPCを買い替えた時よりもワクワク感は大きい。専用のかなり太いセミハードケースが付いてくるのだが、ケースのサイズがサングラスとピッタリだ。逆に言えば、このサングラスは畳んでもかなり大きいケースにしか入らないということだ。思ったよりも仕舞い寸法が大きくて場所を取る形だった。6カーブでこれなので、8カーブはもっと場所を取るということか。

重さを測ってみたところ、46gだった。これは眼鏡としてはかなり重い部類で、手に持つとずっしりとしたガラスレンズの重みを感じる。高級感があると言えば聞こえはいいが、重いのは欠点でしかない。それを帳消しにできるほどの良さをレンズとフレームで提供できるかどうかがこの製品の鍵だ。

実際にかけて外出してみた。スーパーライトグレーの可視光透過率35%という仕様を信用するなら、元の光量を通過させるために、瞳孔の面積は1/0.35 = 2.85倍になり、直径は√2.85 = 1.7倍になるだろう。つまりF値が1/1.7 = 0.59倍に下がることになる。十分に明るい場所では瞳孔が開くおかげで通過する光量は同じになるので、暗さは全く感じない。晴天でも曇天でも雨天でも、日中の屋外ではずっとサングラスをかけていられる。日陰に入っても全く問題ない。屋内でも、裸眼で読書できる程度に明るい場所ならば、かけていて問題ない。サングラスとしてはかなり明るい部類に入ると言っていいだろう。偏光フィルタの効果は期待通りで、カメラの偏光フィルタと同じくらいの効果があり、水平方向の振動はほぼ全て遮断してくれているように感じられる。

可視光透過率35%はどの程度光量が低下するのかということを再現すべく、Mモード(シャッタースピード固定、絞り固定、感度固定)で写真を撮り、サングラスの有無で比較してみよう。結果を見ると、明るさがあんまり変わらないのが分かる。人間の視覚のダイナミックレンジに関しては諸説あるが、16EVとか20EVとか、やたら広いとされる。35%というのは露出表記だとlog2(0.35) = -1.51EVに過ぎないわけで、ダイナミックレンジに占める割合は大したことないとも言える。そう考えても、可視光透過率35%というのはサングラスとしてはずいぶんと控えめな暗さだ。しかし、偏光フィルタが良い仕事をしてくれて、特に太陽の方角を向いている時に反射光を良く取り去ってくれるので、眼への負担は35%より低くなる。ところで、この風景では、若干ながら全ての色が緑かぶりしていることがわかる。また、既に述べた通り、冬や夕方で太陽高度が低い場合、カメラレンズの偏光フィルタのように空の青さが増すということはない。サングラス越しに肉眼で見ると、むしろ相対的に明るくなったように感じる。

液晶ディスプレイに白い画面を表示して、その前にサングラスをかざすと、色味の変化が良くわかる。サングラスが水平方向だと、光量低下は最低限になりつつ、通過した光は緑にかぶる。サングラスをロール方向に90度傾けると、液晶から出るほとんどの光が遮られるとともに、通過したわずかな光は紫にかぶる。緑と紫は補色関係であるため、斜め45度だと打ち消しあってグレーになる。偏光が異常に強い液晶画面ではこのような両極端の色被りが発生するが、自然光下でサングラスをかけている時には、若干の緑かぶりを認知することが多い。とはいえ、人間の脳にはホワイトバランス補正機能があるので、若干の色かぶりなら1分もすれば慣れて忘れてしまう。


偏光度99%は期待通りの性能を示してくれる。実世界の鏡面ハイライトは都合よく水平偏光ばかりで構成されているわけではないが、かなりの割合で水平偏光であるのも事実だ。なぜなら、太陽や街灯などの強い光源は大抵上の方にあり、地面や水面やその他の物体は大抵下の方にあり、かつ水平面が広いことが多いので、強い反射光の多くは垂直方向の反射光になり、それらは水平偏光の傾向を持つ。車のフロントガラスが透けて見えるのがその好例だ。空気による散乱も、光源が上の方にあるならば、水平偏光を多く含む。よって、偏光サングラスは、晴天下で地面や植物や人工物のギラつきを抑えてくれるのはもちろん、曇天下で空全体が光源になっているような場合でも、目に映る全ての物の反射光を和らげ、さらに空気が無くなったかのような透き通った視界を提供してくれる。晴天の時に偏光サングラスをかけたくなるのは自明だが、曇天の時にも新鮮な世界を提供してくれる。

かけている時のフィット感は完璧だ。外して手に持つとガラスレンズの重さを確かに感じるが、かけてしまえば重さは感じない。というか軽く感じる。鼻パッドもツルも調整できるが、調整しないデフォルト状態でも私の顔にピッタリだった。そして、形から予想した通り、視野は広めだが、完全に視野をレンズが覆うわけではないので、8カーブのような没入感はない。シクロでは視野の上下左右の端にはフレームが入ってくるので、かけてからしばらくは視界が狭まった感覚がある。しかし、5分も経てば慣れて忘れてしまう。一方で、フレームが迷光を遮ってくれるので、太陽に基準にしてどの方向を見ても眩しく感じることはない。視野の歪みは弱く、サングラスをかけつつ上下に動かして、裸眼とレンズ越しの視界を素早く切り替えても、目に映る物の位置がほとんど変わらない。とはいえ、全く変わらないわけではなく、6カーブなりには変わる。普通の眼鏡では2カーブが選ばれ、街使いのサングラスでは4カーブが選ばれるのはそれが理由だ。6カーブは8カーブと4カーブの妥協点だが、私の利用方法では6カーブが丁度いいと改めて思った。以前から持っていたサングラスも6カーブっぽいが、それと比べてもシクロは奥行きがある。これは仕舞い寸法を悪化させているが、しっかりとした風防のためなら仕方がない。

自転車にも乗ってみた。これまた予想通り、6カーブながら太めのフレームが良い仕事をしてくれて、風の巻き込みを全く感じない。特に側面の風防がかなり良い仕事をしてくれている。自転車用のサングラスでは全くない釣り用のサングラスだが、自転車にも適している。横方向の視野が裸眼より若干は狭くなるのは事実だが、それで削られる視野の領域の解像度はもともと非常に低いので、削られた分で安全性が低下するようなことはない。ただし、後方を確認する際にはより大きく首を回さなければならなくなるので、首と胴の柔軟性が低い人は後方確認だけは苦労するかもしれない。一方で、そこそこの速度で走っている際には視野は前方に狭くなってしまうので、視界の端はむしろ遮断されていた方が集中できるとも言える。走り出して10分も経てば、サングラスをかけていることは忘れてしまう。重さも全く気にならない。スマホをナビにする際も、少なくとも縦置きにする限りにおいては視認性に何ら問題はない。自転車用サングラスとしてサイトマスターシクロは普通に使える。

視界に入るフレームをできるだけ少なくして視野を広くするには、サングラスをできるだけ顔に近づけるとよい。鼻パッドが調整できるので、それを奥に押し込んでやると、かなり顔に近づけた状態でサングラスを装着できる。鼻筋が低かったりまつ毛が長かったりする場合には鼻パッドを手前に持ってきてサングラスを顔から離すこともできる。個人的にはギリギリまで近づけるのが好みだ。そうするとフレームがほとんど気にならなくなる。

サイトマスターの新しいモデルで導入されたSWR(super water repellent)というコーティングはシクロにも実装されている。わざと水をかけてみたところ、確かにちゃんと水を弾いてくれる。ガラコの宣伝みたいだ。正直なところ、自転車でも堤防釣りでも、サングラスに水がかかることはそんなにない。私は雨の日にわざわざサイクリングや釣りはしないからだ。ボート釣りでもすれば話は違うだろうが、そうでない人にはSWRは別に要らないんじゃないかとも思える。しかし、たまに水がかかった時にレンズを拭かなくていいというのは、レンズを拭く回数が激減することを意味している。サングラスを落とさないで運用できると仮定するなら、レンズに傷がつく可能性が最も高いのは拭く時だ。私はこのサングラスを10年使うつもりなので、出先では極力拭かないつもりだ。目立つ汚れがない限り何もしないでOKで、週に1回くらい中性洗剤で洗うだけで油汚れも綺麗に取れる。SWRはそのような運用を可能にしてくれる。SWRは水捌けだけじゃなく擦り耐性も向上させていて、スチールウールで擦っても大丈夫とかいう売り文句らしいが、さすがに試す勇気はない。とりあえず普通に1ヶ月運用している限り、傷ひとつ付いていない。

良いサングラスは、反射防止コーティングも違う。サングラスをかけた状態で逆光状態になった場合や、太陽光が直接視界に入ってくる場合でも、乱反射によるフレアでコントラストが低下することがない。冒険王の安いサングラスはコーティングがイマイチで、自分の顔で跳ね返った光がレンズに反射されて視界に入る問題があった。サイトマスターだと全くそれがなく、太陽が視界に入っても全く問題がない。特にサイクリングのロングライドの後半は傾いた太陽が視界に入った状態で走ることが多いので、逆光耐性は非常に重要だ。良いサングラスをかけると、普段はコントラストが下げ下げなはずの逆光下でも普通に物が見えるので、透視能力者にでもなったような高揚した気分になる。それを再現しようとしてサングラス越しに写真を撮ったのが以下であるが、カメラのレンズ内の反射でフレアが出てしまってうまくいかなかった。実際には全くフレアのない鮮明な光景が見られる。

可視光透過率34%ならば、常にサングラスをかける生活をしていても大丈夫だ。タモリや浜省やD.J. motsuはもっと濃いサングラスを常にかけて生活しているのだから、相手からこちらの目が見える程度の濃さならば全く問題ないことはわかるだろう。反射光が除去されると黒が締まってコントラストが上がったように感じるので、多少暗くなったとしても視認性が落ちないのが偏光サングラスの素晴らしいところだ。サングラスをかけるだけで、視力が良くなったように感じるというのは本当だ。読書する際にも、ノートPCで書き物をする際にも、テレビでドラマを見る際にも、サングラスをかけたままで全然いける。色味のコッテリ感もまた良くて、病みつきになる。私もタモリらのようなサングラスおじさんになりたいくらいだ。

新しいサングラスをかけてロングライドもしてみた。年末年始に気管支炎になった余波で呼吸系の能力が落ちていて、近頃はロングライドはしていなかったのだが、今回久々に100km越えで走ってみた。関東で良い景色といえば、湘南平である。例によって中原街道を通って茅ヶ崎と平塚を抜けて、湘南平の坂を登って、それから134号の海岸線を走って、逗子から輪行で帰ってきた。

ロングライドでも、ここまで述べた使用感は変わらない。とにかく目が楽で、自然といろいろな場所にピントが合わせられる。太陽の方角を向けば偏光フィルタが良く効いて眩しさを緩和してくれつつ、それ以外の方角を向いている際には光量低下は最低限に抑えられている。結果として、太陽に振り回されないで目の安静を保てる感じだ。そんなレビューの文言を考えつつも走っていたら、あっという間に湘南平についていた。最後の坂は前回訪れた時と同様に苦労したが、隠し乙女ギアのおかげでなんとか登り切った。

湘南平の展望台から見る景色は相変わらず良い。せっかくサングラスを持っているのだから、サングラス越しにも写真を撮ってみた。サングラスなし、サングラスありの順に並べる。まずは江ノ島方向で、太陽とは逆方向の江ノ島方面の順光の風景。サングラス越しの例は単に緑かぶりしているだけで、ほとんど偏光フィルタが効いていないことが確認できる。順光の反射光や散乱光は180度に近い方向転換なので偏光しないからだ。

太陽と90度の角度の大山やヤビツ峠方面の風景。こちらは垂直偏光しているはずだが、水平偏光のみを取り除くのが偏光サングラスなので、やはり緑かぶりするだけでほとんど効果がない。それだと面白くないので、サングラスなし、45度傾き、90度傾きで無理やり偏光を除去してみた。


サングラスをかけたまま展望台から周囲の絶景を眺めていたら、写真には映らない立体感を感じた。裸眼だと、100m先の木と無限遠の背景は一枚の板に溶け込んでしまっている感じなのだが、サングラスをかけていると、木と背景に明確な距離の違いを感じるのだ。初めて多重スクロールのゲームをやった時の感動を思い出した。この、近距離を見ても中距離を見ても遠距離を見ても立体感が感じられる感覚は、写真には撮れない。そして、たかがサングラスをかけただけでそんなに変わるものかと、持論を疑いさえしてしまう。だた、実際に体験していること自体は否定できないわけで、不思議な気分だ。

下山してから海岸線を走って江ノ島に来た。例によって七里ヶ浜の駐車場で休憩しつつ、夕日を眺めた。裸眼だったら夕日の方向なんて向けたものじゃないが、ちゃんとしたサングラスをかけていれば大丈夫だ。それでも太陽を直視するのは憚られるが。夕日を浴びてキャッキャウフフする男女を尻目にサラダチキンでタンパク質を補給するのはなかなか乙である。

逗子まで来るともう日が落ちてしまった。どの程度暗くなってもサングラスをかけていられるか試したのだが、結論としては、いくら暗くなってもこのサングラスはかけていて大丈夫だ。日没が過ぎ、黄昏が過ぎ、星が見える暗さになっても、裸眼で大丈夫な光量ならほとんどの場合でサングラスをかけていても問題ない。もちろん外した方が明るく見えるのだが、むしろ街灯や車のヘッドライトの眩しさを軽減してくれるのでサングラスをかけていた方が安全かもしれない。明るめのサングラスにして良かったと改めて思った。

サングラスを10年持たせるためにどうすればいいか。まず、以下の動画に紹介されているが、ガラスレンズにした時点でプラスチックよりも圧倒的に傷がつきにくいので、丁寧に扱っていれば、傷によって使えなくなる可能性は低い。偏光レンズならではの弱点として挙げられるのは、偏光フィルタを2枚のガラスで挟み込んでいる都合上、レンズの縁からフィルタ部分に水が侵入して劣化する可能性があることだ。とはいえ、レンズの縁はフレームで蓋をされている構造になっているため、普通に使っていれば即座に水が侵入することはない。しかし、水没させたり水気がついたまま放置したりすると、水圧や毛細管現象で水分が侵入することになるので、なるべく水気がつかないように運用することを心がけたい。あと、メガネを畳む際には左のツルから畳むのが正解らしい。逆にするとフレームが歪む原因になるので気をつけよう。
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「UVカット剤が劣化するからサングラスの寿命は数年である」という説があるらしいが、「ほとんどのレンズは素材にUVカット剤が練り込まれているのでその問題はない」という反論もありつつ、さらに「練り込み方式であってもUVカット剤は劣化する」という反論もあり、正直どれが正しいのかわからない。メーカーによっても立場が違うらしい。サングラスを買い替えさせたい立場ならば寿命が短い方が都合がいいし、製品の品質の高さを主張したいメーカーであれば寿命の長さを伝えたいだろうから、このような混乱した状況になっているのだろう。紫外線透過率に関しては機械的に調べられるので、5年くらい経ったらどこかで調べてもらって、この議論に決着をつけよう。

まとめ。サングラスは、特に偏光サングラスは、かけるだけで世界の立体感を増幅してくれる。ちゃんとした製品は数万円もするが、その価値はある。スマホに金をかけるなら、サングラスに金をかけた方がいい。私は熟考した上でサイトマスターのシクロを選んだが、実物はその期待に答えるものであり、日々の生活で愛用する道具になった。個々人の趣向や生活様式によって適した製品は変わるだろうが、世界を見るという行為の質を偏光サングラスは上げてくれる。百聞は一見にしかず。ここまでしつこく書き連ねても偏光サングラスの実際の使用感が伝わることはないだろうから、とにかく試してみてほしいところだ。最初は安いので十分で、安くても十分に偏光サングラスの良さは堪能できる。それをしばらく使っていると今度は歪みや写り込みが気になってくるだろうから、それから高いのを買えばいい。