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第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

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MarkeZine BOOKS(マーケジン・ブックス)は、激動の時代を生き抜くビジネスパーソンに向けた、マーケティング分野の新しい定番書シリーズです。

書評

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Owned Media Report~オウンドメディアマーケティング戦略の潮流

「お客様とのコミュニケーションに加え、インナーマーケティングにも貢献」 ポーラ「ニッポン美肌県グランプリ」の狙い

 企業のオウンドメディア活用の実態をお伝えする「Owned Media Report」。今回は「ニッポン美肌県グランプリ」を企画するポーラを訪ねました。大きな反響を呼んだ本キャンペンの狙いとは?(聞き手:松矢順一氏)。

今回お話を伺ったのは…
株式会社ポーラ 宣伝部部長 由井薗 誠(ゆいぞの・まこと)氏
1961年生まれ。国内外化粧品メーカーを中心に研究開発・製品企画開発・マーケティングの職務経験を経て、2007年に株式会社ポーラ入社。商品企画部を経て2011年より現職。宣伝PR全般を担当。

ニッポン美肌県グランプリを企画した狙い

 ── はじめにニッポン美肌県グランプリ(以下、美肌県グランプリ)を企画した狙いについて教えてください。商品購入を促す狙いなのか、企業ブランディングの一環なのか、どういった狙いを持って行われたのでしょうか。

 このキャンペーンは、APEX-i(アペックス・アイ)という商品のコミュニケーション戦略の一環として行っています。まず、APEX-i について簡単に説明すると1,420万人分(※2013年7月時点)の肌分析データをもとに、125万種類の中からお客様のお肌に合ったお手入れができる化粧品で、今年で25年を迎える商品になります。

株式会社ポーラ 宣伝部長 由井薗誠氏
株式会社ポーラ 宣伝部長 由井薗誠氏

 この商品はまず弊社店舗にお越しいただき、スキンチェックを行って肌細胞のレベルまで情報をいただくところからはじまります。そして、その肌データを店舗から弊社の肌分析センターへ送りセンター内で解析します。その分析結果に基づいて、その方の肌の状態と適切なお手入れ方法を記載したアドバイスシートとAPEX-iの無料サンプルセットをお客様のお手元にお届けする仕組みになっております。

 一方、弊社のアンケート結果からわかってきたことなのですが、実は7割の方がご自身の肌に必要なお手入れに合っていない化粧品を選んでおられるのです。また、20~30代で見るとその割合は8割にものぼります。このキャンペーンを通し、お客様自身のお手入れ法に誤解はないか、正しいお手入れ法を知るきっかけにつなげたいという思いがありました。

「行動をデザインする」ためのキャンペーン

 ── なるほど。APEX-iのための美肌県グランプリなんですね。オウンドメディアを活用したキャンペーンにされた経緯について教えてください。

 これまでAPEX-iでもテレビ広告や雑誌広告などを続けてきましたが、限られた時間・枠では商品独自の個肌対応システムや商品特徴をきちんと伝えることができませんでした。どうしたらこの商品の差別性を正確かつ深くお客様に伝えることができるのかが、コミュニケーション上の課題でした。

 ── 確かにテレビ広告や雑誌広告は尺やスペースに限りがあるので、専門性の高い商品の場合どうしても伝えられない情報がでてきますね。

 テレビ広告では、過去、肌分析データを使ったクリエイティブなどのクリエイティブで伝達してきたのですが、APEX-iの商品特性や他社商品との違いを伝えきれませんでした。また、25年間同じ手法でコミュニケーションをつくることの難しさにもぶつかり、徐々に売上も伸び悩む状態に陥ってしまいました。APEX-iの売上を伸ばすための一番のポイントは、営業窓口であるポーラレディがお客様のスキンチェックを数を増やすことに尽きます。

 お客様の肌データをいただかないことには、お客様にサンプルをお渡しすることはできません。みなさまに同じサンプルをお渡しすることはできませんので、まずスキンチェック数を増やすことが売上にもつながります。もちろんインセンティブをフックとして、スキンチェック数を増やす取り組みもしていますがこれにも限界を感じておりました。

APEX-iの持つコミュニケーション課題
 APEX-iの持つコミュニケーション課題

 そこで出てきたアイデアが美肌県グランプリだったのです。2012年から実施し今年で2年目になります。実施に至るまでには外部プランナーさん含め、何度もディスカッションを重ねました。

 ── ディスカッションの内容をぜひ教えてください。

 まず、広告投資する意味から紐解いて社内およびプランナーと議論を重ねることからはじめました。広告の役割は認知や購買行動につながるステップの醸成などありますが、今回キャンペーンでの役割を「行動をデザインする」ことと定義しました。行動していただきたい対象はお客様はもちろんですが、店頭でお客様と接するポーラレディの方々も対象としました。

 つまり、いかに彼女たちが能動的に動き、かつ営業しやすい環境をデザインできるかという点にもフォーカスしたのです。また「そのまま商品を買わされる」「時間がかかる」などの理由から、スキンチェックを断られるというネガティブ要素を払拭するための仕掛けと仕組み作りも目指しました。ゲーミフィケーションの要素も取り入れ、参加・競争型のキャンペーンとしてお客様もポーラレディの方々も楽しめる、能動的なキャンペーンを構築しました。

 コンセプトとなったアイデアは「郷土愛」です。人間の肌は、場所や季節によって大きく変わります。私たちは各エリアで肌環境が違うことを肌分析センターが所有する1,420万人分のサンプルからわかっていました。

 また、別のアンケート結果から地元に対する愛情や地元意識を多くの方々がお持ちだということに気づきました。そういったデータから、ポーラレディとお客様が一体となって県単位で競い合うゲーム性のあるキャンペーンにできると、面白いのではないかというアイデアが生まれました。

美肌県グランプリのコミュニケーション戦略
美肌県グランプリのコミュニケーション戦略

 これまではWebサイトをマスメディアの補完的立ち位置で活用しておりましたが、今回はキャンペーンの中心的な役割とし、キャンペーンの現状経過をお客様もポーラレディもリアルタイムで把握できる役割を担わせました。

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松矢 順一(マツヤ ジュンイチ)

株式会社アサツーディ・ケイ クロスコミュニケーション局を経て、伊藤忠商事株式会社情報産業部門でデジタルマーケティングを担当し、株式会社ADKインタラクティブ取締役就任。その後、楽天株式会社メディア事業副事業長を経て株式会社Tube Mogul執行役員就任。著書には共著で『次世代広告コミュニケーション』『トリプルメディアマーケティング』。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2013/12/16 15:00 https://markezine.jp/article/detail/18871
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