kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

1999年、自自政権は「集団的自衛権行使容認」寸前まで行っていた

斎藤貴男というライターは、リベラル派の間で人気が高いが、実は私はこの人の本が苦手で、この人の本で本当に良いと思ったのは政治とは関係ない『梶原一騎伝』一冊だけである。私が読んだのは新潮文庫版だったがすぐに絶版になり、その後文春文庫から再発されたものの、こちらも書店ではあまり見かけなくなった。しかし、この本は文句なく面白い。


梶原一騎伝 (新潮文庫)

梶原一騎伝 (新潮文庫)


梶原一騎伝 夕やけを見ていた男 (文春文庫)

梶原一騎伝 夕やけを見ていた男 (文春文庫)


その斎藤貴男が最近出した新書を読んだ。これは、消費税率引き上げ直前の今年3月に買ったが、私の志向と同じく安倍晋三を批判する内容にもかかわらず、斎藤貴男との相性の悪さから敬遠して「積ん読」になっていたものだった。



この本を読んで、斎藤貴男と波長が合わない理由がわかった。そのくだりを読んだのは、昼休み、喫茶店においてであったが、頭に血が上って、この本を床に叩きつけたい衝動にかられたのだった。しかし、それを書くと長くなってこの時間帯には書き切れないので、今晩または明日、または時間のある土日に改めて書くことにして、この記事では、この本に書かれた別の部分を紹介する。

著者(斎藤貴男氏)は2013年8月、自民党のタカ派議員として知られた元衆院議員・玉澤徳一郎氏にインタビューした。自民党の「日本国憲法改正草案」や安倍政権の現状に対する感想を聞くためである。玉澤氏は、タカ派の人らしく、9条改憲を求めるが、集団的自衛権の政府解釈変更には反対だという。そして、私の関心を惹いたのは、下記に引用する部分である。

 近年のタカ派の論理とは一線を画す信条を、彼は語った。玉澤氏には実際、一九九九年に自民党と自由党(現在の民主党の前身の一つ)が連立政権を組むための政策協議で、小沢一郎・自由党首(当時)が国際貢献を謳って求めた集団的自衛権の事実上の容認に異を唱えて、その気になりかけていた小渕恵三首相(当時)を翻意させ、玉虫色の合意に導いた実績がある。

「小渕と私は早稲田の雄弁会以来の仲間だから、これは内閣の命運に関わる問題になるよと言ってね。後に自自公の連立が解かれる時には、小渕はこのことでずいぶん小沢に責められたようだ。その直後に倒れ、首相在任中に亡くなった引き金のひとつではあったろう」

(斎藤貴男『戦争のできる国へ──安倍政権の正体』(朝日新書,2014)283-284頁)

このくだりを読んで今度は、私の目に(まるで星飛雄馬のように)小沢一郎に対する憤怒の炎がめらめらと燃え上がったことはいうまでもない。「小渕恵三は実質的に小沢一郎に殺されたようなものだ」とは当時から言われていたが、限りなく犯罪に近い小沢の行為の動機が、集団的自衛権行使容認を小渕に拒絶されたことだったとは。

ところがその小沢一郎は、平然とこんなことを語っている。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140615/k10015238001000.html

小沢氏 集団的自衛権 公明は容認すべきでない

生活の党の小沢代表は岩手県奥州市で記者団に対し、集団的自衛権を巡って、公明党が事態を極めて限定して行使を容認する方向で党内調整に入ることに関連して、平和を掲げた立党の原点を踏まえ、公明党は容認すべきではないという考えを示しました。

この中で、生活の党の小沢代表は、集団的自衛権を巡って、公明党が昭和47年の政府見解を引用して、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される事態」に、極めて限定して行使を容認する方向で党内調整に入ることに関連して、「集団的自衛権の行使が、『憲法解釈上、容認される』と一度認められてしまえば、時の政府の判断で、いかようにでもできてしまう」と述べました。
そのうえで小沢氏は、「公明党が了解するということになると、結局は、安倍政権に加担し、すり寄るということになる。公明党は、立党の原点を考えたほうがいい」と述べ、平和を掲げた立党の原点を踏まえ、公明党は集団的自衛権の行使を容認すべきではないという考えを示しました。

(NHKニュース 2014年6月15日 20時45分)

「お前が言うな」の一語に尽きる。小沢一郎をかばい立てする人たちがよく言うのは、「小沢さんは(民主党入り後)変わった」ということだが、小沢は何も変わっていない。証拠として、日本未来の党・衆院選当選議員の「えらぼーと」回答結果 - kojitakenの日記(2012å¹´12月22日)から引用しておく。

衆院選が終わったので、日本未来の党所属の当選議員9人の毎日新聞「えらぼーと」への回答結果をいくつか見ておく。

(後略)

つまり、小沢は集団的自衛権行使容認を自分ではなく安倍晋三や公明党がやるのが気に入らないだけなのだ。「俺様のは『良い集団的自衛権行使容認』、安倍晋三や公明党のは『悪い集団的自衛権行使容認』」というわけだ。

小沢一郎の数十年来の宿願を安倍晋三が果たすのは、もはや時間の問題と見られるが、世の「リベラル」たちがこんな奴(小沢)に依存してしまった時点で、こういう結果になることは決まっていたといえるかもしれない。