喜心大心

喜心(きしん)は感謝と喜びを絶やさない心、大心(だいしん)はすべてを包み込む大らかな心という意味です

仏教徒として何を実践すべきか

仏教徒として日々、何を実践し、どう生きたらよいのか。

 

釈尊は苦(ドゥッカ)を消滅し、涅槃(ニルヴァーナ、心の平安)に至る実践的な手段として、「八正道」を説きました。

 

釈尊が45年間にわたって説いた教えは、実質的にこの八正道に凝縮されるともいわれます。

 

八正道とは、正見(正しい理解)、正思(正しい思考)、正語(正しい言葉)、正業(正しい行い)、正命(正しい生活)、正精進(正しい努力)、正念(正しい注意)、正定(正しい精神統一)を指します。

 

ただ、凡夫が毎日の生活において、この8項目を常に心掛けるのは容易ではありません。

 

また、正精進や正念など、具体的にどうしたらよいのか、わかりづらいものもあります。

 

一方、大乗仏教は菩薩の生き方として6つの実践徳目、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」を説いています。

 

すなわち、布施(金銭などを施す財施、仏法を説く法施、人々に安心を与える無畏施の3種)、持戒(戒律を守ること)、忍辱(耐え忍ぶこと)、精進(たゆまず努力すること)、禅定(精神を統一すること)、智慧(真理を見極めること)です。

 

八正道よりも数が少なく、具体的ですが、こちらもすべてを実践するのはなかなか大変そうです。

 

というわけで、私は「ダンマパダ」に出てくる釈尊の次の言葉を、仏教徒としてのモットー、生き方の根本指針としています。

 

「すべて悪しきことをなさず、善いことを行い、自己の心を浄めること、ーこれが諸仏の教えである」

 

これは一般に「七仏通戒偈」(しつぶつつうかいげ、釈尊と釈尊以前の6人の仏が共通して教えた偈)として知られ、仏教思想を要約したものともいわれます(大乗仏教の「三聚浄戒」と似ていますが、少し違います)。

 

漢訳文の「諸悪莫作(しょあくまくさ)、衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)、自浄其意(しじょうごい)、是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」も有名です。

 

八正道の8項目、六波羅蜜の6項目と比べ、こちらはわずか3項目ですから、覚えやすいといえるでしょう。

 

ただ、実践しやすいかどうかは話は別です。

 

道元は「正法眼蔵」の「諸悪莫作」の巻で、この七仏通戒偈について、白居易(白楽天、唐代の有名な詩人)と、師匠の道林禅師とのやり取りを紹介しています(実話ではないようですが)。

 

白居易があるとき、道林に尋ねた。「仏法の大意とはどのようなものでしょうか」

 

道林は答えた。「すべての悪いことを行わず、善いことを行うこと」

 

白居居が「もしそうなら、3歳の子供でも言うことができるでしょう」と言うと、道林は答えた。

 

「たとえ3歳の子供が言うことができても、80歳の老人になっても行うのは難しい」