喜心大心 ~中高年からの仏教のすすめ~

喜心(きしん)とは感謝と喜びを絶やさない心、大心(だいしん)とはすべてを包み込む大らかな心という意味です

僧侶は妻帯によって堕落したか

沢木興道老師の話を続けます。 日本の仏教は「在家仏教」といわれます。 ご存じのように浄土真宗以外の僧侶は妻帯が禁じられていましたが、明治5(1872)年4月、太政官布告で「今より僧侶の肉食・妻帯・蓄髪は勝手たるべき事」という通達が出され、1900年…

「宿なし興道」と呼ばれた禅僧

このところ、沢木興道老師(1880~1965年)に関する本を読んで、すっかり感化されています。 明治から昭和にかけての時代に、これほど破天荒な曹洞宗の僧侶が実在したことに正直驚いています(破天荒とは悪い意味ではなく、枠に囚われないという意味です)。…

大乗非仏説より大乗非釈迦仏説

新米仏教徒のいうことなので、馬鹿にされることはあっても、目くじらを立てられることはないでしょう。 そんな前置きをして今回は始めたいと思います。 ネットを検索していて、ある宗派のホームページに「法華経はお釈迦様の晩年8年間で説かれた教えであり…

僧侶としてのオーラが全くない

「がんばれ仏教!」(上田紀行著、NHKブックス)に、僧侶が一度読んだら忘れられないような著者の経験談が記されています。 がんばれ仏教! (NHKブックス) 作者:上田 紀行 NHK出版 Amazon 少し長いですが、以下に引用します。 菩提寺は浄土真宗だが、その若い…

十二縁起を理解するのは難しい

正直に打ち明けますと、初期仏典に残された釈尊の教えの中には、私の理解の範疇を超えているものがあります。 以前にも記しましたが、釈尊は「経典に書かれているからといって信じてはならない」「尊い師が語ったからといって信じてはならない」と語り、その…

七仏通戒偈は如何に説かれたか

「七仏通戒偈」(釈尊と釈尊以前に現れたとされる6人の仏たちが共通して保ったといわれる偈)として知られる「すべて悪しきことをなさず、善いことを行い、自己の心を浄めること(諸悪莫作 衆善奉行 自浄其意)」を、私が仏教徒として生活する上での信条と…

仏教界のジェンダー・ギャップ

日本は先進国の中で男女平等が驚くほど遅れている国として知られていますが(世界経済フォーラムが昨年6月に発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は世界146カ国中118位)、さまざまな職種の中で、僧侶は最たるものといえるかもしれません。 特に曹洞宗…

輪廻転生は間違いなく存在する

少し前に見たテレビ番組で、前世のおぼろげな記憶があるという女性タレントが出演し、番組スタッフがその内容を詳しく検証したところ、江戸時代に本当にあった出来事であることがわかり、驚いたことがあります。 テレビ番組では、いわゆる「やらせ」が往々に…

道元と二人の老典座のやり取り

ブログのタイトルをこれまでの「喜心大心」から「喜心大心~中高年のための仏教のすすめ」に変更しました。 もともと人生の半ばを過ぎた人たちに、仏教の素晴らしさを知ってもらおうと思って始めたブログなので、これでようやく「名は体を表す」ことができま…

仕方なく僧侶になった若者たち

曹洞宗宗務庁が一年ほど前、若手僧侶を対象に実施した意識調査アンケートの結果が大変興味深いので、あらためてご紹介します(詳細は曹洞宗のホームページで見ることができます)。 僧侶という職業を選択した理由について、あらかじめ21項目を挙げ、それぞれ…

お坊さんがなぜ犯罪に走るのか

これまでブログで書こうかどうしようか迷っていたのですが、現代の日本の仏教界が抱える問題にも通底する話なので、思い切ってご紹介します。 曹洞宗の僧侶である私の実家の菩提寺が、実は別の宗派であるというと意外に思われるかも知れません。 正確に言う…

中村氏の人柄を語るエピソード

私が仏教の道に進んだのは、中村元氏(1912~1999年)が原始仏教について記した本を読んだことがきっかけだったというのは、これまで何度も記したとおりですが、今回は遅ればせながら、同氏にまつわる話をご紹介したいと思います。 中村氏は島根県松江市の出…

外から見た日本仏教の異端ぶり

前回のブログでブータンのことを取り上げたついでといっては何ですが、チベット学者の今枝由郎氏(1947年~)の著書「ブータン仏教から見た日本仏教」( NHKブックス)をご紹介したいと思います(残念ながら、現在は絶版となっています)。 ブータン仏教…

ブッダが語った本当の幸せとは

中国とインドに挟まれたヒマラヤの小国で、国民の大多数が仏教徒というブータンが「世界一幸せな国」として日本でも話題になったことがありました。 国民一人当たりのあたりの国内総生産(GDP)は日本の約10分の1という発展途上国ですが、ワンチュク国王…

世界一の仏教国を訪問しました

国民の96%が仏教徒という世界一の仏教国、タイを訪問しましたので、番外編としてお伝えします。 4泊5日のツアーで、少ない日数ながらもいろいろな観光地を巡ったのですが、特別に印象に残った2カ所をご紹介します(若者に人気のパワースポットというピン…

自分はどうでもいいじゃないか

無我の話を続けます。 「正法眼蔵」の「現生公案(げんじょうこうあん)」の巻には有名な一節があります。 「仏道をならふというは自己をならふなり。自己をならふといふは、自己をわするるなり。自己をわするるといふは、万法に証せらるるなり。万法に証せ…

無我を理解すれば我慢強くなる

「我慢」という言葉が仏教用語であることをつい最近知りました。 岩波仏教辞典にはちゃんと「我慢」という見出しがあり、「煩悩の一つで、強い自我意識から起こる慢心のこと。仏教では自己を固定的実態と見てそれに執着すること〈我執〉から起こる、自分を高…

こちらの仏教書もお薦めします

お薦めの仏教書の紹介は前回までで打ち止めにするつもりでしたが、もう10冊だけ短く箇条書きでご紹介させてください。 ただ、私個人の好みが多分に加味されていますので、一部は書店や図書館などで内容を確認された上でご購入することをお勧めします。 「ブ…

道元と曹洞宗の教えに関する本

前回は初期仏教の本を取り上げましたので、今回は道元と曹洞宗の教えに関する本をご紹介します。 初期仏教の際と同様、経典と入門書・概説書を一冊ずつ選んでみました。 道元の主著といえば、仏道のあり方について生涯をかけて執筆した「正法眼蔵」に尽きま…

自信を持ってお薦めする仏教書

仏教を学びたいという人たちのために、私が自信を持ってお薦めする本を2回に分けてご紹介したいと思います。 もともと読書が好きで、というより活字中毒に近いタイプで、仏教に関心を持ってからは手当たり次第に関連書を読み漁っています。 その中には、ま…

お賽銭で願い事は叶えられるか

昨年末から自宅近くの曹洞宗の寺院で堂守のアルバイトをしています。 堂守というのはその名の通り、堂を守る人、お寺の番人という意味で、参拝客へのお札やお守りなどの授与、御朱印書き、境内と本堂の清掃などを行います。 その日の仕事の最後には、賽銭箱…

お坊さんはなぜお経を読むのか

なぜ僧侶は葬儀や法要、毎日の仏前のお勤めなどでお経を唱えるのか。 僧侶にとっては当たり前の話ですが、知らない方も多いのではないでしょうか。 私も僧侶になる前は、単なる決まり事なんだろう、ぐらいにしか考えていませんでした。 曹洞宗でよく読まれる…

絶滅したシャカ族の子孫がいた

19世紀末に英国の行政官ウィリアム・ピッピがインド北部で釈尊の骨を発見し、その一部がタイから日本に贈られて、日泰寺の創建につながったという話を以前にしました。 この骨の真偽を探るナショナルグラフィックのドキュメンタリー番組を観たのですが、そこ…

転換点を迎えた日本の葬式仏教

ここ数日、「葬式仏教」に関する本を多読したので、頭の整理をかねてまとめてみたいと思います(ところどころ私見も交えています)。 日本では中世まで、庶民が亡くなっても葬儀は行わず、遺体は河原や道路わきなどに捨てられていました。 当時の僧侶は官僧…

ブッダの死を喜んだ弟子がいた

釈尊の入滅を喜んだ弟子がいたのをご存知でしょうか。 パーリ仏典の長部経典の「大パリニッバーナ経」には次のような件(くだり)があります。 (釈尊の入滅後)年老いて出家したスバッダはそれらの修行僧にこのように言った。「やめなさい、友よ。悲しむな…

スマナサーラ長老と仏教ブーム

「平成仏教ブーム」という言葉がありました。 そうしたブームが本当に存在したのか、仏教関連書を売るために出版社が作ったキャッチフレーズなのかどうか、私にはわかりません。 ただ、ブームがあったとすれば、その中心にいたのは間違いなく、スリランカ上…

人の口の中には鋭利な斧がある

「人が生まれたときには、実に口の中に斧が生じている。愚者は悪口を言って、その斧によって自分を切り割くのである」 これは「スッタニパータ」の「コーカーリヤ」の章に出てくる釈尊の言葉です。 修行僧のコーカーリヤは、サーリプッタとモッガラーナ(釈…

日本の葬式仏教と僧侶の信仰心

現代の日本の仏教界を揶揄する「葬式仏教」という言葉をご存じでしょうか。 この言葉には、僧侶は葬儀や法要を形式的に執り行うだけで、人々の救済や人生の指針の提供など、宗教本来の役目を果たさないという批判が込められています。 もともと原始仏教では…

宗門の未来に向けた4つの転換

曹洞宗宗門庁運営企画室が昨年11月に公表した「曹洞宗 2045年 予測」がかなり衝撃的な内容であるとお伝えしましたが、これを踏まえた同室による「宗務ビジョンの提案」の一部が先月発表されましたのでご紹介します。 ここで「曹洞宗 2045年 予測」のポイント…

悟りの3歩手前がちょうどよい

サラリーマン人生を送ってきた私が僧侶になったのは、仏教を学ぶうちに、釈尊のように悟りを得たいという「菩提心」が抑え切れなくなったからだ、と以前に記しました。 現在は、悟らなくてもいい、悟りの3歩手前ぐらいがちょうどよい、という考えに変わって…